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日本人になりすましていたマーベルの新編集長 アメコミ界で賛否両論

アキラ・ヨシダが書いたストーリーの多くは、日本を舞台にしたり、東アジアらしき要素を盛り込んでいたりしていた。

「アキラ・ヨシダ」という名が、現在、アメコミ界で物議を醸している。

マーベル・コミックやダークホースコミックス、ドリームウェーブといったアメコミ界を代表する出版社で制作に携わり、西洋読者が求める内容を書ける非白人ライターと称されることもあった、アキラ・ヨシダ。『Conan and the Demons of Khitai』、『X-Men: Age of Apocalypse』、『Thor: Son of Asgard』など人気作品を原作してきたことで知られていた。ヨシダが書いたストーリーの多くは、日本を舞台にしたり、東アジアらしき要素を盛り込んでいたりしている。そんな中、11月28日に衝撃的なニュースが飛び込んできた。マーベル・コミックの新編集長C.B.セブルスキー氏が、13年前にアキラ・ヨシダというペンネームを使っていたことを、コミックの情報サイトBleeding Coolに告白したのだ。記事を執筆したBleeding Coolの創立者リッチ・ジョンストン氏によると、セブルスキー氏は2000年代初期、マーベル・コミックの編集者だった。編集とコミックライターの兼業は規約で禁じられていたため、架空の人物という抜け穴を使って、編集者の仕事をしつつライター作業をやっていたという。過去にも、セブルスキー氏がヨシダを装っている疑惑が浮上していた。セブルスキー氏は当時、「アキラ・ヨシダは実在する人物だ」と否定していた。他にもマーベル・コミックの社員やアメコミ界の関係者でヨシダの存在を証言する者はいたが、本人に直接会ったことがないという告白もあった。会ったとことがあると発言していた人々は、同じ会社で働いている日本人の翻訳者と混同していた、と後に言い直している。
Suhaimi Abdullah / Getty Images

マーベル・コミックやダークホースコミックス、ドリームウェーブといったアメコミ界を代表する出版社で制作に携わり、西洋読者が求める内容を書ける非白人ライターと称されることもあった、アキラ・ヨシダ。

『Conan and the Demons of Khitai』、『X-Men: Age of Apocalypse』、『Thor: Son of Asgard』など人気作品を原作してきたことで知られていた。

ヨシダが書いたストーリーの多くは、日本を舞台にしたり、東アジアらしき要素を盛り込んでいたりしている。

そんな中、11月28日に衝撃的なニュースが飛び込んできた。

マーベル・コミックの新編集長C.B.セブルスキー氏が、13年前にアキラ・ヨシダというペンネームを使っていたことを、コミックの情報サイトBleeding Coolに告白したのだ。

記事を執筆したBleeding Coolの創立者リッチ・ジョンストン氏によると、セブルスキー氏は2000年代初期、マーベル・コミックの編集者だった。

編集とコミックライターの兼業は規約で禁じられていたため、架空の人物という抜け穴を使って、編集者の仕事をしつつライター作業をやっていたという。

過去にも、セブルスキー氏がヨシダを装っている疑惑が浮上していた。セブルスキー氏は当時、「アキラ・ヨシダは実在する人物だ」と否定していた。

他にもマーベル・コミックの社員やアメコミ界の関係者でヨシダの存在を証言する者はいたが、本人に直接会ったことがないという告白もあった。

会ったとことがあると発言していた人々は、同じ会社で働いている日本人の翻訳者と混同していた、と後に言い直している。

アキラ・ヨシダへの"取材"をもとに書かれた特集記事も存在する。

そこには、日本で育ったヨシダについてこう綴られている。

「父は海外とのビジネスも経営していたため、幼少期をアメリカで過ごすこともあった。スーパーヒーローのコミック読んだりテレビ、映画を見たりして英語を学んだ」

「日本の小さなコミック出版社『富士見書房』で編集の仕事を始めた。『ロードス島戦記』で知られる水野良、そして麻宮騎亜など作家やマンガ家とそこで知り合った」

実際、セブルスキー氏本人も日本で暮らしていた経験がある。

暴露されるヨシダの正体

セブルスキー氏はその後、マーベル・コミックを一度離職してタレント・マネージャーとして戻ってきた。ヨシダは、同じ時期にコミックを書くのをやめている。

セブルスキー氏は、タレント・マネージャーとして世界中の若者をスカウトしていた。

そして、セブルスキー氏がマーベル・コミックの編集長に就任すると決まってから、アメコミ界の関係者たちがTwitterで相次いで「ヨシダはセブルスキーだった」と指摘し始めた。

Hey comics journo friends: we should definitely be asking Marvel and new EiC CB Cebulski on why he chose to use the… https://t.co/8v3pRPahAq

「やあ、コミック・ジャーナリストの友人たち。マーベルと新しく編集長になるセブルスキーに絶対聞くべきことがある。2000年代初期、セブルスキーはなぜ『アキラ・ヨシダ』というペンネームを使って"日本っぽい"コミックをたくさん描いていたのか、と」

Image Comicsのブランディング・マネージャーを務めるデイビッド・ブラザーズ氏は、セブルスキーが編集長に就任する前日27日にツイートした。BuzzFeed Newsの取材に対し、「私は関係のない第三者だ」とコメントを控えた。代わりに、アメコミ界で意見を述べられるアジア人の名前を提供した。

Akira Yoshida comics were so Japanese you had to wait for swords to whisper with the ghosts of someone's ancestors… https://t.co/0OYMAVB7l5

「マーベルの白人が偽の日本人ライター、アキラ・ヨシダだったの?その名前は、人気なアニメ(『AKIRA』)とX-MENに出てくる日本人(サンファイアこと吉田四郎。マーベル・コミックの日本人スーパーヒーロー)だよ。『チーズバーガー・シュワルツェネッガー』と名付けるのと似たようなもの」

「アキラ・ヨシダのコミックは日本人っぽすぎて、剣に潜む誰かのご先祖様の霊からの囁きがあるまで、話が進まなかったんだった」

The upshot of this, behind all the names-changed-for-legal-reasons, is the allegation that new Marvel EiC CB Cebuls… https://t.co/GdkpyJqS5j

「"法的な理由で名前を変えた"といった背景があるけど、結局のところ、マーベルのセブルスキー新編集長は、架空の日本人ライターを作り上げた疑いがある。そして彼は、スカウトするべきだった人々の案を盗用し、マーベルの編集とフリーランス枠で二重稼ぎしていたかもしれない」

Twitter上で関係者たちによる暴露が相次ぐ中、ジョンストン氏はセブルスキー氏にコメントを求めた。すると、セブルスキー氏は次のように回答している。

アキラ・ヨシダというペンネームは、書き始めてから約1年後にやめた。明かにされていなかったことだが、この名前でライティングやコミュニケーション、プレッシャーについてたくさん学んだ。若くて未経験だった私は、学習しなければいけないことが多かったのだ。

しかし、すべて過去の出来事であり、解決されていることだ。そして今、マーベル・コミックの新編集長として心機一転し、マーベル・コミックでの今までの経験を世界中にいる有望な若者たちと共有していきたい。

アキラ・ヨシダは架空の人物だったと認めたこの回答は、アメコミ界の人々の怒りを引き起こしている。

日本では、ペンネームでマンガなどを制作している人は珍しくはない。なぜ、アメコミ界でセブルスキー氏の告白が物議を醸しているのか?

アメコミ界は白人男性が主流で、多様性に欠けている。非白人や女性ライターの多くは、西洋読者が受け入れられるような名前、画風に合わせてきた。

そんなライターたちにとって、セブルスキー氏が共有したいと語る"体験"は、納得のいかないものだった。

----and meanwhile us folx with actual ethnic names make decisions DAILY to downplay that part of ourselves in order to LIVE???

「確認したいんだけど。他民族の人の名前でコスプレして、その人たちの恩恵を盗んでいる白人の"天才少年"がいると。その間、民族的な名前を実際に持つ私たちは、生き延びるためにペンネームにするという決断を毎日しなければいけないわけ???」

It's insane to me that people warn women about hiding their fanfiction/fanart if they want to go professional in co… https://t.co/fsutDYOrl5

「女性は、コミック界でプロになりたいなら同人誌を隠したほうがいいと忠告される。それなのに、男性はどんなに恥ずかしい、ありえないことをしても許される。さらにトップレベルのプロになれるなんて、気が狂っていると思う」

Everybody wants to be Asian to make comics. But nobody wants comics made by Asians: Asians are too hard to understa… https://t.co/RFvmuYnfLk

「誰もがみんなコミックを作るのにアジア人になりたがる。でも、誰もアジア人が作るコミックなんて欲しがらない。アジア人を理解するのは難しすぎるから。は?」

中には、「どんな文化の人々も、自分たちとは違う文化のペンネームやあだ名を使ってきた」とセブルスキー氏を擁護するがあるが、それに対する反論もあり、意見が分かれている。

@RobaatoX The context is very different. He used a pseudonym to circumvent rules that evened the playing field for… https://t.co/TdauncTip9

「有望なライターたちに平等にチャンスが与える、というルールをセブルスキーはペンネームを使って避けた。仕事が欲しければ名前を西洋化するべきだ、と専門家からアドバイスされる有色人種の人々がいる中、日本人らしいあだ名を使っていたこと自体が屈辱、傷害だ」

If your reaction to this CB Cebulski is Akira Yoshida mess is to bring up Stan Lee and Jack Kirby and other Jewish… https://t.co/VoDFk8BI0q

「"セブルスキーがアキラ・ヨシダだった騒動"に対する反応として、スタン・リーやジャック・カービー(※)などユダヤ系のライターやアーティストを持ち出すのだとしたら、申し訳ないけどアホだと思う」

(※)アメコミ界の大御所スタン・リー氏やジャック・カービー氏は、ユダヤ系の本名を持つ。しかし、彼らはユダヤ人差別を避けるためにペンネームを使い始めた説がある。

また、セブルスキー氏がペンネームを使ったことを問題視する一方、アジア人ライターの才能を見出したのも彼だったと、タレント・マネージャーとしての業績を述べるマーベル・コミックの元社員もいる。

Same. I'm an Asian @CBCebulski hired to work at Marvel and thru him I've worked with other Asians like Adrian Alpho… https://t.co/R7ubjNamnj

「私は、セブルスキー氏にマーベルで働くよう雇われたアジア人だ。彼を通して、ほかのアジア人と働いてきた。例を挙げると、エイドリアン・アルフォナ、クレイグ・イェン、タケシ・ミヤザワ、ノーマン・リー、ジョー・チェン、ケイ・コバヤシ、トモコ・タニグチとか」

@PatrickZircher The sad and ironic thing is C.B. being blamed for taking work/keeping Asians from getting work at M… https://t.co/qQVIYdKciO

「悲しいことに皮肉なのは、セブルスキーがアジア人から仕事を奪ったり、できないようにしたりしていると批判されていること。編集者やスカウトとしての経歴を見ると、彼は批判されていることとは反対のことをしてきたのだが(自分の経験上そう言える)」

ジョンストン氏はセブルスキー氏の暴露記事を出した理由について「すべてはタイミングだった」とBuzzFeed Newsに話す。

現在、アメコミは今まで以上にアメリカの文化の一部として重要視されるようになっているという。

アメコミは今後どうあるべきか。人々に関心を持ってもらうことが「アメコミの未来の助けになっている」とジョンストン氏は見ている。

ジョンストン氏によると、記事に対する反応は分かれている。

なぜ問題になっているのか理解できない人。最悪な『イエローフェイス(白人が東アジア人を演じること)』のパターンだと思う人。面白いと感じる人。悲劇だと感じる人。がっかりしている人。昔からあることだから、と妥協している人。

そのような反応があるという。

「共感できていない声が多いとは思うけど、それがネットというもの」

この騒動をきっかけに、マイノリティの描写の重要性をマーベル・コミックが思い出してくれれば、とジョンストン氏は願う。

「マーベルは、色々な人の人生経験によって語られる多様なストーリーで、多様な人々を惹きつけることができると思い出してほしい」

マーベル・コミックの代理人はBuzzFeed Newsの取材に対し、セブルスキー氏がペンネーム「アキラ・ヨシダ」を使ってコミックを書いていたことを認めたが、公式声明を発表する予定はないとコメントした。

また、BuzzFeed Newsはダークホースコミックスにもコメントを求めている。

この記事は英語から翻訳・編集されました。

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Rachael Krishna is a reporter for BuzzFeed News and is based in London.

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バズフィード・ジャパン ニュース記者

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