• factcheckjp badge

国葬参列のバッハ会長「1泊200万円のスイート、日本国民の血税で連泊」宿泊費めぐり拡散の情報は誤り。外務省は負担を否定

バッハ会長が「日本国民の血税(税金)で宿泊」しているとする指摘は、誤りだ。そもそも、日本側が負担をしていないからだ。

9月27日に開かれた安倍晋三元首相の国葬をめぐり、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の宿泊費をめぐるツイートが拡散している。

「1泊200万円のスイート、日本国民の血税で連泊」などとするもので、同様の情報が複数拡散しているが、これは誤りだ。

外務省は、海外参列者の旅費や滞在費などを日本側が負担することはないと否定。日本オリンピック委員会(JOC)も同様に否定した。注意が必要だ。

拡散しているのは、9月26日0時すぎの以下のようなツイート。

「『ボッタクリ男爵』ことバッハ会長を招いたのはいいとしても、バッハ会長の希望で2日も前乗りさせて今日25日に来日させて、今夜と明日、1泊200万円もするスーパースイートに日本国民の血税で連泊させるんだとさ!ふ・ざ・け・ん・な!」

発信元はブロガーのきっこ氏で、フォロワーは20万人以上。今年5月にも安倍元首相に関する誤情報を発信していた。

今回のツイートは9000件以上のリツイートと、1万9千以上のいいねを獲得。複数のトレンドブログや、経済評論家が自らの書籍のYouTube広告で引用していることも確認できた。

なお、同様の言説はそのほかにも拡散。フォロワーが13万人以上の池田清彦・早大名誉教授も同日夜に「バッハ、国葬利用して、豪遊ですか。一泊200万円のホテルで2泊。(中略)あんたの金じゃなくて国民の税金だよ」などとツイートし、2万3千以上のいいねを集めている。これは「東スポWEB」が記事化した。

しかし、バッハ会長が「日本国民の血税(税金)で宿泊」しているとする指摘は、前述の通り誤りだ。そもそも、日本側が負担をしていないからだ。

BuzzFeed Newsは外務省に、バッハ会長を含む「海外から代表が参列する国・地域・国際機関等」(計117、同省サイトで公表)について、その宿泊費や渡航費、滞在にかかる経費を日本側が負担するかどうか取材した。

今回拡散していたバッハ会長に関する言説についても事実関係を確認したが、同省報道課の担当者は「今回の国葬儀に関し、海外参列者の旅費や滞在費等を日本側が負担することはございません」と、いずれも否定した。

なお、外務省の担当者は9月2日の野党ヒアリングでも、「渡航費、宿泊費は先方参列者の所属する国、ないしは機関がお支払い頂くということになっていますので、外務省として部屋を押さえているということはございません」としている。

また、日本オリンピック委員会(JOC)の広報室も、JOCとしては負担していないと否定した。

一泊「300万」と過去に批判も…?

バッハ会長をめぐっては、東京五輪の際の宿泊経費を日本側が負担するのかどうかが批判対象となったことがある。

IOC幹部らの宿泊料について、招致段階では1泊の上限(400ドル)を超える分を組織委側が負担することとなっていたからだ。

バッハ会長の宿泊費については、一泊あたり「300万円」「250万円」などとも伝えた週刊誌報道などもあり、批判が巻き起こった。

しかし結果として、IOC幹部の宿泊費は、全額IOC側が負担する方針となった。これは、開催前(2021年6月2日)に野党側の質問に対する国会答弁で明らかになっている。

朝日新聞(2021年6月11日)によると組織委側は「延期や新型コロナ対策」による負担を受けたものではないかとしたうえで、「1泊300万円などの部屋を使うことは、そもそもない」とも説明したという。

なお、今回の国葬に伴うバッハ会長の宿泊費に関する報道は見つからなかった。

過去の情報をもとに、《【悲報】国葬に参加のIOCバッハ会長、今回も一泊250万円のホテルに宿泊か》という見出しの記事を9月25日に配信しているまとめサイト(ツイッター速報)などがあるのみだ。

賛否が分かれていた国葬ではあるが、参照する情報には注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。