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DHC、差別文書を全削除もノーコメント。JR西やイオンなど取引先が批判、自治体対応も相次ぐ

この問題をめぐっては、包括連携協定を解除する自治体や、CM枠の販売を取りやめるテレビ局が出たほか、JR西日本やイオンなど、主要取引先の複数社からも反発の声があがっていた。

化粧品販売大手DHCの吉田嘉明会長が、サイト上に在日コリアンに対する差別的なメッセージを繰り返し載せていた問題。

掲載されていた3つの文書が、5月31日夜までに、すべて削除されていたことがわかった。

この問題をめぐっては、包括連携協定を解除する自治体や、CM枠の販売を取りやめるテレビ局が出たほか、JR西日本やイオンなど、主要取引先の複数社からも反発の声があがっていた。

(*この記事には差別的な文言が含まれます。閲覧にご注意ください)

まず、経緯を振り返る

吉田会長に批判が集まるきっかけとなったのは、DHC公式オンライショップに掲載された「ヤケクソくじについて」という2020年11月付のメッセージ。ライバル企業であるサントリー(ウエルネス)について、以下のように記していた。

サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です。

このメッセージはTwitter上で「差別的」であることに対して批判が殺到。「#差別企業DHCの商品は買いません」というハッシュタグがトレンド入りした。

また、こうした経緯をNHKが4月9日の「おはよう日本」で報じたところ、吉田会長は改めて「NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう」などとする文書を公開。

在日コリアンに対する根拠に基づかない差別的な表現も多く、「国境を侵して侵入している敵には即座に銃撃して追い返すのが常識であろう」などと、攻撃を扇動するようなことも記していた。

さらに5月に公開した文書では、寄せられている批判や広告販売の拒否などに触れながら、「私はレイシストなんかでは全くありません」「好き嫌いということでは、私の周りにいるコリアン系の人たちは大好きな人たちばかり」などと主張。

改めて「日本の中枢を担っている人たちの大半が今やコリアン系で占められていることは、日本国にとって非常に危険」とする持論を展開していた。

サントリーに関する文書は5月21日までに削除され、ほかの2つの文書についても5月31日までに削除されている。

サイト上には「2021年5月末をもってヤケクソくじの配布を終了致しました。くじのリニューアルを予定しておりますのでご期待下さい」だけと記されているが、文書削除についての説明は記されていない。

自治体からも批判の声

一連の差別的発言は、国会でも取り上げられた。今年4月2日の衆議院法務委員会で自民党の武井俊輔議員が「ヘイト企業のあり方も非常に残念」と本件に言及。

上川陽子法相が「企業にはむしろ率先してヘイトスピーチを含めたあらゆる差別・偏見をなくして、人権に配慮した行動をとるということについて考えて、深く行動していくことが大事」と、発言に否定的な答弁している。

また、DHCと関わりを持っている自治体からも反発の動きが出ていた。

同社との包括連携協定を解消する動きも出ている。「ヘイト発言はあってはならないこと」(高知県南国市)「発言は容認できるものではない」(熊本県合志市)のほか、高知県宿毛市も同様に解消手続きを進めている。

個別協定を結んでいる神奈川県平塚市も、「あるまじき内容」などとし文書の削除を要請。協定見直しを含め対応を検討しているという。そのほかの自治体にも、削除要請をするなどの動きが広がっている。

また、DHC商品をふるさと納税の返礼品としていたさいたま市も取り扱いを5月25日に取り消した。担当者は「一連の文書について、DHC側からの説明が十分ではなかった。返礼品は寄付いただいた方への謝意をあらわすものであり、市のPRにつながるものでもあるため、相応しくないと判断した」としている。

一方、日本テレビが差別的表現を理由にDHCへのCM枠の販売を拒否したほか、新聞折り込み広告についても、毎日折込、読売IS、サンケイアイの3社が拒否していた。

取引先の対応は?

さらに、DHCとの取引先である32社のうち、7社が何らかの対応をとったことが、NPO法人「多民族共生人権教育センター」(大阪市)などの調査で明らかになった。

同センターは、DHCの主要取引先銀行、商品を販売している小売店・ドラッグストア、直営店が入店しているショッピングモールなどを運営する32社に対して、「取引を継続していることによる人権に対する負の影響を軽減するための適切な措置」を求める要望書を提出。

このうち22社から、対応に関する回答があったという。BuzzFeed Newsが入手したセンターの調査結果によると、具体的に対応をとったのは以下の7社だ(集計は同センターによる)。


JR西日本(*駅内コンビニチェーンなどを運営するJR西日本デイリーサービスネットも同様の回答)

「同社のウェブサイトにおける一部表現については、私どもの方針にそぐわないものであると認識し、同社に対し、取引関係者として、事態を憂慮し、遺憾の意をお伝えいたしました」

イオン株式会社(R.O.U株式会社、ミニストップ株式会社、イオンリテール株式会社を代表し回答)「どのような経緯ないし趣旨で、そのような発言が会社のホームページに掲載されているのかについて、同社宛に事情説明依頼文書にて事情の説明を求めております」「同社が、上記のような発言を容認するとすれば、それはイオンの方針とは相容れないことについても付言しております」

平和堂(小売チェーン)「吉田会長の発言は不適切と考え、現在、会社の公式見解を求めております」「取引を中止することで問題の根本的な解決には至りませんので、現時点では継続する方向で考えておりますが、公式見解・回答を待ち、対応を検討する所存でございます」

コクミン(ドラッグストアチェーン)「人権差別発言に関しましては再発防止の要望をいたします」


なお、ドラッグストアチェーンのキリン堂ホールディングスは「当該人物の発言内容は、社会性を著しく欠くものであり、当社として相容れるものは一切ありません」「DHCの今後の対応に基づき、当社として、今後の方針を検討していきたいと考えております」と回答した。

このほか、セブン&アイ・ホールディングスは「不当な差別を助長するようなことはあってはならない」などとしながら、基本方針に従って個別に対応すると回答。DHCに対する個別の言及はなかった。ローソンなども同様だった。

りそな銀行、UFJ銀行、みずほ銀行、ファミリーマート、イズミヤ、アスクル、東急ハンズはいずれも「個別の回答を控える」とコメントしている。

なお、楽天グループやツルハドラッグ、コスモス、デイリーヤマザキ、ポプラ、ダイコク、ドラッグユタカ、KIDDY LAND、アリー、ショップインの10社は、期日までの回答がなかったという。

DHCの回答は

DHCはサントリーを「チョントリー」などと揶揄する表現をしていた文書を削除した理由について、5月25日、「本件に関するコメントは差し控えさせていただきます」と回答した。

なお、この件についてサントリー側は抗議していなかったという。

BuzzFeed NewsはDHC側に、サントリーに関するもの以外の2つの文書に関しても、削除の経緯や批判への見解を問い合わせている。

回答があり次第、追記する。

UPDATE

DHC広報部は6月1日夕、「本件に関するコメントは差し控えさせていただきます」とメールで回答した。