「ヘルペスは汚い」という偏見と戦う女性。同じく苦しんでいる人たちにエール
「私は汚れていない。私は性的に責任ある行動を取れる大人であって、感染を理解した上で健全な性的関係をもつことができる」
シャナ・シングルトンさん(30)は最近、TikTokに投稿したこの動画で一躍有名になった。再生回数は150万回を超えている。
動画の中でシャナさんは「野菜や果物より肉を食べる」「水より清涼飲料をたくさん飲む」「オーラルセックスの前にパートナーに歯を磨けとは言わない」など、日常でありそうな行動を挙げていく。どれも「好ましくない」「清潔じゃない」と言われそうな行為だ。
そして最後に、自分にヘルペスがあることを理由に「汚れている」とみなされることに疑問を投げかける。

「オーラルセックスの前にパートナーに歯を磨けとは言わない。(中略)それなのに、ヘルペスだから私の女性器が汚いっていうの?おもしろいね」
シャナさんは動画を通じて、性器ヘルペスにつきまとう偏見をなくそうと声をあげた。その行動を称え、彼女に感謝する声が多く寄せられている。

「大事なのは正しい認識とケア。動画で出ていたレベルで自分の身体を気づかってない人は、(動画に出ていたケアを)実行している他人のことを悪く言う資格なんてない」
ヘルペスは思っているより身近な感染症だ。米国疾病予防管理センター (CDC)によると、米国内では14~49歳の6人に1人が性器ヘルペスに感染しているという。

「ありがとう!私はちがうけど母親が性器ヘルペスを持っている。かなり身近な病気だけど、正しく治療すればそんなに深刻ではないことを理解していない人が多いと思う」
BuzzFeedはシャナさんに話を聞いた。 シャナさんは、「性器ヘルペスをもつ人が、自分自身に対する見かたを変えられる」ように手助けをしたいと語る。
お腹には「性感染症はある」、両腕には「羞恥心はない」との文字。
ヘルペスと診断された女性の多くが「自分は汚れている」と考えてしまうことから、物事を正しくとらえてほしいという気持ちで冒頭の動画をつくったという。
「完全無欠な人はいないし、やむを得ずヘルペスになってしまった人にレッテルを貼る前によく考えてほしい。そんなメッセージを伝えたかった」
シャナさんがHSV2(単純ヘルペスウイルス2型)感染を知ったのは5年前。妊娠がわかったのと同じ日だった。
「かみそり負けだと思っていた。でも、かみそり負けにしては激しく痛かったので、『病院で診てもらったら』とパートナーに言われた」
「医師からは『ほぼ確実にかみそり負けだろうから、心配しなくていいよ』と言われた。でも、その診察にどうも納得できなかったので、検査してほしいと頼んだ」
「次の診察のとき、ちょうど家で妊娠検査薬の陽性反応が出たところだった。病院で妊娠を確定してもらおうと思っていて、かみそり負けの件はあまり気にしていなかった」
「診察の順番がくると、医師から『いいお知らせと悪いお知らせがありますが、どちらから聞きたいですか』と告げられた」
「悪い話を先に知りたいと伝えると、HSV2の陽性が出たと知らされた。そのあと、妊娠していると言われた」
「ショックだった。妊娠のことだけでなく、ヘルペスがあることも、パートナーに話さなければならないことも、頭のなかはそれしか考えられなかった」
通常の性感染症検査では、ヘルペスの感染は調べないことが多い。しかし、シャナさんはそのことを知らなかったため、最初に感染したのがいつなのかはわからないままだ。
「あの人から感染したんじゃないか、とも考えたが、一般的な性感染症の検査にヘルペスの検査は含まれていないと知らなかったので、その人のせいにするのはフェアじゃないと思っている。何年も前から感染していたのかもしれなし」
残念ながら、その医師からヘルペスウイルスについての情報は得られなかった。
「『誰でもなりますよ。症状がある間は性交渉はしないでください』と、それしか言われなかった」
「パートナーも結果を受け入れていたので、私は赤ちゃんに意識を集中しようとした」
だが結局、パートナーとは妊娠中に別れた。
「かなりつらい時期に、ヘルペスがおまけみたいについてきて、気持ちが沈んだ。自分に失望していた」
男の子を出産すると、産後うつになった。
「身体が元どおりにならない、睡眠が足りない、授乳で乳首から出血する、シングルマザーとしてどうやっていけるのかもわからない」
「しかもヘルペスも抱えている。自分はもう誰にも望まれないし、自分のことが嫌いだった」
しばらくして、ソランジュ・ノウルズのアルバム「A Seat at the Table」を聴いたのが転機になった。アルバムの曲「Cranes in the Sky」を聴くと、自分を大切にできるようになるまでの道のりへ一歩踏み出せた、とシャナさんは言う。
YouTubeでこの動画を見る
「それまでの人生では、すべてを誰かのせいにしていた。何についても、自分の選択に責任をもつ意識がなくて、私自身のパワーを取り戻す必要があった」
「マインドセットを変える中で、私の人生は私の考え方やものの見かたを反映した結果だ、という事実を認めることができた。これを受け入れるのは、とても苦い薬だった」
心が沈んでいるのはヘルペスのせいではなく、自分を慈しむ気持ちがないからだと気づいた。
「落ち込んでいる理由を、ヘルペスのせいしていた。被害者でいれば楽だった」
「でも成長し、自分の人生を建て直すためには、楽な状態から抜け出す必要があった」
「自分を大切にする気持ちが芽生えてくると、まわりの人が光に引きつけられるみたいに集まってくる。それに後押しされ、コーチとして『自分を大切にしよう』と発信するようになった」
とはいえ、自分を大切にしようと呼びかける「セルフラブ・コーチ」の役回りには、当初引っかかる気持ちがあった。ヘルペスがあることについてオープンに話していなかったからだ。
「6月にインスタグラムで自分のヘルペスのことに触れようと決めた。投稿するとその日のうちに、自分もヘルペスにかかったという人の体験談がダイレクトメッセージでたくさん届いた」
「それで、私の声や話が誰かの救いになるんだ、と実感した。その日から、自分を『ヘルペス擁護論者』と位置づけて、病気に対する恥のイメージなどの偏見と戦うことにした」
「性器ヘルペスにかかった女性たちへ」
「あなたのパートナーはリスクをとっているわけではなく、事実を知った上で決断している」
「ヘルペスがあるからといって、自分を縛り付けなくてもいい」
「相手が自分の状態を受け入れてくれるだけで、自分が幸せにならない関係性を続ける必要はない」
「ヘルペスを理由に、自分の基準を低くしなくていい」
「付き合う可能性のある相手に、STI(性感染症)検査の結果を見せてと求めていい」
「あなたの性生活はこれで終わるわけじゃない。健全なセックスライフがここから始まるということ」
「ヘルペスであなたの価値は下がらない。自分を許し、自分に優しくし、何よりまず自分を愛してあげてほしい」
「私は、自分を縛り付ける考え方を変える指導をしている」
「セッションにくる女性たちによく言うのは、みんなが自分は汚れてると言うのなら、私は『そうなんだな』と思う。でもそれはヘルペスを持っているからではない」
「私はヘルペスを持っていても汚れてはいない」
「みんなには『自分は汚れている』と声に出してもらい、自分のことをどんなふうに言っているのか聞いてもらっている。これはセルフトークのときに使う言葉を変えていく取り組み」
「次は紙に書き、声に出して『私は汚れていない』と言い、気持ちを開放する。『私は性的に責任ある行動を取れる大人であって、感染を理解した上で健全な性的関係をもつことができる』と」
「こうして自分を縛り付けていたものから解放されると、自己肯定につながる新しい言葉のリストができる。参加者のみんなには、それを毎日自分で唱えてもらっている。ヘルペスをもつ女性たちの多くが、自分は汚れている、恥だという気持ちを抱いていて、胸が痛む」
パートナーがいる人は、通常の性感染症検査と別にヘルペスの検査を受けたほうがいい、とシャナさんは提案している。
「ヘルペスに感染しているなら、その情報をきちんと伝える必要がある。伝えずにいると、偏見を後押してしまう」
「感染していることを黙っていたパートナーと関係をもって、ヘルペスが感染するケースが多い。だから、パートナーに事実を知らせた上で、相手に選ぶ機会を提供するべき。自分たちがもてなかった機会をね」
「私はヘルペスに対する偏見と戦っている。感染している女性たちが自信を持ち、自分のセクシュアリティに誇りをもてるときがくるまで、戦い続ける。偏見を根絶するために、私はここにいる」
シャナさんは自身のYouTubeチャンネルで、対処法や食生活、セックスで気をつけることなどのアドバイスなどを投稿している。
シャナさんのアカウントはこちら👇
TikTok :@herpesgoddess
Instagram:@shanasingleton
Facebookにもリクエストすれば参加できるプライベートグループを立ち上げている。
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan