勝訴した伊藤詩織さんが、判決直後に語った言葉「景色が以前とはまったく違う」

    東京地裁は、山口敬之氏に330万円の損害賠償を命じた。

    意識を失った状態で性行為を強要され、重大な肉体的、精神的苦痛を被ったとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏に対し、慰謝料など損害賠償を求めた訴訟の判決が12月18日、東京地裁であった。

    鈴木昭洋裁判長は、山口氏に330万円の支払いを命じた。一方、名誉毀損だとして反訴していた山口氏側の請求は棄却した。

    約200人が傍聴を求めた

    この日の裁判には伊藤さんの支援者らも詰めかけた。傍聴席34席に対して、198人が傍聴券を求めて並んだ。

    伊藤さんは判決の直前にも会見し、「お互いの主張すべてをテーブルに置いて考えてもらう機会になった」と語っていた。

    訴状などによると、伊藤さんは2015年4月、当時のTBS・ワシントン支局長だった山口氏と就職相談のために会った。東京都内で食事をすると、2軒目の寿司屋で記憶を失い、痛みで目覚めた。そして、山口氏が宿泊していたホテルのベッドで、レイプされていることに気づいたと主張し、2017年9月、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて提訴した。

    一方、山口氏は2019年2月、記者会見などで伊藤さんに名誉を毀損され、社会的信用を失ったとして、慰謝料1億3000万円や、謝罪広告の掲載を求めて反訴した。

    そのため、この裁判では合わせて審理されていた。

    ジャーナリストの伊藤詩織さんが、民事裁判の判決を前に記者会見をしています。 「訴訟を起こしてからのプロセスで、出てきた証言や公になったこと、互いの主張すべてをテーブルに置いて考えてもらう機会になった。これは民事だからできたのかなって思っています」


    伊藤さん「少しずつでも大きな変化」

    伊藤さんは判決後、地裁前で報道陣の取材に応じると、「どう受け止めていいのか。民事裁判が進む中でのプロセスが大切だと思っていました」「支援してくださってありがとうございます」などと語った。

    一方、山口氏は敗訴という結果を受け、傍聴席には目を向けずに裁判長や裁判官に一礼し、最後に法廷を後にした。その表情は硬かった。

    伊藤さんが判決後、支援者らに向けて語ったメッセージは以下の通り。

    「心は一緒だよっていろんな方に言っていただいて、どんな結果になっても大丈夫だよ、今までのことがあるから大丈夫だよと声をかけていただいて、なので私は結果があっても、なくても、と思っていたんですけど、でも良い結果を皆さんにお届けすることができて、本当に嬉しいです。ありがとうございました」

    「長かったですね。でもこうやって少しずつでも大きな変化が、私が見てるこの景色が以前とはまったく違うものなので、本当にみなさんありがとうございます」

    「法律もしくは報道の仕方、教育であったり、いろいろまだまだ宿題はあると思いますが、一つひとつ皆さんと考えていけたらと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします」