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「バイデン氏に1823年生まれの197歳が投票」は誤り。大統領選の「不正疑惑」として拡散したが…

この画像は今回の大統領選についてのものではない。2019年12月のFOXニュースの報道だ。トランプ氏を支持する保守系の市民団体が、デトロイト市の選挙人名簿に不正があるとして訴訟を起こしたことを伝えるものだ。

アメリカ大統領選をめぐり、「デトロイトでは1823年生まれで197歳の老人までバイデン氏に投票」という画像が拡散している。

しかし、これは誤りだ。この画像は2019年12月の訴訟に関する報道で、2020年11月の大統領選の投開票に関するものではない。

また、訴訟はすでに取り下げられている。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。

Twitterより

ネット上に拡散しているのは、米FOXニュースの報道を撮影したとみられる画像だ。そこには以下のように記されている。

  • 4788人は複製された登録者
  • 32519人の登録者は有権者よりも多い
  • 2503人の死人が登録されていた
  • 1823年生まれの登録者がいた


この画像は今回の大統領選をめぐり、「不正選挙は本当だ。トランプ氏は正しい」などとして、アメリカで拡散。

日本でもTwitterなどを通じて広がった。なかでも「勝海舟と同じ歳の方が登場」などとツイートした元自民党北海道議のツイートは8000いいねされるなど広がりを見せている。

また、このツイートをまとめサイト「アノニマスポスト 」「保守速報」「Share News Japan」などが記事化したことで、情報はさらに一人歩きしている。「保守速報」の記事に関しては、拡散している豊島区議(元NHKから国民を守る党、現テレビ改革党)もいる。

Twitterより

しかし、この画像は今回の大統領選についてのものではない。2019年12月のFOXニュースの報道だ。

トランプ氏を支持する保守系の市民団体が、デトロイト市の選挙人名簿に不正があるとして訴訟を起こしたことを伝えるものだ。

当時の地元紙デトロイトニュースの報道によると、市民団体側は他にも同様の訴訟を各州で起こしている。そのうちデトロイトでは、105歳以上の登録者がいると指摘。2503人の死亡の可能性が高い人が登録されており、うち65%は10年以上前に死亡している、などと主張した。

FOXニュースの報道によると、この訴訟は地元の民主党と共和党の非難の応酬にも発展。民主党側は「クリックベイト見出し(釣り見出し)をつくるための訴訟だ」とし、共和党側は「デトロイト:死者が投票できる町」とツイートした。

しかし結果として、この訴訟は2020年7月に市民団体側によって取り下げられている。地元紙のデトロイトニュースによると「(行政によって)是正措置が講じられた」ことを理由にしているという。

市民団体側は、自らが指摘した死亡者や重複登録の「ほとんどすべてが修正された」とも述べたが、一方で行政側は修正は「定期的な確認」によるもの、としている。

また、行政側は1823年生まれの登録者がいた、という点について「誤植だった」ことも明らかにしている。さらに、行政側は死亡者については定期的に排除しているとも述べている。

つまり、今回の大統領選に絡み、この画像を引用して「死人が投票した」などというのは誤りであると言える。

なお、そもそも「死者が投票できる」可能性は極めて低い。投票用紙には署名が必要であり、死者の名前を記すことは、偽造であり、犯罪になるからだ。

米ファクトチェックサイト「Politi Fact」は、有権者名簿に死者が残っていたとしても、選挙委員会が情報を精査するため、実際に投票できる可能性はほとんどない、とする専門家の見方を伝えている。

米紙「USAトゥデイ」もファクトチェックで、「郵便投票で死人が投票できる」ことには根拠がないと指摘。仮に投票されたとしても選挙委員会で破棄されるとの見方を報じている。

ただし、今回の大統領選をめぐっては、トランプ氏側はネバダ州で「死人が有権者にカウントされていたと信じている」などと主張し、訴訟を起こす考えを示した。そのほかの州でも不正があったとして、相次いで同様の訴訟を起こしている。

そもそもトランプ氏は「郵便投票で不正が起きる」根拠を示さずに主張をしてきた。実際に開票が進み、劣勢が明らかになるなかで不正が存在すると強く主張。「集計を止めろ」とツイートしている。

大統領選をめぐっては、アメリカのみならず日本でも、誤っていたり、ミスリードだったりする「不正疑惑」が多数拡散している。その背景には、トランプ氏側の姿勢が大きく影響しているとも言えるだろう。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。

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