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インスタのファッションなんてつまらない!個性的な母親をインスタモデルに使ったら人気に

「だって、ヒジャブを被った有色人種の高齢女性でこんなふうに描かれる人なんて他にいます? 1人もいませんよ。私は、誰も持っていない特別なものだと思いました」

マリヤム ・スリマニさん (36)は、オランダのロッテルダム在住の「ビジュアル・ストーリーテラー」。かなり個性的なストリートファッション満載のインスタグラム・ページを運営しています。

スリマニさんは自身のインスタグラム(@meryemsfirst)に、自分の母親でありかつて小学校教員だった、スコーンホーフェン在住のナジャット ・レクリーさん(67)の写真を投稿しています。

スリマニさんは、もともと自分のうつ治療に並行したクリエイティブなセラピーの手段として、2015年にブログを開設したとBuzzFeed Newsに教えてくれました。「ぽっちゃり体型のコミュニティにせよ、スニーカー・コミュニティやメンタルヘルスのコミュニティにせよ、自分がどのブロガーの分類にもまるで当てはまらないことに、そのうちフラストレーションを感じるようになりました」

「そのころ私には赤ちゃんもいて、コンテンツを作るだけのモチベーションとか元気がまったく見出せない状態でした。たいした内容がないのに同じ人が同じ話題で何度も何度も注目されていて、まるでインスピレーションを感じられなかった」

スリマニさんはブログをやめ、その後は自分と母親の自撮り写真をインスタでシェアすることにしました。すると、共感した人たちから「いいね」をたくさんもらえるように。その後2017年、オランダのとあるブランドから、コンテンツ制作の依頼が舞い込みました。そこでスレイマニさんは、自分ではなく母親にモデルをしてくれるようお願いしました。

スリマニさんはこう話します。「そのときの気分で何でも投稿していたのですが、ある時点から、母だけに焦点を絞るようになりました。というのも、気分が良くなったし、母と一緒に写真を撮るのが楽しかったから」


「もっと重要だったのは、画像が興味深い個性的なものになって、私の作品が目立つようになるんじゃないかなとか、うまくいけばそのうちもっと多くの人に見てもらえるようになるんじゃないかなとか考えたことでした。だって、ヒジャブを被った有色人種の高齢女性でこんなふうに描かれる人なんて他にいますか? 1人もいませんよ。私は、誰も持っていない特別なものだと思いました」

スリマニさんは、自分のインスタグラム・ページの狙いは、自分自身の物語を語ること、そして世界の人たちに、お互いがオープンになれば、実は人にはたくさんの共通点があるんだと示すことだと話します。

「それから、どんな体型、年齢、心の状態、宗教であれ、女性は自分の人生や体に何をするか・しないかを、自分でちゃんと決めることができるということ、そして社会やコミュニティから許可されたり判断されたりせずに、堂々と生きていいのだということを示しています」

「そのままの自分でいていいし、人と違ったっていいし、自分の道を選んだっていい。概してどの人にも──でも特に有色人種の女性、とりわけ中東北アフリカ地域(MENA) から他の地域へ移住していった女性には、私たち親子の中に自分自身を見い出して、自分も胸を張っていいんだ、自分や自分のルーツ、自分の選択に誇りを持っていいんだと安心してもらいたいと思っています」とスリマニさんは加えました。

スリマニさんは、インスタグラムでのモデルになってくれるよう母親を説得するのに時間はかからなかったと言います。「一度お願いしたら、『いいよ、もちろん』って感じでした。母が同意してくれたのは当初、私への愛情とサポートからでした。母は常に私の一番のサポーターだし、母にとっては、『娘の力になれるならなんだってやるわ』って感じでした」

「でも時間がたち母の写真を多く撮っていくにつれ、母がいかに熱心かつ真剣にとらえてくれていたかに私は気づきました」

「母がそうする一番の理由は私のためだからなのだけど、それだけでなく、モロッコ系移民一世の女性たちに発言する力や存在感のようなものを与えられるのではないか、と期待していたと母は話してくれました。というのも、母の世代の女性はすべてを捨ててオランダに来て、大変な時を生きてきたんです」

「それに、農村地域出身で読み書きができなかったほとんどの女性と比べて、私の母は『恵まれて』いました。都会で生まれ、教育を受け、モロッコで教師として働いていましたから。母はオランダでも教師として働き、オランダ語をすぐに覚えたので、その意味では母の移行はずっと楽でした」


スリマニさんの母親は、乳がんになる前には地域活動にも関わっていたとスリマニさんは話します。

「母は、自分の学校に通っていた子どもやその家族など、自分と同じ移民仲間を常に擁護していたし、恵まれない人や、制度から不当に扱われていた人たちの力になるべく、常に組織に関わり、市議会に相談していました」

「でも、母が乳がんになり仕事を引退したとき、一線から退いて地域活動もすべてやめてしまいました。なのである意味、私たちのインスタでの活動は、発言する力を再び母に与え、その結果、母が擁護していた女性たちにも与えています」

2人のインスタグラム・ページはこれまで何度かバズり、街を歩いていても本人だと気づいてもらえるようになりました。スリマニさんは言います。「私たちはオンラインでもオフラインでも、ものすごくたくさんの愛をもらっています。世界中の人たちからこれほど真摯(しんし)な思いやりを示してもらえることにとても感動しています」

「1年前なら、都心に行けばたまに気づかれるという程度でしたが、今は外出すると毎日、少なくとも1人は近寄ってきて励ましの言葉をかけてくれたり、挨拶してくれたりします。母もまた、住んでいる地域で人から気付いてもらえるようになり、記事などがオンラインで公開されるたびに、かかりつけ医の奥さんが電話しておめでとうって言ってくれるそうです」

「私たちにとっては本当に面白くて……なんだか圧倒されるような気分になるときもあります。というのも、母も私もこんなに注目されるなんて思ってもいなかったから。でも私は人と話をするのが好きだし、誰かの話を聞くのに時間を惜しむなんてことは絶対にしませんよ」

2人は昨年末、ツイッターでもバズりました。というのも、スリマニさんがツイートしたお母さんの着こなしにみんなが夢中になったから。スリマニさんはこのツイートをした理由について、引用したツイートの内容がまさに、そもそも自分が母親を写真に撮りはじめた理由だったから、と説明してくれました。

THIS is the main reason I decided to start shooting my mum got so sick of seeing the same thing over and over again 🙃 https://t.co/oHoeDKBxHf

スリマニさんのツイート「私がママを写真に撮ろうと決めた主な理由は、まさにこれ。いつもいつも同じものを目にするのがホントにいやだった」

引用元のツイート「ストリートファッションで視覚的に語れる物語はたくさんあるのに、いつもおんなじ“アリーヤっぽい”美しさのぼんやりした子ばっかりでマジつまんない」

スリマニさんは、ツイッターでバズった経験はシュールだったと言います。「母は、『なんでこんなことが起こり得るの?』って言っていました。母はSNSをやっていないし、私もツイッターでは母のことはまったく何も投稿していないので、母にとっては余計に謎だったんです」

「母は今、まるで私のコンテンツ・マネージャーのつもりで、何か新しい投稿をしろだとか、また何か新しいのを撮影しようだとか、最新のフォロワー数やコメントを教えてなどと言ってきます。母はSNSのこと何も知らなくて、2週間前にやっとパソコンの講座を受け始めたばかりなのに、本当に笑っちゃいますよね」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan