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ツイッター、トランプ大統領のツイートを初めてファクトチェック。ツイート内容を事実上、否定

ツイッターが「ミスリード」のラベルを付けたトランプ氏のツイートは2件。いずれも、11月の米大統領選の郵便投票にまつわる投稿だった。

ミスリーディングなツイートに警告ラベルをつける機能を、ツイッター社が5月26日(米国時間)、トランプ米大統領のツイートに対して初めて適用した。

ツイッターがラベルを付けたトランプ氏のツイートはいずれも、11月に予定される米大統領選の郵便投票で不正が起きるといった内容の投稿だ。

ツイッター社は「郵便投票に関する事実はこちら」というラベルを付けた。クリックすると、トランプ氏の主張を「事実でない」と否定する報道機関のツイートなどが並ぶページに誘導される。

トランプ氏は「言論の自由の侵害」とツイートし、猛反発している。

トランプ氏が反対する「郵便投票」

郵便投票では、事前に投票用紙が送られる。有権者はこれに候補者名を記入して、州の選挙管理委員会に返送する仕組みだ。

米国の選挙制度は州によって異なるが、郵便投票は過去に数回、いくつかの州で実施されてきた。今年は新型コロナウイルスの流行を受け、全面的に郵便投票を導入する州が増えている。

全米州議会議員連盟によると、ワシントン州やコロラド州などの5州が、郵便投票の全面導入を決定している(5月27日現在)。他にもカリフォルニア州などの3州も導入を発表した。

ノースダコタ州などでは投票所も設置されるため、投票方法が選択できる。その他の州も、郵便投票の導入に向けて動いている。

「投票率が上がると共和党が不利になる」という理由で、トランプ氏はこれまで郵便投票の導入に反対してきた。貧困層や若者、黒人やヒスパニック系などのマイノリティ人種の票数増加が、野党・民主党に有利に働くとの見方だ。

指摘が付いたトランプ氏のツイート

5月26日、トランプ氏は以下のようにツイートした。

「郵便投票が、実質的な詐欺行為にならない可能性などない(むしろその可能性自体がゼロだ)。郵便箱が盗まれたり、投票用紙が偽造されたり、不正に印刷・署名されたりすることもある。カリフォルニア州知事は何百万人もの人々に投票用紙を送っているが、州民なら誰でも投票用紙を入手できる」

このツイートにリプライする形で、続けて投稿した。

「(投票用紙を手にするのが)どんな人物か、どのような経緯でその州に住んでいるのかはわからない。それに続いて、投票について考えたこともない専門家たちが、誰にどうやって投票すべきかを人々に説き始める。ありえない!」

青字のラベルをクリックすると、「郵便投票が不正行為につながるというトランプ氏の主張は、根拠なし」と見出しのついたページに飛ぶ。

その下には「あなたが知るべきこと」と題し、NBCニュースやワシントン・ポストなどの、トランプ氏の発言内容を否定する記事を掲載している。

これを受けトランプ氏は「ツイッターは言論の自由を完全に侵害している。大統領として、これは許せない!」とツイートした。

「今後のツイッターの方針を見直す布石になる」

度重なるトランプ氏の侮辱的・暴力的なツイートに関し、ツイッターはこれまでも対処を求められていた。今回、初めて公式に「ミスリード」のラベルを付ける決断に至った。

「トランプ氏のツイートには、 投票方法に関して誤解を招く可能性のある情報が含まれていた」ためラベルを付けたと、ツイッターの広報担当者はBuzzFeed Newsに語った。

ツイッターの関係者によると、今回のラベリングは第三者機関ではなく社内のチームが判断したという。しかし、ツイッターには独立したファクトチェック専門チームは存在しない。

一部の専門家はツイッターの対処を称賛し、今後もこのような動きが推進されることを望んでいる。

「ツイッターの判断は正しい」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)のデビッド・ランド教授は語る。

「できるだけ多くのツイート、特にトランプ氏のような影響力の強いツイートのファクトチェックをすることが重要だ。トランプ氏のツイートに対して警告がなければ、多くのユーザーはその情報が『検証済み』だと誤認してしまう」

新型コロナウイルスの流行下、ツイッターは積極的に誤情報の検証に努めている。3月下旬、「COVID-19に関する虚偽情報が含まれている」という理由で、ブラジルのボルソナロ大統領のツイートを2件削除。5月11日には、新型コロナウイルスに関して誤解を招きかねないツイートに警告ラベルを付けたり、削除したりする方針を発表した。

一国の大統領のツイートを検証するとなると、プラットフォームには大きな影響がある。

「ツイッターがファクトチェックをあまり好んでいないことは明らかだった。しかし、今回の(トランプ氏のツイートに関する)対処は今後の方針を見直す布石になった」と、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)のバイバルス・オレスク氏はツイートしている。

この記事はライアン・マック氏の協力を得て執筆しています。英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子