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「自民・朝日健太郎氏、仕事してない」国会での発言“ゼロ”と大量拡散→ミスリード。一部を切り取り、実際は…

朝日氏は2016年の参議院議員選挙で自民党から出馬し、初当選。今回の選挙は2度目で、東京選挙区から立候補している。

7月10日の参議院議員選挙をめぐり、自民党から立候補している元ビーチバレー日本代表の朝日健太郎氏(現職)が、これまでの議員時代に「仕事をしていない」という画像が拡散している。

国会の「本会議」における発言回数がゼロであることを切り取ったものだが、これは「ミスリード」です。

実際は各委員会で発言をしているほか、政務官を務めていたことから政府側として答弁していたこともある。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

朝日氏は2016年の参議院議員選挙で自民党から出馬し、初当選。今回の選挙は2度目で、東京選挙区から立候補している。

画像は、参院選の公示後の6月末ごろからTwitter上で拡散し始めた。特に「すげぇ。自民党東京選挙区候補者の朝日健太郎、めっちゃ仕事してないじゃん(笑)」というツイートは約6000リツイートされ、立憲民主党の蓮舫議員も引用リツイートするなど、大きく広がった。

しかし、これは前述の通りミスリードだ。

この情報の出典元は、政治家の仕事を記録・公開する目的で政治学者の菅原琢氏が運営する「国会議員白書」というサイトとみられる。

2016年7月から19年7月まで(24期在職者)と、19年7月〜22年7月まで(25期在職者)の発言回数などを、国会会議録検索システムのデータなどから抽出している。

拡散している画像では、このデータベースから本会議での発言回数の部分だけを切り抜いているため、たしかに朝日氏の発言がまったくないように見える。

しかしサイトを確認すると、直後には、委員会で24期で13回、25期では16回の計29回、発言していることが記録(画像上)されている。また、調査会や小委員会でも3回と4回の計7回の発言がある。

さらに、朝日氏は20年9月〜21年10月にかけて、「国土交通大臣政務官」を務めていたことにも留意が必要だ。この間は政府側の立場で仕事をしていることになり、その発言回数は8回とされている。

一方、国会会議録検索システムで発言者を限定して調べると、あわせて49回の委員会などで発言があったことが確認できた。

少なくとも「本会議」だけの発言回数を切り取って「仕事をしていない」と指摘するのはミスリードであると言える。

トレンド入りし大量拡散も

参議院での法案の審議は、17ある各種委員会で審議と採決を行った上で、本会議にはかるというプロセスになっている。

つまり、国政上の具体的な問題点を巡る審議は、主に委員会の場で行われる。本会議には議員全員が参加するため、所属議員数が少なくなる委員会に比べ、議員一人当たりの発言の機会は少なくなる。

「国会議員白書」(2022年7月7日現在)上の24期25期のデータでは、本会議での発言回数が0という議員もそれぞれの期で50〜60人おり、本会議で発言がないことは珍しくないことがわかる。

委員会での各議員の発言回数を見ると、朝日氏より回数が少ない人はそれぞれの期でやはり50〜60人おり、突出して低いとは言えない。

今回、朝日氏について広がっていた画像は独立系メディア「リトマス」によるファクトチェックの対象ともなったが、その後も拡散は止まらなかった。

7月6日夜には「#朝日健太郎って誰だよ」というハッシュタグがトレンド入り。複数のユーザーが投稿した同じ画像が再び広がりを見せた。同様の情報もあわせて広がり、数千リツイートを超えたものもある。

選挙期間中には支持しない候補や対立する候補をおとしめることにつながる言説が広がりやすくなる。投票行動につながるミスリーディングな情報には、注意が必要だ。

【訂正】

朝日健太郎氏について当初の記事で(元職)としておりましたが、正しくは(現職)です。お詫びして訂正いたします。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの「参議院選挙ファクトチェックプロジェクト」で覚知しました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。