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「岸田首相、総裁選での公約を全部削除」はミスリード。参院選にあわせ画像が拡散、実際は昨年の選挙報道

拡散しているのは、岸田文雄首相が総裁選で述べていた目玉政策が自民党公約から全て削除されたとする比較画像だ。今回の参院選での自民党の公約の問題だと誤認している人も少なくないとみられるが、実際は昨年の衆院選の公約に関するものだ。

7月10日投開票の参議院議員選挙を前に、「岸田首相、総裁選での公約を全部削除」などとする文言とともに、画像が拡散している。

しかし、これは2021年10月の衆議院選挙当時の報道を流用したものであり、今回の参院選に関するものではない。状況には変化もあることから、「ミスリード」な情報といえる。

当該ユーザーは参院選が近づいた5月以降に50回以上、同じ画像を投稿している。ミスリーディングな情報の拡散には注意が必要だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

「どーすんのこれ…」という言葉とともに広がっているのは、岸田文雄首相が総裁選で述べていた目玉政策が、選挙における自民党公約から削除されたとする比較画像のツイートだ。

参議院議員選挙の公示後だったこともあり、6万以上の「いいね」がつくなど、拡散している。

今回の参院選での自民党の公約の問題だと誤認している人も少なくないとみられるが、前述の通り、2021年10月に投開票された衆院選の公約に関する画像だ。BS-TBSの「報道1930」の一場面とみられ、当時からネット上で広がっていた。

このユーザーは昨年10月から複数回にわたり画像を投稿。参院選が近づいた今年5月以降だけでも50回以上、ハッシュタグを変えながら投稿を繰り返しており、そのうちひとつが今回、拡散した。

岸田首相が2021年9月の自民党総裁選で掲げた「目玉政策」について、翌月発表された党の衆院選公約で一部が触れられていなかったことは事実だ。「岸田カラー」が薄れたことへの賛否や、その背景を巡るさまざまな報道が当時あり、拡散している画像もそのうちのひとつと言える。

なお、投稿にあるハッシュタグ「日曜報道 THE PRIME」はフジテレビ系列の番組名であり、この画像の内容とは無関係だ。

「実現」したものも

では、総裁選時の公約はその後、どうなったのか。

岸田内閣がまとめた「骨太の方針」などの指針や会見における発言、報道などから、現段階における状況や、参院選の公約を比較したものは、以下の通りだ。


令和版所得倍増:貯金から金融商品への投資を促す「資産所得倍増プラン」を表明。参院選の公約では「『貯蓄から投資へ』の流れを大胆に生み出し、成長の果実を多くの国民が手にする資産所得倍増社会を実現」と言及

金融所得課税の強化:議論は継続。日本記者クラブの党首討論(6月21日)でも「与党で議論を続けるが、政策の優先順位は考えなければ」としている。公約でも言及はなし

子育て世代への住居・教育費支援:子育て世代・若年層の省エネ住宅購入の助成「こどもみらい住宅支援事業」を創設。給付型奨学金や授業料減免などの対象拡大と、「出世払い」方式の新たな奨学金制度の導入(大学院)に向け検討。公約では「高等教育における、多子世帯等の中間所得層の修学支援を拡充」と、出世払い奨学金についても「学部制までの拡大を目指す」と言及

健康危機管理庁:内閣府のコロナ対策推進室と厚生労働省の対策推進本部を一元化し、内閣官房に置くと6月15日に会見で表明

党改革(役員任期 連続3期まで):「1期1年、連続3期まで」の形に3月の党大会で党則改正を決定。公約でも「党改革を進めます」と言及


実現したものや、そうでないもの、形を変えたものもある。

政党と政治家の公約内容やその達成状況に対して自由に批判することは、憲法で保障された国民の権利だ。昨年の衆院選時、そして今回の参院選での自民党の公約に対する批判も、自由に行うべきだ。

しかし、参院選の投開票が近づいた状況で、去年の衆院選公約に焦点を当てた画像を、そう明記せず拡散すれば、今年の公約に関するものと勘違いする人を生み出しかねず、ミスリードと言える。

選挙時には候補者や政党への支持・不支持や立場を問わず、誤情報などが飛び交いやすい。拡散には十分の注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。