国立太陽天文台の観測所が謎の一時閉鎖。 その後、明らかになったまさかの理由…

    FBIは沈黙し、「宇宙人説」まで浮上していたが…

    9月6日、ニューメキシコ州サンスポットにあるサクラメント・ピーク観測所が突然閉鎖された。FBIが調査していて、誰も何も語らないことから、ネット上では、宇宙人説から中国のスパイ説など、あらゆる説が出ていた。

    当局の話では、セキュリティ上の問題とのことだったが、従業員は何の説明も受けずに退去させられた。

    避難監視支援のために呼ばれたオテロ郡保安官事務所によると、FBIが関与しているとのことだったが、FBIは口を閉ざしていた。

    一時閉鎖されていたサクラメント・ピーク観測所は、全米天文学大学連合(AURA)が管理している。高倍率のダン太陽望遠鏡があることから、太陽研究における一流の施設と謳っている。

    サクラメント山脈の木々に囲まれた同観測所は、「セキュリティ上の問題」として一時閉鎖され、「予防措置」として建物から退去することを、当局は決めたと、AURAの広報担当者シャリ・リフソンさんは公表された声明で説明していた。

    「施設から退去することは、私たちの決断です」と声明には書かれていた。

    7日、「セキュリティ上の懸念が続くため」追って通知があるまで、同観測所は閉鎖する、とAURAは発表した。

    同観測所を保有しているアメリカ国立太陽天文台 (NSO)は、コロラド州ボールダーに本拠地を置き、他の施設はすべて運営を続けていた。今回、一時閉鎖されたサクラメント・ピーク観測所から1.6キロほど離れた場所にあるアパッチポイント天文台は稼働していた。閉鎖されたのは同観測所だけだったため、実際に何が起きたのか疑問と憶測を呼んでいた。

    9月6日、一時閉鎖が解消されるまでの間、協力に感謝する旨の声明を同観測所は発行した。

    ウェブサイトには、閉鎖の案内が掲載され、同観測所は早期再開に向けてAURAと密に連携すると書かれていた。

    何が起きていたのだろうか。

    「観測所もFBIも、誰も詳細を教えてくれません」とオテロ郡保安官事務所の郡保安官ベニー・ハウス氏は13日にBuzzFeed Newsに話していた。現場へ行って、従業員が待避するのに立ち会うように要請されただけとのことだった。

    このような要請は異例ではないが、少し奇妙だったとのことだ。というのも、観測所の従業員は、連邦政府の職員ではないからだ。

    「FBIもいましたが、理由は分かりません」とハウス郡保安官は話していた。「私たちが到着したときにはFBIはいなくなってしまい、連絡しても、何も教えてくれませんでした」

    さらに不思議なことに、軍用ヘリコプター「ブラックホーク」が上空を飛んでいるのを、保安官らは目撃している。米空軍基地が近くにあり、近隣で訓練を行うこともあるため、軍用ヘリが飛んでいることは、必ずしも異常ではない、とハウス郡保安官は説明していた。

    「ですが、そのタイミングと場所が、とても奇妙に合致しているのです」と保安官は首をかしげていた。

    The sun is being weird right now but why would the Feds descend on an observatory and evacuate everyone? #F2B #Aliens #Disclosure #Sunspot https://t.co/v8FJ0qxybq

    「今サンスポットが変なんだけど、なんでFBIが観測所にきて、みんなを避難させているんだ?」

    BuzzFeed NewsはAURAに問い合わせたが、AURAはFBIの関与について言及できないと話していた。

    入り口には、立ち入り禁止と書かれた警察のテープが1本張られただけで、動きはなかった、と郡保安官は話していた。

    「まるで、休日で閉まっているか、みんな休暇中かという様子でした」とのことだった。

    同観測所の臨時閉鎖は、地元メディアが取り上げた後、インターネット上で話題になり、ニューメキシコ州で何が起きているのか、多くの憶測を呼んでいた。

    4Chan、Reddit、Twitterでは、ホワイトサンズミサイル発射場を監視するのに中国のスパイが観測所のアンテナアレーに侵入したという説や、 電磁兵器の試験という説、地球外生命体の発見を政府が隠蔽しようとしているという説などが飛び交っていた。

    Facebookでは、国立太陽天文台(NSO)の元従業員や他の科学者などが、この状況を議論しており、怪しい、実に奇妙と話していた。

    「なぜ、こんなに秘密にするんだ?」とアリゾナで物理工学者として同天文台に勤務したことがあるクロード・プライメイトさんは首をかしげていた。

    「強いて推測すれば、人事か資金の問題ではないでしょうか。分からないのは、公式声明を出せない理由です」と別の投稿で書いていた。

    ビッグベア太陽天文台でデータサイエンティストと望遠鏡オペレーターを務めるジョン・ヴァーシックさんは、20年前にサクラメント・ピーク観測所に勤務していたが、今回のことはすべてがとても怪しい、と話していた。

    「今までこのようなことが起きたことは一度もありませんでした」と同天文台の元研究員はBuzzFeed Newsに話していた。「普通ではなく、誰も何も知りません。どんなセキュリティ上の問題を心配しているのか、推測することしかできません」

    アリゾナ州ツーソン近郊にあるキットピーク国立天文台と、ニューメキシコ州サンスポットにあるサクラメント・ピーク観測所を運営するために、全米科学財団が国立太陽天文台(NSO)を設立した、とヴァーシック氏は説明する。だが、同組織は現在大きな改革を行っており、ハワイに新しい観測所を建設して、古い観測所を徐々に閉鎖している、と同氏は付け加えた。

    「この10年間、同組織は、徐々に縮小してきました」と同氏は話す。「あの施設には十数名以上の従業員はいないと思います。ものすごく規模が小さく、隔離されており、へんぴなところです」

    同氏は、同施設で実際には何が起きているかの自説は明らかにはしなかった。陰謀説もささやかれてはいるが、太陽フレアが地球を消し去る差し迫った危険性はないことを、ヴァーシック氏は強調した。

    「太陽は、今現在、とても落ち着いています」と同氏は笑う。「宇宙人に関しては、そうじゃないようですね」

    UPDATE

    炭疽菌、世界を滅亡させる太陽フレア、外国政府のスパイ、宇宙人などの噂が飛び交ったが、同観測所でFBIが調査していたのは、児童ポルノであることが発覚した。

    9月10日に発行された連邦政府の捜査令状によると、FBIの潜入捜査官が、同観測所で登録されている3つのIPアドレスが大量の児童ポルノをダウンロードし、配信していることに気がつき、7月から監視してきた、とのことだ。犯人は、昨年から同観測所で働き始めた清掃員だった。

    裁判所の書類によると、パソコンを没収された清掃員は、同観測所が人里離れた場所にあるため、施設が襲われるのも時間の問題、と言ったり、連続殺人犯が来て、誰かを処刑するかもしれないと思っていると、言ったりしていたようだ。

    身の危険を感じた同観測所の責任者は、FBIには相談せずに、自主的に閉鎖を決めた。その後、FBIは清掃員の自宅を捜索し、証拠品を押収したが、清掃員はまだ起訴されてはいない。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan