毎年1月になると、インターネット上には減量に関するコンテンツが溢れ返る。
有害なダイエット文化も、醜い頭をもたげる。そのとき流行しているダイエット法は年によって変わる傾向はあるものの(ケトジェニックダイエットが登場し、パレオダイエットが去る、といった具合)、いつまでも消えずに残っているように見える流行がひとつある。流動食ダイエットだ。
流動食ダイエットは、ジュースやスムージー、ミール・リプレイスメント(代替食)シェイク、だし汁など、さまざまな形式をとるが、基本的な考え方は同じだ。
つまり、食事のすべて(もしくはほとんど)を流動食にすれば、速く体重を減らせるという発想だ。
さらに、魔法のように体内を浄化し、毒素を取り除いてくれるとも謳われている(豆知識:あなたの肝臓は、いつもその仕事をしてくれているのだが)。
流動食ダイエットは、しばしば「応急処置」と表現される。わずかな努力で劇的な結果が得られる近道というわけだ。食事を飲み物にするだけで済むなら、わざわざ努力する必要などあるだろうか?
ソーシャルメディアとセレブリティによる推薦のおかげで、クレンズ(浄化)とデトックスの人気はこれまでになく高まっている。
さらに最近では、流動食ダイエットは、人気テレビ番組の筋書きで大きな役割を演じた。
ネットフリックスのドラマ『欲望は止まらない!』では、ティーンエイジャーの主人公パティが、顎を骨折してワイヤーで縛った状態になるのだが、流動食しか食べなかった結果、大幅な減量に成功する。
ワイヤーが外れ、また固形食を食べられるようになっても、減った体重はそのままで(ストーリー上の重大な欠陥なのだが)、パティは最終的にいじめっ子たちに復讐を果たす。
問題のある不快なストーリーだという点はさておき、『欲望は止まらない!』は、治療上の理由から必要とされていた「液体のみの食事」を、有効な減量手段として描くことで、過酷なダイエット法を美化している。流動食ダイエットの現実は省略され、結果だけが描かれている。
私もティーンエイジャーのころに顎を骨折し、ワイヤーで縛られていた経験がある。だからこそ言えるのだが、4週間から6週間ほどストローで飲む食事をしたとしても、ドラマのようなことは起こらない。
たしかに、減量しようとしてワイヤーで顎を縛る人はいないかもしれない。だが、みずから進んで流動食をとり、長期間にわたってそのわずかなカロリーだけに制限しようとする人は、確実にいるだろう。
流動食ダイエットは極端な制限食だが、そういうものとして描かれることはめったにない。
「5日間のジュースクレンズ」や「骨スープダイエット」のように、さまざまに名前を変えてブランディングされ、「普通のこと」に思われるようになっている。
では、流動食ダイエットは実際に、身体や脳にどのような影響を与えるのだろうか?
流動食ダイエットで健康的に減量する方法は果たして存在するのだろうか?
それを突き止めるために、2人の専門家に話を聞いた。ひとりは、予防医学を専門とする有資格の医師で、『What to Eat When(何を、いつ食べればいいか)』の共著者でもあるマイケル・クルーペイン博士。もうひとりは、「アビー・ランガー・ニュートリション」を主宰する栄養士アビー・ランガーだ。
注意:この記事では、流動食ダイエットを、数日以上にわたって食事のすべて、または大半を液体に置き換えることと定義している。朝食としてときどきジュースやシェイクを摂るようなケースは、あてはまらない。また、医学的な理由から必要とされる流動食ダイエットも、この記事の議論の対象ではない。医学上の流動食ダイエットは、特定の医学的処置の前後、もしくは医学上の症状に応じて、処方される。
減るのは「水分の重さ」
言うまでもないことだが、摂取する液体に何が入っているかが重要だ。
たとえばジュース・クレンズは、一般的にはカロリーがきわめて少なく、糖分が多い。
それに対して、ミール・リプレイスメント・シェイクには、タンパク質などの栄養素が比較的多く含まれている。
だが、だいたいにおいて流動食ダイエットは、通常の固形食よりもカロリーが少ない傾向にある。
ランガーはBuzzFeed Newsに対して、「過去20年で私が目にしてきた流動食ダイエットのすべてに共通しているのは、人間ひとりを数週間にわたって維持するだけの適切なカロリーや栄養素を含むものは存在しないという事実です。数日間でも難しいでしょう」と語った。
ほとんどの流動食ダイエットは急激な減量を意図している、とランガーは指摘する。
何をどれくらい飲むかによっても異なるが、流動食ダイエットのカロリーは、1日あたり1000~1500カロリー程度だ。
低カロリーの流動食ダイエットを続けると、つまるところ身体が飢餓状態になり、貯蔵されていたエネルギーを使い尽くすことを余儀なくされる。
身体がまず燃やすのが、グリコーゲンだ。これはグルコースの一種で、肝臓や筋肉に蓄えられている。
また、専門家たちの説明によれば、グリコーゲンは、みずからの数倍の重さの水と結合しているという。
「グリコーゲンを燃焼すると、それに結合していた水が失われます……そして、あなたの身体には、だいたい5~10ポンド(約2.3~4.5 kg)の重さの水が蓄えられています」とクルーペインはBuzzFeed Newsに述べた。
したがって、たしかに流動食ダイエットでは、はじめのうちは体重が減る。
だがおそらく、あっというまに元に戻るだろう。「普通の食事に戻した途端に、身体はまたグリコーゲンを蓄えはじめ、それとともに水分も戻ります」とクルーペインは説明している。
最初は脂肪が、やがて筋肉がなくなる
流動食ダイエットをもっと長く続けたらどうなるのだろうか?
身体がグリコーゲンを燃やし尽くしたら、次は、より長期的なエネルギー貯蔵庫に手をつける――すなわち、脂肪細胞と筋肉だ。
そのため、最終的には脂肪をある程度は減らせるだろうが、筋肉量も低下することになる。そして、筋肉は取り戻すのが難しい。
流動食ダイエットを終えて固形食に戻すと、結局は、そもそも減ったぶん以上に体重が増える可能性がある、とランガーは説明する。
あたりまえの話だが、制限のきわめて厳しい食事を終えたあとは、たいていの人は食べすぎるものだ。
「身体が食べものを渇望していて、流動食ダイエット中に得られなかったカロリーと栄養を補おうとして食べすぎるのです」とランガーは言う。
どんな身体組成を目標としているかにもよるが、それは理想的とは言えなそうだ。
そうしたことから、流動食ダイエットは効果的な減量手段ではなく、継続的に維持できるものでもない、と専門家たちは話している。
「多少の体重は減るかもしれませんが、とてもつらいし、身体機能に必要とされるすべての繊維やビタミンや栄養素を摂取できません……役に立たないやり方で、自分自身の身体を飢えさせているだけです」とクルーペインは言う。
もっと健康的で持続可能な減量方法はいくつもある。
「デトックス」効果があるというのは都市伝説
「デトックス」や「クレンズ」だけが目標ならどうだろうか?
なにしろ、多くの流動食ダイエットがそれを宣伝文句にしているくらいだ。
ここで朗報をお伝えしておこう。あなたの身体は、もともと素晴らしい仕事ぶりでみずからをデトックスしている、とクルーペインは述べる。
あなたの肝臓や腎臓、肺、リンパ系(そしてその他の身体部位)のすべてが懸命に働き、あなたの身体から毒素や不純物を取り除き、健康を保っているのだ。
また、固形食を避けて流動食を選んでも、消化系が「洗い流される」ことはない。
「腸を『水圧洗浄』する方法はないし、するべきでもありません」とランガーは言う。
流動食ダイエットの内容にもよるが、むしろ詰まりがややひどくなる可能性もある。
「人間には繊維が必要です。流動食ダイエットでは十分な繊維を摂取できないため、おそらく便秘になるでしょう」とクルーペインは話している。
その一方で、一部の既製ミックスやシェイク、デトックスを売りにしているお茶などには、脱水作用のきわめて強い下剤や利尿剤が含まれていることがある、とクルーペインは指摘する。
そのため、そうした製品を試すときには、必ず表示を読み、注意を払うようにしてほしい。
ダイエット・メンタリティは捨てたほうがいい
とても制限の強い低カロリーな流動食ダイエットが良いアイデアとはいえない理由は、もうひとつある。
専門家によれば、流動食ダイエットは、メンタル的な健康に悪い影響があるし、食べものとの関係が損なわれるおそれがあるという。
「食事に関する、心理的な勘違いが生まれます……減量は、食べものや栄養を削るものだと考えるべきではないのです」とクルーペインは言う。
長期にわたって流動食ダイエットを続けると、たいていの場合は、ひどくみじめな状況になる。
おそらく空腹を感じるだろうし、空腹からつねに怒りっぽくもなるだろう。そして、食事を楽しむ機会も逃してしまうかもしれない。
「食べものを単なる燃料のようなものに矮小化し、諸々の喜びを排除してしまうことになります。これは、心理的にも感情的にも、さらには社会的にも、問題を引き起こすおそれがあります」とランガーは言う。
長期にわたって低カロリーの流動食ダイエットを続けたい、もしくはそうした制限の厳しいダイエットを何度も繰り返したいという願望があるなら、それは専門家に相談すべき兆候かもしれないとランガーは言う。
過去に摂食障害になったことがある人や、自分の食事に対する姿勢や心身の健康状態に懸念がある人は、絶対に流動食ダイエット(や、一時的に流行するダイエット全般)を避けるべきだ、とランガーとクルーペインは口をそろえる。
いずれにしても、どのような形であれ、食事内容を大幅に変更するつもりなら、事前に医師に相談してほしい。
健康で基礎疾患(1型または2型糖尿病など)がなく、1日くらいだったら流動食で過ごしてみたいと本当に思っているのなら、好きなようにすればいい。
その程度なら、おそらく害はないだろう。ただし、たいした効果は出ないことも知っておいてほしい。
そして、体重が減るとしてもそれは水分の重さであり、ダイエットが終わったあとは、減った分がすぐに戻ってしまうことも覚えておいてほしい。
食事をときどき飲みものに置き換えようと思っているのなら、ストローからであっても、必ず、十分なカロリーと栄養素を摂取するように心がけてほしい。