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「日本の漫画が小児性愛を助長と批判したCNNプロデューサーが女児への性的暴行で逮捕」拡散した情報はミスリード。その内容とは…?

今回拡散した情報は、昨年12月のCNNプロデューサーの逮捕から、ネット上で様々な変遷を経て、ミスリードな内容となった経緯があります。

「日本の漫画は小児性愛を助長する」という報道をしていた米メディア・CNNのプロデューサーが女児への性的暴行で逮捕された、などという情報がネット上で拡散している。

確かに、CNNのプロデューサーが女児への性的暴行で逮捕され、解雇された事件は発生している。CNNが、子どもにまつわる露骨な性的描写を含む日本のマンガが児童ポルノ法で規制されないことについて問題提起をする報道をしていた事実もある。

だが、逮捕されたプロデューサーがこの報道に関わっていたとする事実は確認できず、当該のCNNの記事にも「日本の漫画が小児性愛を助長している」という直接的な表現は見当たらない。

拡散している情報はミスリードだ。

情報の拡散源となっているのが、主に以下の3つの記事とツイートだ。

①まとめサイト「保守速報」による記事(2022年12月16日夜)

(タイトル)日本の二次元ポルノを繰り返し糾弾していたCNN名物プロデューサー、9歳女児への性的暴行で逮捕

②ニュースメディア「Share News Japan」による記事(2022年12月17日)

(タイトル)日本の漫画を「小児性愛を助長する」と糾弾していたCNN名物プロデューサー、女児への性的暴行で逮捕

Share News Japanは17日朝、この記事リンクをタイトルとともに投稿。投稿は19日16時現在、2.1万リツイートされ、6.5万いいねと広く拡散されている。

③Twitterアカウント「滝沢ガレソ」の投稿(2022年12月17日朝)

「日本の漫画は小児性愛を助長する」と糾弾していたCNNプロデューサー、女児(9)をレイプし逮捕https://nypost.com/2022/12/12/ex-cnn-john-griffin-producer-pleads-guilty-to-child-sex-charge/・母親に3000ドルを渡し娘(9)をレイプ・余罪多数、女児へ度々「性的服従訓練」を実施・「年齢を問わず、女性は女性」「全ての女性は性的に従順で男性より劣っているべき」と語る

この投稿は19日16時現在、1万リツイートされ、3.1万いいねされている。

逮捕されたCNNのプロデューサーは実在しているが…

拡散している情報について、2つの情報に整理して、それぞれを検証していく。


情報1:CNNのプロデューサーが女児への性的暴行で逮捕された
→正確

拡散した記事やツイートで、逮捕された「CNNのプロデューサー」とされているのがジョン・グリフィン被告だ。

CNNによると、グリフィン被告はCNNで8年間プロデューサーを務めており、2020年12月、未成年の女児に違法な性行為を強要した容疑で逮捕、起訴された。AP通信によると、同被告は2022年12月、連邦裁判所で起訴事実を認めた。

情報2:逮捕された当該のプロデューサーが過去に「日本の漫画は小児性愛を助長する」などとの報道をしていた
→根拠不明

CNNは2014年6月、CNNは2014年6月、「Sexually explicit Japan manga evades new laws on child pornography(性的に露骨な日本のマンガが新しい児童ポルノ禁止法をかいくぐる)」という題の記事を配信している。

子どものわいせつな写真や映像の所持に罰則を科す改正児童ポルノ禁止法が日本で2014年に成立したことをめぐって、マンガやアニメが規制の対象外になったことを取り上げた記事だ。賛否の声を織り交ぜながら、子どもにまつわる性的描写を含む日本の漫画が規制されないことへの懸念を報じている。

記事には担当したレポーターの名前が記載されている。「ウィル・リプリー」と「ヒラリー・ホワイトマン」、「エドモンド・ヘンリー」という3名の記者の名前が確認できるが、逮捕・起訴されたジョン・グリフィン被告の名前は確認できない。また、同被告が過去に日本のマンガやアニメに言及した情報も見つからなかった。

なお、当該記事は、漫画における子どもや女性にまつわる性的描写が子どもへの性的暴力に繋がることを懸念するコメントはあるものの、拡散しているような「日本の漫画が小児性愛を助長している」というような直接的な表現は見当たらない。


以上の情報1,2の検証から、拡散している情報はミスリードだと言える。

ミスリード情報はいかに拡散されたのか

今回拡散した情報は、昨年12月のジョン・グリフィン被告の逮捕から、ネット上で様々な変遷を経て、ミスリードな内容となった経緯がある。その経緯をまとめる。

  • 2021年12月10日:グリフィン被告、未成年の女児に違法な性行為を強要した容疑で逮捕、起訴

  • 2021年12月13日:日本のTwitter上で、グリフィン被告の逮捕、起訴のニュースが、CNNの記事「Sexually explicit Japan manga evades new laws on child pornography」と絡めて話題になる

  • 2021年12月13日:アニメやマンガなどの情報を扱う英語のネットメディア「DaTosJam」がグリフィン被告の逮捕、起訴について、日本のTwitter上での反応を盛り込み、記事化。「CNNのプロデューサーが成年者への虐待で逮捕。CNNは漫画を『小児性愛を助長する』と批判していた」とミスリードなタイトルが付けられる

  • 2022年12月12日:グリフィン被告が連邦裁判所で起訴事実を認める

  • 2022年12月16日:「5ちゃんねる」で、グリフィン被告が起訴事実を認めたことを報じたFOXニュースの記事を引用した上で、「【悲報】日本の二次元ポルノを繰り返し糾弾していたCNN名物プロデューサー、9歳女児への性的暴行で逮捕」というミスリードなタイトルのスレッドが立つ

  • 12月16日:保守速報が「5ちゃんねる」及び「DaTosJam」の内容を元に記事化。ミスリードなタイトルで拡散

  • 12月17日:ShareNewsが「DaTosJam」を翻訳し、記事化。ミスリードなタイトルで拡散

  • 12月17日:Twitterアカウント「滝沢ガレソ」がTwitter上でミスリード情報を拡散


SNSなどで拡散するニュースには、根拠がはっきりしなかったり、誤ったりしている情報も多くある。拡散には注意が必要だ。


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