「悲しい出来事を心に刻みつつ…」一橋大学アウティング事件の判決が確定、大学側が声明を発表

    ゲイであることを同級生にアウティングされた一橋大学法科大学院の学生が、キャンパス内の建物から転落死した「一橋大学アウティング事件」。控訴審判決の確定を受け、一橋大学が声明を発表した。

    ゲイであることを同級生にアウティング(暴露)された一橋大学法科大学院の学生(当時25)が、キャンパス内の建物から転落死した「一橋大学アウティング事件」。

    学生が受けたアウティング被害を把握していながら、適切な対応を怠ったとして、遺族が一橋大学に損害賠償などを求めた裁判で、遺族側の訴えを棄却した東京高裁(村上正敏裁判長)の判決が確定した。

    遺族側の弁護団によると、アウティング行為を著しい権利侵害だと認める初めての判決となる。

    一橋大学は12月16日、「この悲しい出来事を心に刻みつつ、本学の学生および教職員が個人の尊厳と多様性について誤りのない知識を身につけ、先入観や偏見をもつことがないように、引き続き努めて参ります」との声明を発表した。

    キャンパス内で転落死

    Saori Ibuki / BuzzFeed

    判決などによると、一橋大学のロースクールに通っていた学生は、友人約10人が参加していたLINEグループで、ゲイであることを同級生によって暴露された。それを機に心身に不調を来たし、約2カ月後にキャンパス内の建物から転落死した。

    学生は、大学のハラスメント相談室や教授にも、アウティング被害とその影響について相談をしていた。遺族が大学を訴えた裁判では、そうした大学側の対応が適切だったかが争われた。

    2019年2月の一審・東京地裁判決では、大学側がアウティング被害の重大性を認識せず、安全配慮義務を怠ったとする遺族の主張は認められず、大学側の対応が学生をさらに追い詰めたという事実もないと判断した。

    控訴審判決も一審判決を支持し、相談を受けていた教授が学生に体調を尋ねたり、アウティングをした同級生と接触しなくて済むようさらに工夫したりすることが「望ましい行動であったとはいえる」ものの、安全配慮義務に反する違法なものだとまで言うことは「困難である」とした。

    判決「アウティングは許されない行為」

    Saori Ibuki / BuzzFeed

    控訴審判決を受けて、会見に出席した学生の両親と妹

    一方、一審判決で言及がなかったアウティング行為の重大性については、人格権やプライバシー権を著しく侵害する「許されない好意」であると明言した。

    「本件アウティングは、(亡くなった学生が)それまで秘してきた同性愛者であることをその意に反して同級生に暴露するものであるから、(亡くなった学生の)人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであって、許されない行為であることは明らかである」

    また、亡くなった学生とアウティングをした同級生の間に何らかの「葛藤」があったとしても、「そのことは本件アウティングを正当化する事情とは言えない」とした。

    亡くなった学生の妹は判決後の会見で、「一橋大学は兄が高校生の時から、その場で学ぶことを夢見た大学でした。『人を助けたい』と法律家を目指し、法科大学院でその夢がやっと叶いかけたところでした」と言い、こう訴えた。

    「いま、一橋大学に在籍している学生や卒業生の方、教職員の方々も、少しずつ学校をより良いところにしようと活動してくださっています。一橋大学には、その芽を摘むことなく、誰もが安心して学べるような大学になってほしいと思います」

    なお、遺族はアウティングをした同級生も提訴しており、2018年に和解が成立している。

    「悲しい出来事を心に刻みつつ」

    一橋大学は判決が出た当日、「裁判において、事実に基づき、大学側の立場を明らかにして参りました。引き続き、学内におけるマイノリティーの方々の権利についての啓発と保護に努めて参ります」とするコメントを発表。

    判決の確定を受けて、12月16日に改めて声明を掲載した。全文は以下の通り。

    2019年(平成31年)3月7日に本学を被控訴人として提起された民事損害賠償訴訟について、2020年(令和2年)11月25日に裁判所から控訴を棄却する旨の判決が言い渡され、同年12月9日の経過により同判決が確定しました。

    判決の確定を受けて私たち一橋大学は、あらためて学業半ばにしてかけがえのない命をなくされた学生のご冥福をお祈りし、ご遺族に衷心から哀悼の意を表します。本学は、この悲しい出来事を心に刻みつつ、本学の学生および教職員が個人の尊厳と多様性について誤りのない知識を身につけ、先入観や偏見をもつことがないように、引き続き努めて参ります。

    また、性的少数者を含めたいわゆるマイノリティの学生および教職員に対する様々なハラスメントを防止するために、今後とも啓発活動・研修などの取り組みを引き続き実施していきます。

    多様性を尊重し、包容力のある、そして何より命を大切にするキャンパス・コミュニティであり続けるために、本学は不断の努力を続けていく所存です。

    Contact Saori Ibuki at saori.ibuki@buzzfeed.com.

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