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戸籍上は男性でも入学できるようにした女子大学 開始から1年、好感触を得ていた

2020年度からトランスジェンダー学生の受け入れが開始された、お茶の水女子大学。実際にどのように受け入れをしているのか。取材しました。

お茶の水女子大学(東京都文京区)は2020年度から、トランスジェンダー学生の受け入れを開始しました。

2018年に受け入れを発表した際には、「日本初」の試みとして、世間でも大きな話題となりました。

受け入れ開始から1年が経ち、施設面やガイドラインなども含め、実際はどのような形で運用されているのかーー。

大学の担当者や、ジェンダーやセクシュアリティを専門とする同大の准教授に取材しました。

時事通信

お茶の水女子大学正門

受け入れの方針

そもそも大学は受け入れの方針について、どのような説明をしてきたのか。大学ウェブサイトで公開されたお知らせなどをもとに振り返ります。

大学は、「自身の性自認にもとづき、女子大学で学ぶことを希望する人(戸籍又はパスポート上男性であっても性自認が女性であるトランスジェンダー学生)を受入れる」と説明しています。

2018年に大学のウェブサイトに掲載した「トランスジェンダー学生の受入れについて」では、そのような判断に至った経緯や目的について、こう記しています。

これは、「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する」という国立大学法人としての本学のミッション(2004年制定)に基づき、判断したものです。

本学では、今回の決定を「多様性を包摂する女子大学と社会」の創出にむけた取組と位置づけており、今後、固定的な性別意識に捉われず、ひとりひとりが人間としてその個性と能力を十分に発揮し、「多様な女性」があらゆる分野に参画できる社会の実現につながっていくことを期待しています。

「戸籍上の性別が女性であること」を入学資格としていた女子大学が「多様な女性」の受験・入学を認めました。

時事通信

2018年に、トランスジェンダー学生の受け入れを発表した際の会見の様子。

在学生や受験生の反応は?

トランスジェンダー学生の受け入れ開始から約1年たった現在、在学生や受験生はどのような反応を示しているのでしょうか。

大学の担当者は取材に対し、「受け入れそのものについて、否定的な意見はありません」と話します。

「在学生には2018年度の受け入れ決定時に3回、2019年度に対応ガイドラインが決定してからは1回、説明会を開きました。女子大学として必要なことであり、日本で最初に決定したことを評価する声もありました」

受験生も強く関心があるようで、「2018年度7月のオープンキャンパスでの『学長に質問しよう!!』という企画では、新聞で報道を読み、共感をもったという学生から質問が出されました」と振り返ります。

大学は、トランスジェンダー学生が現在在籍しているかどうかなどは公表していません。

時事通信

お茶の水女子大学正門

受け入れ体制を整えるため作られたガイドライン

大学は「トランスジェンダー学生受け入れに関する対応ガイドライン」(2019年4月1日制定)を作り、ウェブ上で公開しています。

最初のページには、受け入れの基本理念と共に、こう説明がされています。

《トランスジェンダーと呼ばれる学生の身体、外見、服装、思考、行動はさまざまです。学生ひとりひとりの個性が違っていることと同様です。教職員も学生も、他の学生と同じ様に接することが、ガイドラインの基本的な考え方です》

その上で、ガイドラインでは、相談窓口に関する情報や、授業や就活を含めた学校生活全般に関すること、名前や性別の取り扱いについてなど、細かく項目を設け、網羅的にまとめられています。

担当者によると、これらの項目は教員と職員による検討委員会にて、筑波大学など他大学の対応ガイドラインを参考に案を練り、教授会や評議会をはじめとした学内の会議で審議して決定したものです。

他の共学校のガイドラインとは異なり、お茶の水女子大学は「女性学生しかいない前提」であるため、「在学中に性自認が変化した場合」についても検討し、記載されています。

もしも「本人が入学後に男性としての性自認に変わった場合」があっても、学則などに反さない限り、退学にはならないと明記されています。

トイレや更衣室など施設の利用は?

Getty Images

イメージ写真

ガイドラインには、トイレや更衣室など施設の利用についても書かれています。

トイレについては「当事者の出願前事前相談のときに、大学の施設や設備の状況を説明し、どのようにするかを相談して決める」とされています。

実際の利用に関しては、学生本人や周囲の状況から「女子トイレを使用することが適切であれば」女子トイレを使用することも可能とし、そのほかに学内には「だれでもトイレ」も15箇所、設置されています

体育館には、個室仕様の更衣室も整備され、人目を気にせず着替えることもできます。

担当者は「これはトランスジェンダー学生だけではなく、人前で着替えをしたくないなどの事情がある全ての方にとって、意味があることを考えています」と話します。

時事通信

幼稚園から大学まで1つのキャンパスに集まるお茶の水女子大学

ガイドラインには他にも、定期健康診断では、本人が希望する場合は個別に受診することができたり、課外活動や就職活動などで困りごとがある際は、いつでも大学側に相談できたりすることなどが書かれています。

「ひとつずつ対話を重ね、よりよい対応を」「一歩ずつ歩んでいくことが重要」

お茶の水女子大学は、日本で最初にトランスジェンダーの学生の受け入れを決定しました。受け入れ開始からまだ1年ですが、担当者は、よりよい対応を目指していくと語ります。

「トランスジェンダーの学生の方の、身体、服装、考え方はさまざまです。予想しきれない問題も生じるでしょうが、ひとつずつ対話を重ねて、よりよい対応をしていくこと、つまり、一歩ずつ歩んでいくことが重要と考えております」

「具体的な方策としては、質問などを受け付ける窓口の設置や、2021年度新入生オリエンテーションでのトランスジェンダーの学生受け入れについて説明などを行っています。また、いくつかの授業の中でもLGBTQ等について扱っています」

お茶の水女子大学では、LGBTQをはじめとしたジェンダー全般のトピックを扱う授業が多くありましたが、2019年度からは「全学部の学生が、学部・学科を超えて、自分の関心を起点に、学際的・系統的 に様々な角度からジェンダーや性・性別について学習すること」を目的としたカリキュラムを設置。本格的に学びやすい環境が整っています。

「生まれた時の身体的性別に関わらず、充実した大学生活を送れる大学で」

Getty Images

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BuzzFeed Newsは、臨床心理学やジェンダー、セクシュアリティが専門の石丸径一郎・お茶の水女子大学准教授にも取材しました。

石丸准教授はトランスジェンダー学生の受け入れについて、「学生支援機構から2018年に性的指向・性自認の多様性についての啓発資料が出ておりますし、受け入れを開始する女子大学は増えていくと思います」とします。

実際に、2020年からお茶の水女子大学で受け入れが始まって以降、奈良女子大学や日本女子大学など、トランスジェンダー学生の受け入れの動きが広まっています。

「在学生(及びその女子大学を志望する人)が気をつけるべきこと」については、石丸准教授はこう指摘しました。

「女子大学に限るわけではありませんが、学生や教職員は、性別情報が、障碍や疾患などと同じくセンシティブな個人情報であることを認識し、しっかり信頼関係を築く前には、不用意にそのような話題に触れないことが大事かと思います」

その上で重要になってくるのが、周囲の学生が正しい知識のもと、対応していくことです。

実際、対応ガイドラインでは「周囲の対応について」という項目で「カミングアウト」や「アウティング」について説明されています。

「カミングアウト」とは自身のセクシュアリティやジェンダーについて打ち明けることを指し、「アウティング」は打ち明けられたことを本人の了承なしに周囲の人に暴露することです。

ガイドラインでその項目が記載されている理由について石丸准教授は、「同じ東京都の国立大学である一橋大学にて、アウティングについての事案がありましたので、重要なトピックだと考えて明記しました」と説明しました。

一橋大学では2015年6月にゲイであることを同級生から暴露され、それを機に心身に不調を来し、同年8月にキャンパス内の建物から転落死したという事件が起こりました。

アウティングによって学生が傷つくような事件が二度と起こらないよう、お茶の水女子大学では、すべての学生や教職員に向けて説明がなされています。

Getty Images

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カミングアウトの受け止め方については「学習できるような機会を用意します」「必要に応じて、相談窓口に相談に来てください」との呼びかけもされています。

石丸准教授はまた、「アメリカの女子大学では、法律上も男性に性別変更済みののトランス男性やノンバイナリーの方を受け入れているところもあると聞いている」とし、それらについては「今後の検討課題であると思っています」とも話します。

最後に、トランスジェンダー学生の受け入れや今後については、こう述べました。

「学内説明会でお話しいただいた当事者の方やそのご家族は、国立の女子大学がそのような方針を決めたというニュースを聞いてとても嬉しかったとおっしゃっていました」

「生まれた時の身体的性別に関わらず、女子学生たちが充実した大学生活を送れるような大学であり続けられるよう、学生支援体制を整えていきたいと考えています」


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