主人公の「僕」が登校すると、風紀委員長の金子さんがいつものように教室で「あいさつ運動」で声をかけてくれます。「おはようございます」との声にあいさつを返さず、主人公はいつものように黙って通りすぎます。
彼女の姿は主人公の「僕」以外には見えません。その声も誰にも聞こえません。金子さんは先週、交通事故で亡くなっているからです。死んだ金子さんからのあいさつに、最初こそ驚いたものの、「僕」はもう二度と耳にしないはずの金子さんの声が聞けて、徐々にうれしさが芽生えてきました。
しかし、金子さんが死後もあいさつを続けるのは、ある悲しい理由がありました……。
こんな内容の13ページの短編ホラー漫画がSNSで話題です。『僕が死ぬだけの百物語』(小学館)の第2巻に収録されているエピソードです。
作者の的野アンジさん(@matonotoma)が7月26日の「幽霊の日」に合わせて「死んだ後も女の子が挨拶をやめない理由。」としてX(旧Twitter)に投稿したところ、多くの反響が寄せられています。
💬「こんな切ない怖い話好き…」
💬「ホラーだけどギュってなるからちょっと怖いの大丈夫な人におすすめ」
BuzzFeed Japanでは、作者の的野さんに作品に込めた思いを聞きました。
「死んだ後も女の子が挨拶をやめない理由」
主人公だけが金子さんを見えるのは「金子さんの存在を強く願ったから」と作者
——「死んだ後もあいさつをやめない風紀委員長」という設定が奇抜ですが、どういうところからこのアイデアを思いついたのですか?
身近な嬉しさを考えていたところ、あいさつし合うことは嬉しいと思いました。逆にあいさつが誰からも返ってこないのはとても辛い状況だと思い、今の金子さんが生まれました。
—— ご自身が通っていた学校で実際に「毎朝の挨拶運動」はありましたか?
私の学校では順番でありました。
—— 主人公だけが、死後の金子さんの声を聞くことができるのは、主人公自身も自分の存在に迷いを感じていたからということでしょうか?
主人公に金子さんの姿が見れたのは、主人公が金子さんの存在を強く願ったからだと思います。
—— 金子さんはごく一部の描写を除いては、生きている人間と同様に描かれていますが、あえてそういう風に描きましたか?
金子さんは亡くなってはいますが人間なので、違いはあまり描きませんでした。
—— 最後に主人公からあいさつを返された金子さんの表情が印象的ですが、描くに当たってどんな思いを込めましたか?
絶対に返ってこないと思っていたあいさつに返事が返ってきて、金子さんはどれだけ嬉しくて悔しいか、伝わってほしいという思いです。