「NO密で濃密なひとときを」打撃をうけるエンタメ業界から立ち上がった、ある劇団の話。

    新型コロナウイルスの中でエンタメ業界が打撃をうける中、ある方法で打開を計るある劇団が、SNSで話題をよんでいます。

    新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けるエンターテイメント業界。

    人が集まる映画館や劇場は、エンターテイメント業界で働く人々も苦境を強いられている。映画プロデューサー・映像監督の林健太郎さんもその1人だ。

    「今回の状況を受け、劇場も、現場も全てが止まりました。周囲の人々やエンタメ業界の状況が一変しました」

    林さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう答える。

    

「自分が身を置く映画業界は、現在映画館がほとんど閉まり、新作を公開することが出来ません。特に単館系とも呼ばれるミニシアターの多くが閉館の危機に直面し、自分も手伝わせて頂いている『SaveTheCinema』をはじめ、映画業界の人たちが支援活動を続けています」

    劇団ノーミーツ誕生の経緯

    映画会社の演劇部に勤務しつつ、自主制作映画の制作などを行っているという林さんは自身でも、コロナ禍で「自宅からでも作れるエンターテイメントはないのか」と試行錯誤を続けてきたという。

    林さんは、ライブエンタメ事業の代表・広屋さん、業界同期の劇作家・小御門さんの友人2人と共に、実験的に第1作目「ZOOM飲み会してたら怪奇現象起きた」を制作。

    動画は反響を呼び、林さんらはこの時「遠隔だからこそ生まれる発想・面白さがあるのではないか」と感じたという。

    こうして3人の思いから「NO密で濃密なひとときを」をテーマに活動する、劇団ノーミーツが発足した。

    「打ち合わせから本番までを1回も会わずに活動するフルリモート劇団」であるノーミーツ。彼らが作る作品の題材もまた、コロナ禍ならではといえる「Web会議アプリ上で会話する若者」が多い。

    「映画や演劇の延長には考えない」。新しいエンタメを

    「遠隔という制約の中で作っていく際に、『映画や演劇の延長には考えない』と決めた」という林さん。

そこにはこんな思いがあった。

    

「もちろん(遠隔での劇団にも)演劇的、映画的な要素は多々あり、これまで培ってきた経験を活かして制作を行なっております。しかし『映画・演劇を遠隔で作る』感覚では、本来現場で作るものを超えることは永久にできないでしょう。ノーミーツでは、リモートクリエイティブにしかできない新しいエンタメを目指しています」

    

そのため「あえてZoomを使用しているという設定や、編集をしない地続きな時間軸」という制約の中で、創作を続けてきたという。「これからはその縛りを超えて、様々なアプローチに挑戦したいです」

    一方で、林さんは「芝居を作り上げる現場感を共有するのが難しい」とリモートでの活動の苦労についても明かす。

    「特に俳優陣は、誰もいない部屋でパソコンに向かって演技を行うため、本来相手を感じながら行う芝居が出来ず、演出面においても、基本的にはPCのインカメを使用するため、画角に制限がかかるなど、何かと制約が多いです」

    「自宅から出られない、人とも会えない」。だけど……

    林さんは、自分たちが今エンターテイメント業界にできることは「新しい形のエンターテイメントの提案」だと考えている。

    「そもそもノーミーツは、映画・演劇・イベント業界でそれぞれ軸足を置いている3人が、危機感を持ち集まったことが結成のきっかけです。自宅から出られない、人とも会えない中で、アイデアを絞ればここまで面白いものが作れる、新しいマネタイズが出来る。まだまだ実現までの道のりは遠いですが、悪戦苦闘していく様も含めて、少しでも業界の活力になれたらと」

    今後の意気込みについて「これからも、さらなる活動拡大のため共に活動する仲間探しをしつつ、新たな創作の可能性を探り続けます」という、林さん。

    現在は、140秒作品の制作に加え、生配信番組の制作や企業とのコラボ作品制作などを進めているという劇団ノーミーツ。5月23日、24日には長編公演「門外不出モラトリアム」の開催が決まっている。

    「これからも、さらなる活動拡大のため共に活動する仲間探しをしつつ、新たな創作の可能性を探り続けます」