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「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と言われて。玉城デニー知事が伝えたいこと

2月に実施された県民投票。「辺野古埋め立て」への反対票は、昨年9月の沖縄県知事選で玉城デニー氏が獲得した39万6632票を超えた。一方で、法的拘束力がないことをもって批判する声もあがっている。

2月24日に実施された、沖縄での米軍普天間基地の移設に伴う辺野古埋め立てに関する県民投票。反対票が7割以上という結果が示されたが、辺野古での工事はそのまま続いている。

玉城デニー知事は、「基地問題について話し合う新たな枠組みが必要だ」と強調した。BuzzFeed Newsの単独インタビューの中編をお伝えする。

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県民投票の本当の「意義」とは

「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択で実施された県民投票。

その結果は、反対が43万4273票(72.1%)、賛成11万4933票(19%)、どちらでもないが5万2682票(8.7%)だった。

「辺野古埋め立て」への反対票は、昨年9月の沖縄県知事選で玉城デニー氏が獲得した39万6632票を超えた。なお、この票数は沖縄の知事選で1人の候補者が得た得票としては、史上最多だ。

玉城知事は、県民投票の意義をこう語った。

「県民投票の結果が重要であることはもちろんですが、改めて問題に向き合った方や、関心を持った方も多いでしょう。考えれば考えるほど悩んで、投票には行けないという方もいたはず。幅広い意味で、意義深かったと感じています」

今回の県民投票は、県民から実施を求める9万2848筆の署名が提出されたことを受けて条例が制定され、行われた。

署名を呼びかけのは、大学院生の元山仁士郎さんだ。投票の全県実施が危ぶまれた際にハンガーストライキを行ったこともあり、辺野古埋め立てへの賛否を問わず、若い世代のなかでも県民投票への認知は高まっていった。

「若い人たちが自分たちの民主主義、あるいは権利などを考えるという意味で、非常にプラスになったと感じています」

「ただのアンケート」という批判も

一方で、投票結果には法的拘束力がないという点から「ただのアンケート」という批判もネット上であがっている。

「法的拘束力はない、普通の投票よりも格下という方もいるが、県民が責任を持って投票したもの。示された結果は、民主主義の手続きとして正当にとられたものであると捉えるべきではないでしょうか」

さらに岩屋毅防衛相は、県民投票について、「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある。それぞれに、民意に対して責任を負っている」と発言した。玉城知事はこれを「誤解を招く表現」と批判する。

「民主主義の普遍的価値は、世界共通であるべきです」

沖縄では、1996年にも県民投票が実施されたことがある。

この時は、日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小について賛否を問う内容だった。基地整理・縮小と日米地位協定の見直しへの賛成が89%にのぼる結果となった。

前年に起きた米兵3人による少女暴行事を受けて広がった、基地への反発を示す結果だった。

「なぜ沖縄でこれまでに二度も(駐留米軍に関する)県民投票をしなければいけなかったのか、ということも含めて、その意義をみなさんに考えてもらいたい」

新たな枠組み「SACWO」を提唱

県民投票の結果を受けて、玉城知事は安倍晋三首相とも面会。「SACWO」(サコワ)という新たな枠組みを設けるよう提唱したという。

辺野古の埋め立ては1995年に日米間で取り決められた「SACO合意」に基づいて進められている。

「SACO」とは日米両政府が少女暴行事件を受けて設置した「沖縄に関する特別行動委員会」(Special Action Committee on Okinawa)のことだ。

玉城知事は日米両政府に沖縄県を加えた「Special Action Committee with Okinawa」(SACWA)の枠組みに改め、議論をしようと呼びかけているのだ。

会談では安倍首相から明確な回答はなかったという。玉城知事は言う。

「20年以上前につくられたSACO合意によって物事が進んでいますが、県民投票が行われたこの段階で、もう一度合意を再検証する必要があるのではないでしょうか」

「日本とアメリカの政府が勝手に決めるのではなく、70%以上の米軍基地を押し付けられている沖縄県も参加して、どうすれば日本全体の安全保障について考え、沖縄の本当の負担軽減を実現することができるのか、協議するプロセスを新しく作るべきだと思っています」

県の試算では工期は13年に

辺野古の基地建設について、政府側は、工期が5年としている。費用の負担はすべて日本側だが、当初予算は2400億円だ。

建設地をめぐっては、軟弱地盤が見つかるなどの課題も指摘されている。それを受けた沖縄県の試算では、予算は最大2兆5500億円、工期は13年と見積もられているという。

岩屋防衛大臣はこの試算について、「コストは増える可能性がある」としながら、沖縄県の試算は過大であるとの認識も示している。

双方の食い違いは大きい。ただ、玉城知事は県側の試算を強調しながら、こう語った。

「これでは、仮に工事を進めたとしても、あと10年以上も普天間の状態が据え置かれてしまうことになりかねません。政府は辺野古の建設いかんに関わらず、まず運用停止を求めるべきです」

「そして、辺野古への移設に関しても、日本政府と沖縄がしっかり議論する必要がある。話し合いをしなさいという結論を見出したのも、県民投票の結果です。総理もこれを真摯に受け止めて、ある一定の方向性を見つける努力をしてほしい」

(後編に続く)