
伊藤さんは「まだ、どのようにこの結果を受け止めていいのか、わからない状態です。確かに素晴らしい結果になりましたが、今まで公にならなかった証拠や証言をオープンにし、議論できたかなと思います」と話した。
「初めてここで会見した時は、今後どうなるかわからないとの気持ちでした。この2年間、#MeToo のキャンペーンも盛り上がり、報道を含めていろんなことが変わりました。裁判官の方に判決文として、どう思ってもらえたのか知れたのはとても有意義でした」
「多くの支えてくれた方がいたから、ここまで来れたと思います。本当にありがとうございます」

多くの支援者らが注目した裁判の判決日を迎えたこの日は、「特に緊張もせず、聞くだけしかないので」との思いだったという。
「(勝訴という)裁判長の話を受けても喜びというよりかは、ただただ結果を聞くだけで。個人的には、だからといってこれまで受けてきた傷が癒えるわけでも、終わりでもないからです」
「(性暴力被害者を取り巻く法的・社会的システムを)どう改善すべきかを考えるうえで、裁判の結果は嬉しい限りです」
山口氏は、「私が述べたこと、私が目撃して証言したこと、私が説明した部分はことごとく否定されている」として、控訴する意向だ。
こうした動きを、伊藤さんは冷静に受け止めた様子だった。
「裁判はこれで終わりではないと思っていたし、この判決日をゴールとして、みなさんの前で話してきたわけでもありません。できることがまだまだあります。なので、この判決は一つのピリオドであるけれど、新しくスタートすることもたくさんあります」
一方、弁護団は「性被害者を勇気付ける結果になった」と判決結果を振り返り、「詩織さんの話は一貫していたので、真実をしゃべっていると考えていたので、負けるかもしれないというリスクを感じませんでした」と伊藤さんを労った。
伊藤さんは2015年4月、当時のTBS・ワシントン支局長だった山口氏と就職相談のために会った。東京都内で食事をすると、2軒目の寿司屋で記憶を失い、痛みで目覚めた。そして、山口氏が宿泊していたホテルのベッドで、レイプされていることに気づいたと主張している。
2017年9月、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて提訴した。一方、山口氏は2019年2月、記者会見などで伊藤さんに名誉を毀損され、社会的信用を失ったとして、慰謝料1億3000万円や、謝罪広告の掲載を求めて反訴した。
そのため、この裁判では合わせて審理。山口氏は「合意があった」「伊藤さんから積極的に誘ってきた」「虚言癖がある」などと法廷で反論していた。