ある日の深夜。豪シドニー在住のケイトさんは、新型コロナウイルスの不安からなかなか眠りにつけなかった。
気持ちを落ち着かせるため、彼女は趣味のケーキを作ろうと思い立った。
ケイトさんは、アマチュアのケーキデザイナーだ。新型コロナで混乱する世の中の「不安」をケーキで表現することにした。
トイレットペーパーの形をしたケーキを作り、自身のインスタグラムに写真を投稿した。
新型コロナウイルスの感染拡大が原因でトイレットペーパーの買い占めが起ったことを、ケーキで表現したのだ。
他のケーキデザイナー達が作ったトイレットペーパー形のケーキを見たことはあった、とBuzzFeed Newsにケイトさんは語った。
だが、だからといって彼女は同じトイレットペーパー形のケーキを作ることに、ためらいは無かったそうだ。
「フェイスブック上で大勢の人が、トイレットペーパーの形をしたケーキの写真に私をタグ付けし、『ケイトならもっと良いケーキが作れる』と言ってきました」
ケイトさんがケーキを完成させたあと、彼女の夫がツイッターに写真を投稿した。投稿はものすごい勢いで拡散された。
Somebody suggested my wife should make a toilet paper cake. So she did.
「誰かが僕の妻にトイレットペーパーケーキを作れば?と提案したんだ。だから、彼女は作った。」
ケイトさんの夫は、投稿に彼女をタグ付けし忘れていることに気づき、続けてこう投稿した。
So I did a bad, thoughtless thing. I tweeted Kate’s cake this morning & in my rush of pride to share it, I didn’t tag her😳Now 5K RTs later the tweet doesn’t even mention her name & she’s rightly upset. If you were kind enough to RT her cake, pls RT again & celebrate @sashimimimi
「あまり深く考えてなかったせいで、悪いことをしてしまった。忙しい朝の時間に、ケイトのケーキをツイートしたんだけど、彼女をタグ付けするのを忘れてしまった。5000リツイートされているのに、ケイトの名前が一切ないから彼女がちょっと怒っている…すでにリツイートしてくれた人達も、もう一度リツイートしてくれたら嬉しい」
「新型コロナの影響で弱い立場にいる方々が、トイレットペーパーなどの生活必需品を手に入れることが出来なくてどれほど困っているのだろう、とよく考えていました」とケイトさんはBuzzfeed Newsに語った。
「それと、ティッシュに見えるケーキ用アイシングを自分で作れないか、少し試してみたかったのです」
彼女のケーキが多くの注目を浴びたのは、人々の「トイレットペーパー」に対する執着心からきているのではないかと、ケイトさんは考える。そして、その執着心に彼女は困惑しているという。
ケイトさんのデザインしたケーキが注目を浴びたのは、今回が初めてではない。
昨年、「ハリー・ポッター」をテーマにしたケーキが話題になった。
「ハリー・ポッターのケーキは、スチューワート・ハウスという、恵まれない子ども達を支援する施設に寄付しました。子ども達は、すごく喜んでいました」
子供達に与えた影響を考えると、自身がデザインしたケーキの中で1番誇りなのは、ハリー・ポッターのケーキだそうだ。
「人に自分のケーキをみてもらうこと、食べてもらうことは、私自身のストレスを軽減させてくれます。私も前向きになれるのです」
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人々が外出することが出来なくなった今、ケーキ作りやケーキデザインへの関心はより一層高まっている、とケイトさんは考える。
実際に、酵母や小麦粉が売り切れになる店も多いそうだ。ケイトさんは今の状況を「ホームベーキングの時代だ」と語った。
「人々は、家庭的で美味しいホームベイキングに安らぎを求めているのです」
「同時に、世界がコントロール出来ない状況にある中で、『自分がコントロールしている』という感情をホームベーキングに求めているんだと思います」とケイトさんは語る。
彼女の次のケーキは「イチョウの木」をテーマにしたデザインだそう。
「日本と韓国でみたイチョウの木をまた見にいくのが夢です。それが自宅待機中の私が作りたいのケーキです」
新型コロナウイルスの影響で近い将来の旅行が不可能になった今、イチョウの木のデザインで少しでも世界が近くなれば、というケイトさんの想いが込められている。
トイレットペーパーケーキはどうなったのか、というBuzzFeed Newsの質問に対し、ケイトさんはこう答えた。
「友達にあげました。実は私、ケーキは食べないので」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:オリファント・ジャズミン