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沖縄の玉城デニー知事が「一国二制度」を唱える理由

米軍の事件事故のたび突きつけられる日米地位協定の現実、一方で広がる若者たちの基地問題への「あきらめ」。玉城知事がそうした状況を打破しながら目指そうとしているのは、アジアに開かれた沖縄だといいます。

沖縄県の玉城デニー知事は、これまでも沖縄に「一国二制度を取り入れたい」という主旨の発言をしてきた。その真意はどこにあるのか。

BuzzFeed Newsによる単独インタビューの最終回では、知事の考える「これからの沖縄」についてお伝えする。

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若い世代に広がる基地への「諦め」

Masahiro Jinhee Lee

米軍普天間基地の辺野古移設に反対する民意が高まっている沖縄。2月の県民投票では、反対が43万4273票(72.1%)だった。

一方で世代差もある。県民投票時に朝日新聞が実施した世論調査によると、沖縄に基地が集中することを「納得できる」と答えた10〜20代は26%。いずれも10%台だった他の年代を上回っている。

朝日新聞はこの点について、故・翁長雄志の次男で那覇市議の翁長雄治さんの言葉を引用し、「現状が解決しないことへの諦めがある」と分析している。

実際、BuzzFeed Newsのこれまでの取材でも、そうした「諦め」を感じているような声は少なくない。また、基地が那覇市の中心部などからなくなり、経済的に発展した近年の沖縄だけを知っている層と、それ以前の記憶がある層の感覚の違いを指摘する識者もいる。

玉城知事はどう見ているのか。

「沖縄でも、いろいろな考え方や感情があると思います。基地が近くにある人とそうではない人では、直接的に受ける影響も、感覚的な影響も違います。それに、基地が長年同じ状態であり続けることによって、存在に対して見慣れてしまっている人もいる。友達や親戚が働いているという若い人も少なくないでしょう」

そのうえで、「負担を背負うということの重さが、感覚的にピンとこないのかもしれません」とも分析し、こう語った。

「たとえば道路や橋は完成すると便利になりますよね。基地は完成したら、戦争のための存在として使われるんです。つくったから未来が豊かになるというものではなく、不安が据え置かれてしまうという存在であると考えてほしい」

「ましてや辺野古の基地の耐用年数は200年、運用は最低でも40年と言われています。仮にいま完成したとしても、今の20歳のみなさんが60歳になるまで使う。40年、負担を背負わないといけないのです」

突きつけられる日米地位協定の「現実」

時事通信

名護市に「不時着」したオスプレイの残骸を調べる米軍関係者。この際も日本側の十分な捜査はできなかった。

知事がもうひとつ言及したのが、「日米地位協定」の問題だ。

これは、日本における米軍の立場や在日米軍施設のあり方を決めた、日米二国間の協定。1960年に新しい日米安保条約が結ばれたときに、同時に締結された。

在日米軍に日本政府の権限がほとんど及ばず、「治外法権」とも言える内容の不平等さを指摘する声は、少なくない。

米軍基地内や公務中の犯罪行為では日本側に第一次裁判権はなく、関係者を捜査するためにも米側の同意が必要だ。

また、公務外でも容疑者の身柄が米側にある場合、起訴されるまで、身柄は米側におかれる。さらに、航空機などの事故が起きた場合も、捜索などに米軍側の協力を要請する必要がある。

このため、過去の米軍機墜落事故や、米軍関係者が関与する殺人事件などでも、たびたび、この地位協定が「壁」となり、日本側による真相究明や訴追が阻まれてきた。

沖縄では、地位協定の改定を求める声が、たびたび上がってきた。玉城知事は言う。

「もう基地があるからいいんじゃないのと言っていても、自分の身内や友達が巻き込まれる事故や事件が起きてしまうと、地位協定の現実を突きつけられてしまうわけです」

「若い人たちには、そういう情報が届いていないのかなと思います。多くの人たちが知らなかったことに、気づいてもらうためにも、興味を持っていただけるよう、私たちも一生懸命呼びかけていかなければいけないな、と思います」

「一国二制度」を提唱する理由

Masahiro Jinhee Lee

知事応接室には、故・翁長雄志知事の肖像もあった。

玉城知事は、これからの沖縄をどう見据えているのだろうか。玉城知事は国会議員時代も含め、「一国二制度を取り入れるべき」という発言をしてきたことがある。

「独立したがっている」などと、時として批判に晒されることもある言葉だ。知事の真意は、どこにあるのか。

「日本から離れたいというわけではまったくありません。沖縄県はアジアに開かれている地理的優位性がある。特別州のように、一国二制度的に財源や権限が付与されて、自立経済に向けた自立型の発想ができれば、投資やヒト、モノの入り口として、日本を牽引する形で優位性を発揮できると思っているのです」

「日本がアジアに進出していく基盤を、沖縄につくっていけるかもしれません。沖縄がどうアジアや世界に手を伸ばして、日本にとって役立っていけるのかを考えているんです。そのために、沖縄の力、ポテンシャルを発揮する環境を整えていただきたい」

さらなる基地負担軽減を目指し、沖縄が日本におけるアジアとの経済・人材交流の中心になるために、何ができるのかーー。

かねてから「アジアのダイナミズムを取り入れたい」と述べてきた知事は今後、複数の専門家による諮問機関「万国津梁会議」を設置し、これからの沖縄について、ビジョンを練る構えだ。6月上旬にも初めての会議を実施する。

1時間近くにおよんだインタビューの最後。玉城知事はこう、笑顔を見せた。

「私はひとりのウチナーンチュであり、日本人であり、ましてや父親はアメリカ人ですから。文字通りダイバーシティーを体現しながら、沖縄を世界に向けて発信していきたいと思っているんですよ」

(了)


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