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即位礼正殿の儀とは? 平成と令和で違いは?

天皇陛下が、即位を公に宣言する儀式「即位礼正殿の儀」が10月22日に皇居・宮殿で実施される。儀式の内容と「平成」と「令和」の違いをまとめた。

天皇陛下が、即位を公に宣言する儀式「即位礼正殿の儀」が10月22日、皇居・宮殿で実施される。今年に限り、この日は祝日となる。

天皇一代で一度限りのこの儀式は、どのようなものなのか。「平成」の時とは、どのような違いがあるのかをまとめた。

「即位礼正殿の儀」とは

「即位礼正殿の儀」は、天皇の即位にともなう一連の儀式のうち、天皇が即位を公に宣言し、これを国内外の代表が祝う儀式だ。

皇族方、外国の元首、王族、閣僚、安倍晋三首相や三権の長、各界の著名人など、約2000人が参列する予定だ。

この儀式で天皇は「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」と呼ばれる正式な装束に身を包む。

「黄櫨染」は赤みがかった茶褐色、御袍は上着のこと。重要な儀式で、天皇のみが着用する。

天皇の公服に関する規定は、平安初期に嵯峨天皇の勅令で定められた。中国・唐の律令の規定や慣習を導入したものだった。

現在に至るまで、「黄櫨染」は天皇のみに許された色となっている。

皇后は、伝統の十二単姿。髪は後ろにまとめ、左右を大きく膨らませた「おすべらかし」という髪型となる。

男性皇族も衣冠束帯、女性皇族もまた十二単で儀式に臨む。さながら、平安巻物を再現した景色となりそうだ。

即位の宣言は「高御座」から

「即位礼正殿の儀」は、皇居宮殿の中でも最も格式が高い「松の間」で催される。4月30日に平成の終わりを告げた「退位礼正殿の儀」、5月1日に令和の始まりを告げた「即位後朝見の儀」も、ここで挙行された。

ただ、これらの儀式と今回の「即位礼正殿の儀」とは大きな違いがある。松の間に「高御座(たかみくら)」が設置されることだ。

高御座は、即位の礼で天皇が着く正式な玉座。奈良時代から即位の儀式で用いられるようになったとされる。当代のものは1915年、大正天皇の即位式に合わせて作られた。

高さ約6.5メートル、重さ約8トン。黒漆で塗られた浜床(木造方形の台)の土台に、8本の角形の床板と柱が八角形の屋根を被せた舞台のような調度品。釘は使わず、木材の部品に施された凹凸で組み立てられる。

通常は京都御所の紫宸殿におかれているが、即位礼正殿の儀に合わせて東京へ運ばれた。

高御座の内部には天皇用のイス(御倚子、ごいし)、「三種の神器」のうち剣と璽(勾玉)、国璽と御璽を安置する台が置かれる。

高御座の向かって右隣には、皇后の御座「御帳台(みちょうだい)」が設置される。

これが「即位礼正殿の儀」の内容だ

・22日午後1時、天皇陛下が松の間へ入られる。前には式部長官、宮内庁長官。三種の神器のうち剣、璽、国璽、御璽を持った侍従が付き従う。

・松の間に入られた天皇陛下は、松の間の中央に置かれた高御座にお昇りになる。

・皇后さまが松の間へ。御帳台にお昇りになる。

・参列者が鉦(しょう、金属の打楽器)の合図で起立。侍従と女官が、高御座と御帳台の御帳(カーテン)を開く。

・参列者が鼓(こ、打楽器)の合図で敬礼。安倍首相が天皇陛下の前に進み出る。

・天皇陛下が、即位を内外に宣言するおことばを述べられる。

・安倍首相が寿詞(よごと、祝いの言葉)を述べる。

・安倍首相の発声で参列者が万歳三唱。北の丸公園で自衛隊が21発の礼砲を打つ。

・侍従と女官が高御座と御帳台の御帳を閉じる。

・天皇皇后両陛下が松の間から退出される。

儀式に要する時間は30分程度の見通し。

「平成」と「令和」、儀式に一部変更も

今回の「即位礼正殿の儀」は、基本的には上皇さまの天皇即位時の儀式(平成2=1990年)を踏襲したものとなる。

ただし、平成と令和では、天皇皇后両陛下が松の間に入場するまでの「お出まし」の経路(ルート)や、参列者が儀式を見守るスタイルに大きな変更がある。

平成の儀式では、宮殿中庭に仮設ステージが設置された。

天皇皇后両陛下は、松の間の外の廊下を大きく迂回し、正面から入室することで、参列者が両陛下の姿や儀式の様子を直接目にできる機会が増えるように工夫が施された。

一方、今回の儀式では、天皇皇后両陛下は松の間正面ではなく、後方から入室される。これにより「お出まし」のルートは大きく短縮されることになった。

宮殿中庭に仮設ステージは設けず、参列者は宮殿の豊明殿、春秋の間、石橋の間、中庭を囲む廊下に座って待機する。各所には大小30台のモニターを設置する。

そのため、参列者は高御座と御帳台のカーテンが開く瞬間に初めて両陛下の姿を目にすることになる。

変更理由は「伝統に沿ったもの」だから

以上のような変更は、政府の式典委員会で協議、決定された。昭和天皇の頃まで京都御所で実施されていた「伝統」的な即位礼に沿ったものに……というのが、変更理由だという。

9月18日に開かれた式典委員会の議事概要によると、宮内庁の山本信一郎長官はこの日の会合で、以下のような趣旨の発言をした。

「かつて京都御所で行われていた即位礼において、歴代の天皇は、式場である紫宸殿の後方からお出ましになり、高御座にその後方の階段からお昇りになった上で、初めて参列者にお姿を現されていた」

「今回は、宮殿中庭に仮設ステージを設置しないこととする一方で、大小のモニターを多数設置することにより、参列者に天皇皇后両陛下のお姿を十分に伝えることができるようになったので、お出ましの経路をより伝統に沿ったものとすることは、適切である」

なお、今回の「即位礼正殿の儀」は政府インターネットテレビ首相官邸YouTubeチャンネルなどでも中継される予定だ。