仕事のために夫婦別姓を選んだことを説明した、それでも空港職員は納得してくれない… 楽しい旅行で突然起きた事件

    税関国境警備局の係員は、その母親、シルビア・アコスタさんにもし彼女が夫の苗字を受け入れたら「人生が楽になるだろう」と話したという。

    Sylvia Acosta

    2018年7月のある日曜日、シルビア・アコスタさん(50)は10時間のフライトでくたくたに疲れて、今すぐコーヒーが飲みたいと願いながらテキサス州ダラス・フォートウォース国際空港の入国審査の列に立っていた。

    一方、アコスタさんの娘、シボニー・カスティロさん(15)はテキサス州に無事に戻ってきたことにほっとして、スナック菓子のホット・チートスを今すぐ食べたいと思っていた。

    しかし二人は、フードコートでくつろぐ代わりに、とんでもないことに巻き込まれた。アコスタさんはシボニーさんが本当に自分の娘なのだと証明するために躍起になり、彼女が結婚したときにも名字を変えない決意をしたことについて説明する羽目になったのだ。

    まるで、マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』に描かれている、女性蔑視で強権的、差別的なディストピアの世界のようだったとアコスタさんが語るのは、税関国境警備局の係員とのやりとりについてである。彼女は税関係員と国境警備員が法律違反で侮辱的であり、アコスタさんと娘の名字が違うからといって正当でない足止めと叱責をしたとして非難している。

    「彼は書類から顔を上げて、『あなたが彼女のお母さん?』などと言ったんです。私がそうだと答えると、彼は『なぜあなたたちは同じ名字じゃないんですか?』と聞いてきました」。博士号を取得したため、仕事上の名前を変えたくなかったアコスタさんは、そのときのことをこう話す。

    「私は、結婚の際、自分の名前を変えたくなかったのだと説明しました。なぜなら、私はこの名前でキャリアを築いてきたし、人々はこの名前で私のことを認識しているからです。それを何度も説明しました」

    アコスタさんによると、係員は納得せず、人身売買に対する懸念を口にし、アコスタさんに、隣にいるシボニーさんが本当にアコスタさんの娘かを証明できるような、たとえば出生証明書や父親の覚書などといったものはないかと尋ねたという。

    「ショックを受けましたが、理解はできました」とアコスタさんは説明する。「しかし、私はそういった証明書の類を何も持っていませんでした。なぜなら、娘が赤ちゃんのころから一緒に海外に行くことは頻繁にあったし、今まで一度もそういったものが要求されることはなかったからです」

    係員とのやりとりは、次第に奇妙でひどく腹立たしいものに変わっていったと彼女は話す。

    「彼は、私が夫の名字を受け入れていたら、人生はもっと楽だっただろうと言ったんです」と、アコスタさんは驚きを隠さずに話す。

    人種差別を撲滅し、女性の社会参画を後押しする非営利団体YWCAのテキサス州エル・パソ支部代表を務めるアコスタさんは、いつの間にか、自分が「シボニーの父親とは離婚し、再婚して、今も自分の生まれた時からの名前を名乗っているのだ」ということまで説明する羽目になっていることに気づいた。

    「彼は私に、離婚を証明するための離婚判決を持っているかと聞いたんです」と彼女は苦笑する。「私が『離婚判決を持ち歩く人なんていやしませんよ。必須書類なんですか?』って言ってやったら、係員の男性は、必須ではないが、持ち歩くことを推奨すると言ったんです」

    5分ほどののち、アコスタさんは「人身売買を行なっている可能性を否定できず、一緒にいるのが実の娘だということを証明できない」という理由で、もう一度別室での審査を受けさせられたという。

    アコスタさんとシボニーさんは怒りに震えながら係員に従って奥の小部屋に入り、待たされるままに数分静かに座っていた。

    「永遠にも思える時間でしたが、最後には私は立ち上がり、いったいどうなっているのか教えてほしいと要求しました」とアコスタさんは言う。すると再び、彼女曰く「私の名前と娘について、私が何をすべきだったかについてのレクチャー」が始まった。

    「何度も説明しようとしましたが、彼らは私を無視して黙らせようとしました。私は完全に権利を侵害され、侮辱をされたんです。彼らは、上から目線で人を馬鹿にしたやり方で接してきました」

    30分後、二人はようやく入国審査を通ることができた。

    二人によると、係員は一度もシボニーさん自身に、彼女の身分について質問することはなかった。

    15歳のシボニーさんは「とても混乱しました。私たちには何も問題なく、パスポートなど、必要なものはすべて持っていたんです。この状態は、単に私たちの苗字が違うという理由だけで起こったんですよ。そして、私は一言も話しかけられませんでした。何の質問もされなかったんです。私の存在は完全に無視されていました」と話す。

    Sylvia Acosta

    しかし、税関国境警備局は、アコスタさんに反論し、係員は手続きの手順に従っていただけだと強調している。

    「当該女性と税関国境警備局の係員の対応の動画と音声を確認したところ、非難されるべき状況はありませんでした」と、税関国境警備局の報道官はBuzzFeed Newsに対する声明の中で主張している。

    国際的な人身売買と戦う努力を強化した2008年の法律を引き合いに、税関国境警備局は以下のように説明する。未成年と同伴している成人の関係が直ちに判定できない場合、係員は関係をはっきりさせるために追加的な質問をすることがあるというのだ。この追加的な質問は一般の入国審査エリアとは離れたところで行われる可能性もあるという。

    報道官はアコスタさんが追加の質問を受け、別の係員から税関国境警備局の手順と懸念を説明された上で、5分間に渡って質問されたことは事実だと認めた。

    もし、未成年の子供が両親と一緒ではなく片親や別の大人と旅行する場合は、同伴する大人はもう一方の親や保護者から、その大人が正式な同伴者だと証明する覚書を書いてもらい、それを携帯することを強く推奨すると、税関国境警備局は説明している。

    二人がようやくエル・パソに帰った後、アコスタさんはこの「女性嫌悪的な」経験をFacebookに投稿した。24時間のうちに、それは約15000回もシェアされ、たくさんの人々からの「失礼だ」「恐ろしい」といったコメントが寄せられた。

    ある人は、「私はこの問題が、アメリカ合衆国だけでなく、他の国でも起こりうるだろうと思っています。たくさんの女性が苗字を変えないことを選んでいます。私たちは現代社会に生きているんです。苗字だけが子供が自分の子だと証明できるものではないはずです」と書きこんだ。

    シボニーさんは、この経験はいらだたしいものではあったけれど、価値のある、力強いレッスンにもなったと話す。

    「私の母は自分の力で成功し、だからこそ苗字を残すことにしました。母は私のロールモデルです。係員は母を動揺させるために非常に無礼なふるまいをしましたが、母はそういうときにはどうすればいいかを見せてくれました。そして、現在のアメリカでさえ、女性でいることというのは戦いなのだということを教えてくれました」と彼女はシェアしている。「たしかに、社会は進歩して、状況は良くなっています。でも、まだ先は長いんです」

    アコスタさんが係員に挑む姿を見ることは、シボニーさんにとっては極めて重要なことだった。なぜなら、彼女はこんなことを経験するとは考えてもみなかったからだ。

    「母は私を、こういった状況が起こったときには、自分自身のために立ち上がりなさいと言って育てました。そして私は、母がその言葉通り、自分のために立ち上がるところを見たのです。母の行動は、女性としての価値観を私にわからせてくれました。だから私たちは、私たちのためにこの経験を公にする必要があるのです」


    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:フェリックス清香 / 編集:BuzzFeed Japan

    Brianna Sacks is a reporter for BuzzFeed News and is based in Los Angeles.

    Contact Brianna Sacks at brianna.sacks@buzzfeed.com.

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