バイレイシャルとは、異なる人種のカップルから生まれた人を指します。多くは、白人と黒人の両親を持っている場合に使います。
※日本では、異なる人種のカップルから生まれた人を「ハーフ」と呼ぶのが一般的ですが、今回は当事者を「ミックス」や「バイレイシャル」と表記します。
バイレイシャルとして育つ経験を語る動画が、TikTokで広まっています。
白人のママと黒人のパパに育てられた場合。その反対の場合。自己形成にどう影響があったのかなど、内容はさまざまです。
BuzzFeedは、5人に話を聞きました。
バイレイシャルのクリスチャン・ヘロンさん(17)は、黒人が多いコミュニティで白人の母親と暮らしています。彼はこれまで、頻繁に疎外感を覚えてきたといいます。
「子どものころから大きくなるまでずっと、しんどかったです」とヘロンさんは話します。「ミックスだと言うといつも、笑われました」

ヘロンさんの父親は、彼がまだ幼いころに亡くなったため、ヘロンさんはそれをきっかけに、アメリカ・ミズーリ州セントルイスに住む叔母と生活することになりました。そこでのコミュニティは、まさに「本物の黒人文化」 だとヘロンさんは言います。

アメリカ・ワシントンD.C.に住むエリザベス・ブッカー・ヒューストンさん(31)も、白人の母親と黒人の父親に育てられました。黒人文化にどう接するかは、どちらの親が白人かによる、とヒューストンさんは考えています。

父親は、ヒューストンさんが経験する人種差別については理解し共感してくれるものの、逆に白人女性である「母親からの影響」については理解しにくい部分がある、とヒューストンさんは話しています。
成長するにつれて、たくさんの人種差別を頭の中で密かにしていたとヒューストンさんは話します。そのため、自分は「黒人」ではなく「ミックス」でラッキーだったと感じたと言います。「以前は、『黒人なんだね』と言われたら、『違う、ミックスだ』と常に訂正していました」

高校に入ってようやく、ヒューストンさんは自分の「アイデンティティ」が、自分では受け入れられない形で、他人に使われていることに気づきました。

母親のことは大好きだけど、黒人の母親に育てられていたら、これまでの経験はかなり違っていただろうと、ヒューストンさんは話しています。

ライリー・シンプソンさん(22)は、13歳のときに父親が亡くなるまで、白人の母親と黒人の父親に育てられていました。
シンプソンさんは、家庭であまり頻繁に人種について話すことはなかったといいます。父親が、子どもたちには「ノーマル」であると感じてほしかったからだそうです。「ある日、兄が空手から帰ってきて、『なんで僕だけ黒人なの?』って尋ねたことからようやく、自分のアイデンティティについて考えるようになりました」
白人の母親にミックスとして育てられたことで、黒人の子どもと仲よくなるのが難しかった、とシンプソンさんは考えています。「今でも母親が母親としてのニーズ、父親が父親としてのニーズを満たしてくれていると思います。でも、黒人の母親に育てられていないので、(親の人種が、子どもにどれだけ影響を与えているのか)はっきりしたことはわかりません」とシンプソンさんは言います。

黒人の子に馴染めない、白人の子に馴染めないというのは、ミックスの子にとって万国共通だ、とヘイデン・グレツコさん(19)は話します。 「黒人の両親から生まれた子からは、自分は黒人ではないと言われるし、白人の両親から生まれた子からは、自分は白人ではないと言われます」とグレツコさんは言います。
グレツコさんはアメリカ・ブロンクスで黒人の母と白人の父に育てられ、11歳のときにノースカロライナに引っ越しました。黒人の母親に育てられたことで、自分の「アイデンティティ」を早くから模索できた、とグレツコさんは考えています。

黒人の親と白人の親に育てられる人もいますが、ジャクリン・ブラウンさん(28)の場合は、両親が離婚していて、また状況が少し違っています。「黒人の親は(子育てに対して)もっと慎重だと思います。それが厳しく見えるのも理解できます」とブラウンさんは話しています。
ブラウンさんはアメリカ・テキサス州ヒューストンで生まれ、13歳のときにルイジアナ州へ引っ越しました。「中学校でバイレイシャルの学生は私だけでした。みんな白人か黒人で、ヒスパニック系の子が2人いました」
大人になるにつれて、自分のアイデンティティをもっと「自覚する」ようになったというブラウンさん。ミックスの人たちが経験する困惑や混乱は、他人にラベルを貼りたがる人たちが原因だと感じる、と話します。

「ミックスの人は人種差別を受けない」という考えがあります。これは誤解だと、今回インタビューした5人全員が口をそろえました。
「曾祖母は、ものすごく人種差別をする人でした」とブラウンさんは話します。 「私が半分黒人だと、曽祖母は知らないかも」

「ミックスは黒人でもあり白人でもあるから、問題はないと思われています」とシンプソンさんは話します。「でも逮捕されたら、黒人だと認識されます。警察に止められたときは、黒人なのです」

「黒人は常に迫害され、常に何かを克服していないといけない、と考える黒人もいます。ミックスの人が黒人でないと言われるのは、ミックスの人は黒人と同じ経験をしていないと思われるからです」とグレツコさんは話します。
「黒人になる方法、白人になる方法に正解はありません」とクリスチャンさんは話します。

人種差別を経験しても、ほかの黒人よりも恵まれているかもしれないと、ミックスの人は理解するのが大切だ、とヒューストンさんは語ります。
「バイレイシャルの人は、2つの世界で生活しています」
「たとえば、職場で黒人の女性が、髪の毛が縮れていて差別を受けているのを聞いたとします」
「私について言われているのではなくとも、私がやるべきなのは彼女の味方になることです」
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan