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「父がコロナで失業しそう。家族のために、私は第1志望の受験を諦めました」

家計のため、家族のためを思い、ギリギリで進路を変更した高校3年生。春を迎える今、複雑な思いを聞いた。

日本、そして世界が新型コロナに襲われ、社会が激変して約1年。

年明けから2月7日までを予定していた緊急事態宣言は1カ月延長され、ワクチンの接種はこれから。まだまだ収束する気配は見えない。

「コロナにより父親が失業しそうです」

「家の経済状況を考えて、第1志望だった大学の受験を諦めました」

京都府に住む高校3年生、加奈子さん(仮名)は、今まさに新型コロナに人生を大きく翻弄されている一人だ。1年前には想像もしていなかった状況に追い込まれてしまった。

高校生活最後の1年であり、大学受験という未来に関わる大切な選択をする年。「家族のことを考えると、自分のわがままだけで進路を決めることはできなかった」と力なく話す18歳に、今の心境を聞いた。

ホテル勤めの父の給与が減り…

加奈子さんは、京都の公立高校に通う高校3年生。父の職場はホテルで、コロナ前まではインバウンドの影響も大きく、むしろ日々忙しく働いていた。

しかし、昨年春から客足は激減。外国人観光客はほぼゼロになり、出張や国内旅行で訪れる人も減った。

「定年までもう少しだったのもあって、父は仕事を辞めさせられそうになっています。ホテルを辞め介護職に就こうかと考えているようで、そのことで母と言い争っているのを聞きました」

「母もパートをしているので、父の給与が減った今も生活はなんとかなっています。が、家計が安定しているとは到底言えません

私の「わがまま」で弟が苦しんだら

加奈子さんの受験スケジュールも大きく変わった。

秋に受験した第1志望の大学のAO入試は不合格だったため、年明けの一般受験でもう一度挑戦するつもりだったが、家の経済状況を考えてやめた。

本格的な受験シーズンを待たず、すでに合格していた別の大学に進学することに決めた。

2歳年下の弟の選択肢を狭めたくないという思いも強かった。

弟が『国公立(大学)以外は無理』と言われたり、大学進学すら諦めることになってしまったりしたら耐えられない。私のわがままでそうなってしまうのが怖かったです。この状況で自分にお金をかけてもらうのは忍びなくて……」

模試では、第1志望はC判定だった。決して希望がない成績ではない。挑戦すれば合格を得られる可能性も十分あった。

高校の先生に「受けたら?」と何度も説得され、その度に「仕方ないんです」と答えた。

「弟は、私の判断に自分が関わっていることを知りません。多分両親もわかっていないと思います」

「ただ、今受かってる大学に行くよ、と伝えた時に家族みんなが『ありがとう』と言ってくれたので……それでよかったと思っています」

受験を前にした、あるいは終えた友人たちを横目に、進学予定の大学で給付型奨学金を受けるために今も勉強を続けている。すでに受験料を振り込んでいた共通テストは、文系科目だけ受けた。

「両親からは『今この家のためにやれるのは奨学金を取ることだ』と言われているので、とりあえず頑張るしかありません」

電車の中で第1志望だった大学の広告を見ると、今も胸が小さく痛む。「本当にこの選択でよかったのかは未だにわからないです」。

「政治家のみなさん。あなたたちが自粛してないのはおかしいです」

「GoToトラベル」で一時持ち直した観光業だが、2度目の緊急事態宣言は長引き、今後の見通しもなかなか見えない。

紅葉シーズンに並んで、京都を訪れる観光客が多い桜の季節は目の前に迫っている。

早くまた元の日常に戻れるように――加奈子さんはこう訴える。

「政治家のみなさん。私たちに自粛してくださいというわりにはあなたたちが自粛してないというのはおかしいです。国民にお願いする態度ではないです。飲食業のみならず、どうか観光業にも目を向けてください」

「世間のみなさん。コロナが治まったら旅行をしましょう。今の時期は本当にしないでください。また多くの人がいろんなところに行っていっぱい思い出を作ることが出来るように、そして早くコロナが収まるように祈っています」

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