お寺での断食修行が、あまりにも良かったのでお伝えします。

    「お寺で断食修行やってみたいな〜」と思ったことはありませんか?実は、東京からすぐの成田山新勝寺で断食のための合宿が出来ちゃうんです。男性にも女性にもオススメです。今回はそんな日本有数のお寺で行われる、断食道場を徹底レポートします。

    お寺にこもり、3泊4日の断食修行を体験してみました。

    流行りの酵素ドリンクや野菜ジュースなんてない。口にできるのは、水道水のみ。

    さらに、スマホやパソコンなどの電子機器の持ち込みができず、体力を損なうとの理由から入浴もできない。

    まさに苦行です。それでも、あまりにも良いことずくめだったので、お伝えしようと思います。

    断食修行の場は、千葉県の成田山新勝寺。

    平安時代に開山し、本尊は不動明王。正月三が日の人出は東京都の明治神宮に次いで例年全国2位の有名なお寺です。

    HPには、断食修行の目的がこう記されていました。

    断食道場での修行の目的は、お不動さまの御加護のもと、不動の信念と心身の鍛練を体得することにあります。

    ここで「学問の神様」とも言われる二宮金次郎や、歌舞伎役者である歴代の市川團十郎らが断食修行をしたそうです。

    私は、知人から「楽しいから絶対体験したほうが良い」と紹介され、好奇心という浅はかな理由で体験しました。彼らの動機とは、雲泥の差があるのは間違いない。

    みなさんが気になるのは、値段ですよね。

    断食修行は、2泊3日から6泊7日まで可能です。ただし、初めての人は3泊4日まで。

    注意すべきなのは、命の危険があるため薬を日常的に服用している人はそもそも修行ができません。

    後述するクリニックでの健康診断で、手渡された同意書は「人間が生命を維持するためには常に栄養の補給を必要とします」から始まり、断食は医学的に推奨されておらず、自己責任で自主的にやるべきだと書かれていました。

    値段は、2泊3日で5000円。追加で1泊ごとに1000円ずつプラスされます。そして、3泊4日以降は、最終日に朝食がいただけるサービス(?)付です。

    つまり私は6000円でした。修行前に必要な健康診断代と合わせて9330円。

    ピンキリですが、一般的なファスティング施設では、1泊あたり1万円以上、コースによっては10万円近くします。そう思うと、破格の安さです。

    前置きが長くなりましたが、実際にどんな修行だったか書いていきます。

    まず電話で事前予約をしました。

    お寺の担当者に希望日と期間を伝えると、「本当に来れますか?」と返答が。淡々とした受け答えに、少し尻込みしながら「はい、行けます」と決意を新たにしました。

    すると、入浴できないこと、数日間減食してから来ること、持ち込み可・不可の荷物が伝えられます。必死にペンを動かしてメモを取ります。

    【主な持ち込み可(持ってくるべき)のもの】

    着替え、保険証、目覚まし時計、ノート、ボールペン、洗面用具、歯ブラシ、歯磨き粉、本(仏教関連のみ可)

    【持ち込み不可なもの】

    目覚まし時計以外の電化製品、薬、飲食物

    最後に、当日の朝、お寺近くにある指定のクリニックで健康診断を受け、「終わったらまっすぐ来るように」と念押しされると、電話を終えました。

    持ち込んで楽しめるとしたら、仏教の関連本しかありません。まさにデジタルデトックスの日々が始まります。

    こちらが断食開始1日前の私です。

    断食3日前から減食しようと思ったのですが、3日間とも飲み会をしてしまい、断食当日の朝を迎えてしまいました。本当はだめです。

    午前5時に起床し、電車を乗り継ぎ、京成成田駅に到着です。

    普段、電車のルートや地図は、スマホのアプリに頼っているため、ノートに書いておいたメモが頼り。

    クリニックで午前8時20分までに健康診断の受付をしないといけません。

    健康診断を終えると、お寺に直行します。成田の名物、うなぎ屋の前を通り過ぎると、食欲が湧きあがります。辛っ。

    午前9時前、なんとかお寺に着きました。

    新入りは私と女性1人でした。

    2人で世話係の方から修行中は境内から出てはいけないなどの説明を受けると、鋭い目つきになり「携帯とか電子機器持ってきてないですよね?」と厳しく問われました。

    見つかった場合は、すぐに退堂させられ、二度と修行を体験できなくなるようです。

    男子断食道場に案内されると、男性は誰もいませんでした。まさかの1人です。

    部屋が広すぎるし、かなり寂しい。

    【お詫び】カメラが持ち込み禁止のため、ここからは修行中に私が描いた絵をもとに、イメージをつかんでください(下手すぎてすみません)。

    前述の通り、入堂後は水道水しか飲めません。世話係からヤカンと湯のみが貸与されました。

    「水分摂取確認表」に「正」の字で何杯飲んだかを記入し、次の日以降、毎朝確認を受けることになります。

    脱水症状を防ぐため、1日20杯(2リットル)程度を飲むよう指示されました。

    とりあえず1杯飲んでみると、味はまあまあ。少し金属っぽい味がします。

    それにしても暇です。

    ここの断食修行は、なんと言っても自由時間が長いのが特徴です。

    1日のスケジュールがこちらです。

    <朝>

    午前4時半:起床

    午前4時55分:健康チェック(世話係に体調を報告。水分摂取確認表を見てもらう)

    午前5時半:大本堂にて御護摩祈祷を参拝(「護摩木」という薪を焚いた炎を前に、家内安全など諸願の成就を祈る行事)

    <昼>

    午後2時55分:健康チェック(世話係に体調を報告)

    <夜>

    午後6時:断食道場からの外出禁止

    午後10時:消灯

    つまり、1日に3つしかやるべきことがないのです。

    それ以外は、寝るも良し、読書も良し。

    また、断食修行者は、その日ごとに可能であれば、密教坐禅をしながら静かに心の中で自分の呼吸を数えて精神の安定を図る「数息観」や、写経を無料で体験できます。さらに、境内にある書道美術館は入場無料だし、仏教図書館(漫画もあり)も利用できます。

    なので、何もしなければ暇ですが、その気になれば思い思いの充実した時間が過ごせるんです。しかも、修行者なら写経などが無料というのは、お得感しかありません。

    私のお気に入りは、東京ドーム約3.5個分ある成田山公園を散歩することでした。

    豊かな緑が広がった公園には滝や3つの池があり、猫や鯉がたくさんいます。

    「ここでバーベキューしたら、最高に気持ちいいだろうな」なんて考えながら、時間を忘れて自然を満喫しました。

    あと、境内には国の重要文化財に指定される建築物が5棟もあり、お堂をゆっくりと見られるのは最高でした。

    1日目の昼には、般若心経の写経を体験。忙しい日は、何も食べないこともあるので、余裕で乗り切れました。

    ただ、夜はかなり冷え込んだため、やけに重い布団にくるまって寝ました。

    もっと防寒具が必要だったな、と後悔です。

    2日目の朝。時間通り午前4時半に起床しました。

    前日は午後9時には寝たからか、二度寝したいとも思わずすんなり起きることができました。しかし、お腹が鳴ります。

    健康チェックを終え、長い階段を上って大本堂へ。午前5時半からの御護摩祈祷の参拝です。

    これがすごいんです。朝は、日中にそれぞれのお堂にいるお坊さんたちが大集結。30人はいたと思います。

    あれもお坊さんなのでしょうか。中には、小中学生くらいと思われる年齢の人もいて、あくびをしていました。誰もが眠いときは眠いみたいです。

    炎が上がる様子は荘厳で、近所の人なのか多くの信徒の人らと一緒にお祈りしました。心が洗われたかはわかりません。

    私の断食修行中、とても良かったことがあります。

    それは「開基1080年祭記念大開帳」が開催中だったことです。10年に一度の盛大な催しで、期間中はさまざまな法要や行催事が執り行われていました。

    大本堂の前には、特別に1本のモミの木でできた高さ12メートルの「大塔婆」が建てられていました。不動明王像と大塔婆が綱で結ばれ、触れると御利益があるとされており、長蛇の列が連日できていました。

    そんなこんなで特別な期間を味わいながら、密教座禅も体験。男性1人っきりの2日目を終えました。

    ただ、この日は正直かなり辛かったです。「あと1日ちょいあるのか、長いなー、腹減ったー」と布団の中で苦しんでいました。

    いよいよ3日目。午前4時半に起き上がると、すっきりしている自分に気づきます。

    前日より体は軽いし、食欲が湧いてこない。不思議な感覚です。

    明日には帰れると思えば思うほど、せっかくならとやる気がみなぎってきます。

    2回目の写経、仏教美術館、お堂巡りなどテンションが上がりながら楽しめました。仏教図書館では、食欲がないながらも「駅そば」特集をした雑誌を熟読しました。

    それに、この日からは男性1人が新しく断食修行に加わったんです。会話を楽しんでいると時間を忘れます。

    その人からの「やっと明日シャバに戻れますね」の一言に、「おいおい」と思いながらも、つい笑ってしまいました。

    こうやって長かった断食生活最後の夜を過ごすと、きつかった思い出ばかり浮かんできました。

    例えば、道場から一歩出ると、強烈なうなぎの香りが漂ってきたり、

    境内には屋台が多すぎたり、と誘惑との戦いの日々でした。

    何かを食べにこっそり境内を抜け出した人いただろうな、と思わずにはいられませんでした。

    そして、ついに最終日の4日目を迎えました。

    ルンルン気分で朝の御護摩祈祷の参拝に向かいます。「これで最後か」と思うと感慨深い。それでも、頭の中は、この後いただける朝食のことばかり。煩悩やばい...。

    そして出ました。これが待ちに待った朝食です。重湯、焼き味噌、梅干し、そしてお茶という断食明けには豪華すぎる料理の数々です。食べると...

    本当にうまい!なんだろう、この感動は!

    食事のありがたみを感じながら、鍋に入っていた重湯のおかわりを重ね、完食しました。

    「おいしかったです。ごちそうさまでした」と世話係に感謝を伝え、断食道場に戻りました。義務である感想文には、こんなことを書きました。

    時間が経つにつれ、不思議と食に対する執着心がない自分に気づいた修行だった。食欲の低下と同時に、物欲なども薄れ、他人にも寛大な心を持てるような気がした。

    世話係の人たちに感想文を提出し、最後のあいさつをすると、「2、3ヶ月間あけると、次は6泊7日できますから」と勧められました。さすがにきついだろうなと思い、「機会がありましたら」と返すしかありませんでした。

    そして、修行の体験者に別れを告げ、私は断食修行を終えました。

    数日間の断食をすると五感が研ぎ澄まされるという話を聞いていましたが、私は味覚だけが敏感になり、他はよくわかりませんでした。

    それは別によく、充実した修行で本当に来てよかったと思えました。

    毎日訪れていたお堂のお坊さんには顔を覚えられていて、最終日に「回向(えこう)」という仏教用語を教えてもらいました。

    ゴミ拾いの体験を交えながら、「人のために善の行動をすれば、必ず自分にも善いことが起きますよ」と意味を教えてくれました。修行をしていなかったら、知ることのない言葉だったでしょう。

    もう一つ良かったのが、体重が減るという特典がつきました。何も食べないわけですから当然です。

    これが

    こうなりました。3.3キロ減でした。

    見た目はそんな変化がなさそうな気がしますが、「痩せた」「肌つやが良くなった」と褒められます。自信つくー!

    断食後は、回復食という体に負担をかけない食事を取って、通常の食事に徐々に戻さなくてはいけません。

    私も極力頑張ろうとしましたが、欲に負け、断食を終えて2日後にはキャンプに行ってしまいました(みなさんは気をつけて)。

    現在まで幸いにも体調は崩していませんし、リバウンドは全くありません。

    修行に参加した理由は人それぞれでした。

    この修行には、人生の節目に記憶に残ることをしたい人、ダイエットをしたい人などさまざまな理由で人が集まっていました。

    ただし、ダイエット目的や体力に自信がない人にはおすすめできません。

    私と同じ日に断食を始めた女性は、「気持ち悪い」などととても辛そうでした。何しろ修行の目的は「不動の信念と心身の鍛練を体得すること」ですからね。

    ですが、修行を終えれば、大きな達成感が得られるのは間違いない。日常生活に戻って煩悩ばかりの自分に戻ってしまいましたが、体験してよかったと思えます。

    健康や体力に自信があり、自己責任でやれると覚悟がある方。ちょっとした休みの使い方としていかがでしょうか?

    10年に1度の「開基1080年祭記念大開帳」は5月28日までです。まだぎりぎり間に合いますかね。

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