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新型コロナ、中国が「日本肺炎」と広めようとしている→誤り。ネット番組で誤訳が拡散か

発端となっているのは中国大使館の公式ホームページで2月27日、日本に暮らす中国人へのメッセージ。「日本新型冠状病毒肺炎疫情不断变化」という中国語の文章の誤訳が広がったとみられる。

新型コロナウイルスをめぐり、「日本肺炎」という言葉が一人歩きをしている。

「日本の中国大使館が出した文章に『日本新型コロナウイルス肺炎』の言葉がある」「(新型肺炎に)日本をつけて広めようとしている」という情報がネット上で拡散したことがきっかけだ。

これは誤りだ。「日本での新型コロナウイルスの感染状況が、絶え間なく変化している」という意味の「日本新型冠状病毒肺炎疫情不断变化」という中国語の文章の誤訳が広がったとみられる。

発端となっているのは、中国大使館の公式ホームページで2月27日、日本に暮らす中国人へのメッセージ。

この中にある「目前,日本新型冠状病毒肺炎疫情不断变化,我在日同胞对此高度关注」という文章の冒頭部分が「日本新型コロナウイルス肺炎感染」となっているとして、批判が広がったのだ。

元警視庁の坂東忠信氏の「中国語でも日本新型コロナウイルスですね」というツイートが引用され拡散したほか、DHCテレビのネット番組「虎ノ門ニュース」(2月28日)の中でも坂東氏がこの点を指摘。動画もあわせて拡散した。

また、直接大使館の発表には触れていないものの、3月3日には美容整形外科医の高須克弥氏が「中国の政治力で『日本肺炎』の名称が一般化するのではあるまいか」などと指摘し、これを機に一時「日本肺炎」がトレンド入りした。

これがスポーツ紙で取り上げられたことで、実際にそうした情報があるかのように広がりを見せているようだ。

大使館も否定

だが、「日本新型コロナウイルス」という指摘は誤りだ。

指摘されている文章を正しく翻訳すると「日本における新型コロナウイルスの感染状況が、絶え間なく変化しているため、日本に住む同胞たちは(状況に)高度の注意を払っている」という意味になる。

大使館のメッセージでも、一番最初の部分で中国内での発生と言及しており、新型コロナウイルスに「日本」という名前をつけて広げようとしているような点は見当たらない。

BuzzFeed Newsは中国語を母語とする人を含む複数の中国語話者に確認したが、いずれも「日本新型コロナウイルス肺炎」と読むことはできない回答した。

この件については、中国大使館も自らTwitter上で複数の指摘に対し、以下のようにリプライをし、誤訳であると指摘している。

《その文章の意味は「日本でのコロナウイルス感染状況が変化している」、「日本新型コロナウイルス肺炎」という意味ではまったくないので、正しく理解していただければと存じます。今回、中国の新型コロナウイルスとの戦いに支援と協力をしてくださったすべての日本人の方に感謝します》

なお、坂東氏はもともとのツイートを削除。「状況を知ってるからこそ『日本での新型ウイルス〜』と読めます」としながら「記憶が薄れた50年後にすり替えられる」などと主張している。

「武漢肺炎」と呼ばない理由

この「日本肺炎」の情報が広がる一方で、「武漢熱」「武漢肺炎」と呼ぶべきというような声も散見される。自民党の山田宏参議院議員も、国会でそのような主張をした。

しかし、特定の地名と感染症を結びつけることは差別にもつながりかねない。

実際、WHOも2015年に出した疾病の名称決定に関するガイドラインで、「貿易、旅行、観光、動物、福祉に及ぼす不必要な悪影響を最小限に抑え、文化的、社会的、国家的、地域的、職業的、民族的グループへの攻撃を回避する」必要があるとして、以下のような情報を含まないようにと定めている。

  • 町や国、地域、大陸
  • 人名
  • 動物や食べ物
  • 文化、集団、産業または職業
  • 過度な恐怖をあおる用語


こうした背景からも今回の新型コロナウイルス感染症には「COVID-19」という名称が決められている。悪いのはウイルスであり、決して特定の国や地域に住んでいる人たちではない。改めてそうした認識を持つことが大切だ。


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