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「日本の高校生全員にワクチン、50人が死亡か半身不随などの副作用に」は誤り。大学教授の発信、YouTubeで30万回再生

中部大学特任教授の武田邦彦氏がYouTube番組上で、新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、イギリスにおける接種データに基づき「日本の高校生320万人全員にワクチンをうったら、確率的には50人が死亡するか、それに相当する副作用に見舞われる」「半身不随になっちゃう」などと発言した。

YouTube上に展開する「ネットTV局」の番組で、新型コロナウイルスのワクチンに関して、不安をあおる誤った情報が広がっている。

動画では、中部大学特任教授の武田邦彦氏が「日本の高校生320万人全員にワクチンをうったら、確率的には50人が死亡するか、それに相当する副作用に見舞われる」「半身不随になっちゃう」などと発言した。

武田氏が紹介したイギリスにおける接種のレポートには、ワクチンに直接関連する死亡例やそのような重篤な副反応(副作用)は報告されていない。

誤った発言が含まれているにも関わらず、動画は再投稿も含め30万回以上再生されている。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。

YouTubeより

発言があったのは、チャンネル登録者数が7万人以上のネットTV局「トモダチTV」の「武田邦彦のホントの話」という番組だ。

前提として、武田氏の専門は資源材料工学であり、ワクチンや医療の分野ではない。

2月12日に投稿された番組では、武田氏が「イギリスの730万人がワクチンを打った結果」として、以下のようなデータを紹介した。

「ワクチンをうった時に生じるアナフィラキシーみたいな、死ぬとほぼ同程度の、半身不随になっちゃうとか、そういった程度のものと死者を合計すると、日本の高校生320万人全員にワクチンをうったら、確率的には50人が死亡するか、それに相当する副作用に見舞われる」

そのうえで、イギリスにおけるアナフィラキシーについて、「半身不随とかショックとかそういうやつです。イギリスの(感染による)死者に比べたら半分、日本の死者に比べたら20倍くらいになっている」とも解説した。

この表では「アナフィラキシー」が死者の項目に並べられており、1万人あたり0.15人とも記されていた。

さらに動画では、自らはワクチンには批判的ではないとしながら、「ワクチンを実施する側はいつも嘘をつく」「社会を守るために犠牲になれということで、特攻と同じ思想」「副作用が出たら裁判所が有罪判決を出して、大臣などを監獄に入れないといけない」などとも呼びかけた。

コメント欄には「コロナウイルスのワクチンなんて全く信用出来ない」「国民に疑惑を持たれた時点で、奴らの計画は失敗している」などのコメントがついている。

イギリスのレポートを読んでみると…

YouTubeより

しかし、「日本の高校生320万人全員にワクチンをうったら、確率的には50人が死亡するか、それに相当する副作用に見舞われる」という点は誤りだ。

動画で言及されている「イギリスの730万人がワクチンを打った結果」が何に関するものかは定かではない。

ただし、この動画が公開される1週間前、2月5日にイギリス医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、ファイザー製と、アストラゼネカ製の2種類のワクチンの計740万回分に関するレポートを初めて発表している。

これはファイザー社製590万回(2回目を含め)、アストラゼネカ社製150万回の接種データ(1月24日まで)をまとめたもので、ワクチン接種との因果関係が認められる死亡例や、それに相当する副反応は報告されていない。

レポートによると、ワクチン接種後に報告された症状「有害事象」(後段で解説)は1000回あたり3例の割合(0.3%)だった。多くが腕の痛みなどや、頭痛、悪寒、倦怠感、吐き気、発熱などの症状だ。

接種直後のめまい、倦怠感、筋肉痛、動悸なども報告されているが、より深刻な症状や、疾患の継続はみられず、どれも1〜2日程度で解消する傾向にあるとしているという。

また、重いアレルギー反応である「アナフィラキシー」 についてはファイザー社製で101例、アストラゼネカ社製で13例だった。前者については全員が回復しているとも記されている。

さらに、接種後の死亡例については、大部分が高齢者または基礎疾患のある人々に関するもので、ワクチンの関連が認められるものはなかったとしている。

動画内では武田氏が、ワクチン接種後にアナフィラキシーが起きて、日本の高校生の人数に置き換えれば320万人に50人の確率(1万回あたり0.15人)で「死亡するか、ほぼ同程度の半身不随になる」などと述べている。

実際、アナフィラキシーの発生確率について、レポートで報告されているファイザー社製とアストラゼネカ社製をあわせて計算してみると、1万回あたり0.15回の確率になる。

しかし、ワクチンに関連する死亡例などが明らかになっているわけでもなく、アナフィラキシーも、多くは回復していることも明かされているため、この発言は誤りであるといえるだろう。

アナフィラキシーの現状は

MHRAの最新のレポート(3月7日までのデータ)ではアナフィラキシーの確率が、1090万回接種されたファイザー社製で1万回あたり0.2回、1170万回接種されたアストラゼネカ社製で1万回あたり0.19回と確率が変わっているが、関連する死亡例がないなどの傾向に変化はない。

これはアメリカにおけるレポート(1月18日までのデータ)でも同じ傾向だ。アナフィラキシー は994万回接種されたファイザー社製では1万回あたり0.047例、758万回接種されたモデルナ社製では1万回あたり0.025例と、その確率はきわめてまれだ。

計66例のうち22例が過去にアナフィラキシーの経験があったことがわかっている。死亡例は報告されておらず、フォローアップ可能な61例については、いずれも適切な治療を受け回復しているという。

さらに日本でも、3月11日までの18万1184回の接種のうち、37例のアナフィラキシーの疑い報告があった。厚労省によると、いずれも適切に処置され、全てが軽快、もしくは回復しているという。

1万回あたりの報告数は米英よりも多いが、報告されたじんましん、吐き気、呼吸器症状など17の疑い例(9日までの報告分)のうち、国際基準でアナフィラキシーに該当するとされたものは7例だった。

なお、アストラゼネカ社製のワクチンに関しては、「死亡例を含む血栓ができる事例が複数報告されている」という理由からヨーロッパなどで接種を控える動きが広がっていた。

これについて、欧州医薬品庁(EMA)は3月18日、「安全かつ有効」と結論づけ、翌19日には世界保健機関(WHO)も因果関係は現時点で認められていないとした。再開の動きを見せている国もある。

BuzzFeed Newsは、3月16日に中部大学やネットテレビ局「トモダチTV」を通じて武田氏に発言の根拠や、不安をあおったことに対する見解などについて、取材を申し込んだが、22日までに返答はなかった。

「副反応疑い」とは?

時事通信

前提として、そもそも、身体に異物を入れる以上、副反応がないワクチンは存在しない。アナフィラキシーについても、予防接種などを含め、どのようなワクチンでも、まれに起こりうる。

日本におけるコロナワクチンの接種でも、こうした事態に対処するため、事前に問診などがある。さらに接種後は一定時間待機するよう求められており、会場にもアレルギー治療薬が用意されている。

なお、日本におけるコロナワクチン接種をめぐっては、60代の医療従事者の女性が接種後にくも膜下出血で死亡した例が「副反応疑い」として報告され、大きく報じられた。

接種との因果関係は「評価不能」とされているが、くも膜下出血の多くがこの年代にみられ、海外でもコロナワクチン接種との関連が報告されているものはないという。

この「副反応疑い報告」とは何か。ワクチンと副反応の関係に関しては、「有害事象」という専門用語の考え方を考慮する必要がある。

これは、薬物を投与された後に患者に生じたあらゆる好ましくない症状のこと。接種とそうした事象の因果関係が証明されている「副反応」も含まれるが、因果関係の明らかでないもの、不明なもの、別の原因によるものすべてが対象となる。

つまり、投与による体調不良や疾患だけではなく、別の原因による病気や、極端な例で言えば交通事故にあったり、雷に打たれたりしたケースも入りうる。アストラゼネカ社製ワクチンの血栓も、同様だ。

この「有害事象」に関する報告が、日本では「副反応疑い報告」と呼ばれているのだ。実際、厚労省の資料にも「偶発的なものや他の原因によるものなど、予防接種との関連がないものも含まれうる」と明記されている。

新型コロナワクチンをめぐっては、不安を煽ったり、その有効性を否定したり、副反応ばかりを強調したりする報道や、ネット上の陰謀論などが相次いで拡散されている。情報の取り扱いには、注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。

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