「君の名は。」も「シン・ゴジラ」も「スター・ウォーズ フォースの覚醒」も観た、でも、面白い映画がもっと観たい! という皆さんへ。
独自のラインナップでファンの多いミニシアター「アップリンク渋谷」映画編成担当の石井雅之さんに、年末年始に観てほしい、見逃せないイチオシの10本を選んでもらいました。
いずれも、2016年公開作の中から話題になった40本を特集する「見逃した映画特集2016」(12月24日〜2月3日)の期間内に上映します。
1.『もしも建物が話せたら』
飛び出す3Dではない、空間の奥行にこだわった3Dは必見!
ドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮をとり、ベルリン・フィルハーモニーなどの文化的建築物の心を描き出した本作。
公開時は2Dでしたが、年末のリバイバル上映では、貴重な3D上映を行います。奥行のある3D映像では、実際に建物を訪れているような臨場感を味わえます。
2.『チリの闘い』
全3部作、上映時間263分の圧倒的映画体験。
70年代南米チリにおける社会主義政権の終焉を撮影・記録したドキュメンタリー映画。
クーデターの後、本作監督のパトリシオ・グスマンは逮捕・監禁されるも処刑の難を逃れ、フランスに亡命。撮影されたフィルムも奇跡的に国外に持ち出され、映画監督クリス・マルケルなどの支援を得て作品を完成させました。
全3部作、上映時間263分の超大作。まさに映画館で体験すべき作品です。
3.『FAKE』
物議を醸した衝撃のラスト12分!
オウム真理教を追ったドキュメンタリー『A』『A2』の森達也監督が、ゴーストライター騒動で話題になった作曲家・佐村河内守を追ったドキュメンタリー。
公開当初から物議を醸し、論争を巻き起こした作品。「誰にも言わないでください」とキャッチコピーがついた衝撃のラスト12分を含め、何が一体“FAKE”なのか。観終われば、きっと誰かと話したくなります。
4.『スラッカー』
映画ってこんなに自由で楽しい!
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』のリチャード・リンクレイター監督が91年に撮った初期作品。
16ミリで撮られたインディーならではの自由で独創的な作品は、その後の90年代アメリカンインディペンデント映画のキーとなる1本になりました。
長らく日本未公開でしたが、今年ようやく公開された作品です。
5.『山河ノスタルジア』
『GO WEST』! 新年の幕開けを踊りながら祝う高揚感
中国の巨匠ジャ・ジャンクー監督が、1999年から2025年までの過去、現在、未来を紡ぐ一大叙事詩。
1999年、高度経済成長で湧く中国を舞台に、ペット・ショップ・ボーイズの『GO WEST』で新年の幕開けを踊りながら祝うシーンが最高! 高揚感にあふれてとにかく素晴らしい。
アップリンク渋谷では2017年最初の上映作品となります。映画と現実で暦がシンクロし、まさに年始にぴったりの1本です。
6.『ディストラクション・ベイビーズ』
日本映画史上、類をみないバイオレンス・モンスターの誕生!
柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎ら若手実力派キャストが集結し、新鋭ながら既に高い評価を得ている鬼才・真利子哲也監督の商業デビューとなった本作。
強そうなヤツを見つけてはストリートファイトを繰り返す野獣のような若者・泰良を演じた柳楽優弥の狂気の宿った演技など、過激な暴力描写が話題となりました。
7.『キャロル』
視線がそっと交錯する出会いのシーンは心奪われる美しさ。
50年代ニューヨークを美しく再現した魅惑的な衣装、名曲の数々、流麗なキャメラ……まさに夢のような映画です。
ケイト・ブランシェット演じるキャロルに出会えば、誰もが恋に落ちてしまう。最高にロマンティックな愛の物語です。
8.『兵士A』
七尾旅人の鬼気迫る、渾身の演奏に心打たれる!
断髪し自衛官の扮装をした音楽家・七尾旅人。近い将来、この国に、数十年ぶりに現れるかもしれない1人目の戦死兵を音楽を通して演じる壮絶な3時間ライブ。
時間と空間を越えて紡がれる、百年間という壮大な物語は、人間であることの困難さや、微かな希望を描いています。
9.『アメリカン・スリープオーバー』
思春期のセンチメンタルな感情を描いた、青春映画の新たな傑作!
当初は劇場公開の予定もなく、わずか数回の特集上映だけの予定だったのが、上映直後から口コミで話題沸騰。都内単館で公開され、スマッシュヒットを記録した本作。
アメリカ・デトロイトの郊外を舞台に、思春期の少年少女たちが夏休み最後のSleep Over(お泊り会)を通して成長していく過程をみずみずしく描いています。
10.『ミスターダイナマイト ファンクの帝王:ジェームズ・ブラウン』
没後10年JBドキュメンタリー決定版!落語との異色コラボイベントも。
ジェームズ・ブラウン没後10年という節目に公開された本作は、JBファンも観たことのないような貴重映像満載で綴ったJBドキュメンタリーの決定版。ミック・ジャガーが本作のプロデューサーを務めており、本編の中でもJBの印象を赤裸々に語っています。
1/31(火)には落語家・瀧川鯉八の本作をテーマに創作した新作落語「ダイナマイト」付上映を開催予定です。
『ミスターダイナマイト ファンクの帝王:ジェームズ・ブラウン』作品紹介