7万人を超える「映画を愛する人々」が立ち上がった理由

    新型コロナウイルスの影響で各地のミニシアターが上映自粛をしています。経済的打撃が大きい中、クラウドファンディングには1億円が集まりました。

    新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、映画館も上映を自粛している。

    中でも、ミニシアターと呼ばれる小規模の映画館が、多大な経済的打撃を受けている。運営関係者によると、平均的に「売り上げは8割減」で、「夏を待たずに閉館する映画館が続出することが予想される」状況という。

    そんな中、コロナ収束後にミニシアターが運営再開できるようにと、クラウドファンディングやオンライン署名が実施された。4月13日に始まったクラウドファンディングには、3日間で1億円以上が集まり、オンライン署名には18日時点で7万人以上が署名している。

    「閉館の危機にさらされている全国のミニシアターを守るため」に立ち上げられたのは、ミニシアター・エイド基金(@MiniTheaterAID)で、4月18日昼時点で1億3477万円以上の寄付が集まっている。

    基金は映画監督の深田晃司さんや濱口竜介さんら有志が集まり立ち上げた。映画を含むアートなど方面の活動資金調達など、クリエイティブに特化したクラウドファンディングのMotion Galleryを通じて募っている。

    クラウドファンディングで支援を受けるのは、北海道から沖縄まで各地のミニシアター85劇場・72団体。集まった額は、経営がひっ迫しているシアターに対し、家賃の支払いなどのため緊急の支援として分配するという。

    「即刻、支援や助成などが必要」

    基金はオンライン上で会見を実施し、映画監督の濱口さんはミニシアターが直面する危機的状況についてこう話した。

    「ミニシアターはシネマコンプレックスとは違い、経営基盤は決して大きくない。1、2カ月やそれ以上この状態が続くと、確実に経営が危機に陥ってしまう状態です。即刻、支援や助成などが必要なんです」

    「でも、この取り組みを始めた時、政府が(補償に)動く気配もあまりなかったので、自分たちが映画ファンで支援のネットワークを作っていくしかないと思い始めました」

    深田さんは「本来なら、私たちが納めている税金などでセイフティーネットが作られているべきで、クラウドファンディングは最終手段でなければならない」と指摘。

    その上で、スピード性が必要とされる中、すぐに助けを得られる政府の補償もなかなかないために「手の届く範囲で助け合おう」とクラウドファンディングを始めたと説明した。

    ミニシアターの存在意義。いま、支援が必要な理由

    深田さんは会見で「ミニシアターはなくなってはならない大事なもの」と、社会においてのミニシアターの存在の重要性を語った。

    「社会にとって、いろんな文化や価値観に触れる状態が保たれているということは、多様な社会を維持していく上で大切なんです」

    深田さんによると、海外の映画関係者が日本に来た際に、日本各地にミニシアターが存在していることに驚くと話した。

    「いろんな国のアート映画やマニアックな映画をコツコツと上映しているということに驚かれる。国からの支援がなくても日本でミニシアターが日本中に存在して、必ずしも商業性や娯楽性が高い映画でない、色々な国や時代の映画などが比較的手軽にミニシアターで見れるという状態はギリギリ保たれています」

    深田さんは「このような場を保っていくのは簡単なことではありません」と現場の状況、そして上映自粛をするミニシアターが直面する経済的打撃を語った。

    クラウドファンディングは、当初の目標の1億円は達成したが、5月14日の締め切りまで継続される。

    「政府は補償を」18日時点で7万人以上が署名

    深田さんが会見で話したように、クラウドファンディングが立ち上がったのは、営業自粛要請に応えた施設に対する、政府の早急な支援策がまとまらなかったからだ。

    映画館運営関係者や映画監督らが中心となり、政府に補償を求めるオンライン署名「#SaveTheCinema『ミニシアターを救え』プロジェクト」が立ち上げられ、多くの人が声を寄せた。

    署名は4月15日時点で6万6千筆集まり、同日、文化庁や厚生労働省、内閣府、経済産業省に提出された。

    🔹4/15 活動報告🔹 #SaveTheCinema《66,828筆》の署名を携えての各省庁への要望書提出を #note にてご報告いたします。まだまだこのアクションは始まったばかりです。今後も映画の未来のために動いていければと思います📢 #がんばれミニシアター 📝https://t.co/LDYSmHgLBl

    @save_the_cinema

    プロジェクトはオンライン署名で政府に対し「上映自粛や時短営業によって生じた損失の補填」「終息後に集客を回復させるための支援」の2点を求めている。

    署名提出後にオンラインで実施された会見では、署名の呼びかけ人の一人で、映画監督の諏訪敦彦さんが「今こうしている間にも、閉館の危機に瀕しているミニシアターがあります」と語った。

    「ミニシアターはコロナ以前から経営基盤が脆弱で、それぞれの工夫でかろうじて生き残ってきましたが、そこに新型コロナウイルスが直撃し、3月からどんどん観客が減少しています。現状、観客がゼロというところもある」

    「私たちの緊急な問題として、ミニシアターを守らなければならない。コロナ収束後のことも考えなければならない。そこにも支援が必要。ミニシアターが観客を再び呼び戻すためには、工夫が必要。さらには公的な援助が必要です」

    SaveTheCinemaによると、各省庁での署名提出の際には、ミニシアターが上映自粛で経済的打撃を受けている状況などを報告した。署名を提出した関係省庁からの打ち返しはまだないが、SaveTheCinemaでは今後も働きかけを続けていくという。

    署名は提出時の6万6千から増え、18日時点では7万筆を超えている。


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