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学術会議が「レジ袋有料化を提言」は誤り。ネット上で拡散、実際の内容は?

拡散のきっかけになっているのは、東京新聞が10月8日に報じた日本学術会議・大西隆元会長の寄稿だ。しかし、レジ袋の有料化は政府が2018年ごろから進めてきたもので、担当する環境省も学術会議の関与を否定している。

日本学術会議が「レジ袋有料化を提言した」などとする情報がネット上に拡散している。これは「誤り」だ。

学術会議がこれまで出してきた提言や国際的な共同声明では、海洋プラスチック問題に関する言及はあるが、「レジ袋の有料化」を政府に求めるものはない。

そもそもレジ袋の有料化は政府が2018年ごろから進めてきたもので、担当する環境省も学術会議の直接の関与を否定している。BuzzFeed News はファクトチェックを実施した。

Twitterより

ネット上で拡散しているのは「レジ袋有料化は日本学術会議のせい」「レジ袋有料化を日本学術会議が提言した」などという情報だ。

きっかけになっているのは、東京新聞が10月8日に報じた日本学術会議元会長の大西隆・東京大名誉教授の寄稿。「レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ」との小見出しがつけられている部分に、以下のような記載がある。

微細なプラスチック片が分解されずに海に滞留し、摂取した魚、さらに人に害を及ぼすから、プラスチックの利用を大幅に削減しようというキャンペーンが、レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった。

この点を複数のインフルエンサーや政治家らが「レジ袋有料化」「やっぱりレジ袋有料化というバカ政策は学術会議か」などと引用し、それぞれのツイートが拡散。

「アノニマスポスト」や「Share News Japan」「ツイッター速報」などのまとめサイトに掲載され、拡散した。計測ツールBuzzSumoで調べたところ、このサイトでSNS上で2万以上シェアされている。これを機に、「レジ袋有料化を提言した」とだけする単体の情報も多々を見せている。

寄稿の「学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱」について、大西名誉教授はBuzzFeed Newsの取材に対し、2015年のG7サミットに提出された「Gサイエンス」による共同声明のことである、と明らかにした。

「学術会議が、レジ袋の有料化自体を提案したわけではありません。各国のアカデミーとともに出した共同声明が、プラスチックごみの削減に関する世界的に広がった動きやキャンペーンのきっかけになり、結果として日本における有料化という政策につながっているのだと提示しました」

学術会議は先進諸国のアカデミーによる「Gサイエンス学術会議」の枠組みに参加している。

学術会議サイトによると、2005年のG8サミットに対し、各国や関係国のアカデミーが気候変動やアフリカ開発に関する共同声明を出したことをきっかけに、「Gサイエンス学術会議」がはじまった。「毎年、サミットの開催国を主催アカデミーとして取りまとめられる共同声明は、参加各国の首脳に提出」されるという。日本であれば、学術会議会長から首相に手渡されることになる。

大西教授が指摘する2015年の「海洋の未来:⼈間の活動が海洋システムに及ぼす影響」という共同声明では、海洋プラスチックごみが海洋生物に与える問題に言及。

主催者のドイツのアカデミーからはメルケル首相に手渡され、これがG7でも議題となり、はじめて政策レベルで国際的な課題としての「海洋プラスチック問題」が提起されるきっかけになったという。

そのうえで大西教授は、これを機にプラスチックごみに関する世界的なキャンペーンが醸成されたとし、その後の2018年のG7で採択された「海洋プラスチック憲章」につながり、さらに2019年の大阪サミットでの議論にも発展したと言及した。

つまり、学術会議の提言は「レジ袋有料化」そのものに関するものではない。広い観点から海洋プラスチックごみの問題に警鐘を鳴らしたものだ。

しかし東京新聞の「レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ」とする小見出しがミスリードを呼び、「レジ袋有料化も学術会議の提言」という誤った情報に発展しているとみられる

なお、東京新聞はBuzzFeed Newsの取材に「寄稿文の文中から見出しをつけた」と答えている。

環境省も「提言」を否定

時事通信

2016年の「G7サミットに向けた共同声明」を日本学術会議の大西隆会長(右から3人目)から受け取る安倍晋三首相(当時)

2015年の共同声明以外で、学術会議がこれまで出してきた共同声明や提言などのなかに、「レジ袋の有料化」を政府に求めるようなものは見当たらない。

たとえば、大阪サミットにあわせた「海洋プラスチックごみ」に関する各国アカデミーによる共同声明は2019年に出されている。

ここでは「科学と政策」が協力をすることで、環境親和性のあるプラスチック製品や代替素材の研究開発や、科学的根拠に基づく使い捨てプラスチック仕様の削減やリサイクルなどが必要になると提言しているのみで、「レジ袋有料化」には触れていない。

また、学術会議としては2020年4月に「マイクロプラスチック」に関する提言は出しているが、これはそもそも「レジ袋有料化」が政策として決まったあとのものだ。

レジ袋有料化の検討を進めてきた環境省リサイクル推進室の担当者もBuzzFeed Newsの取材に「直接、学術会議から提言を受けた政策というわけではありません」と、拡散している言説を否定した。

レジ袋有料化の経緯は?

AFP=時事

そもそも「レジ袋有料化」は政府が2018年6月に閣議決定された「循環型社会形成推基本計画」に基づき進められてきたもの。一連のプロセスに、学術会議は関与していない。

2018年8月から「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会」でその方向性が決められており、レジ袋の有料化にはここでの議論において言及されるようになった。

19年2月には 原田環境相(当時)が会見で「レジ袋の有料化についても方向性を整理していただいた」と述べている。なお、学術会議が携わっている「サイエンス20」の共同声明が同年3月であるため、それより前のできごとであることにも留意が必要だ。

政府としては小委員会による答申を受け、19年5月に「プラスチック資源循環戦略」が定められた。ここでは明確に「有料化」に言及されている。そして、19年9月からは環境省はが「レジ袋有料化検討小委員会」を4回にわたって開催。同年末のパブリックコメントを受け、関係省令の改正によって有料化が決定した。

学術会議が関わってきた「Gサイエンス」の共同声明が世界的、ないしは国内的なマイクロプラスチック削減に向けたキャンペーン醸成のきっかけになったことは事実だ。

しかし、「レジ袋有料化」という日本政府の個別具体的な政策に直接、提言をしているわけではないと言えるだろう。


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