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「校則一揆」のススメ。くるぶしソックス禁止のルールに高校生が物申す

自分たちが守るルールは自分たちが決めていい!

<ソックスは、くるぶしが隠れる黒色か紺色を着用すること>

靴下の指定はよくある校則の一つだ。東京都目黒区の日出高校の生徒手帳にも、このように規定されている。

なぜ靴下の長さや色を自分で選べないのか。

2年生の藤井勇陽さん(16)と大村優太さん(16)は疑問に思い、社会学のゼミのグループで校則について調べ始めた。

「大阪の黒染め強要の裁判のニュースを見て、自分たちの学校にも、なぜその校則が必要なのか理由がわからず納得できないものがある、と思い当たりました」(藤井さん)

「派手な靴下は社会に出たときのマナーとしてダメだ、と指導されるのですが、それ以上の理由を聞いたことがありません」(大村さん)

2017年10月、大阪府立高校の女子生徒が、生まれつき茶色の髪を黒く染めるよう教員に強要され、精神的苦痛を受けて不登校になったとして裁判を起こした。そのニュースが、他人事とは思えなかったのだ。

どうすれば校則を変えることができるのか。2人はゼミのグループを代表して8月9日、「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」のメンバーに話を聞くことにした。不合理な学校のルールや行き過ぎた指導をなくすために2017年12月から活動している有志のプロジェクトだ。

どうすれば理不尽な校則をなくせるの?

藤井さんたち生徒は、校則に疑問があったとしても、それが学校に通ううえでのルールとして決められている以上、破ることは認められない。どうすれば先生たちに生徒が抱える疑問を伝えられるのか、悩んでいた。

「プロジェクトの活動によって、なくすことができた校則はありますか?」

2人のこの質問に対してプロジェクトのメンバーは、各学校に直接はたらきかける団体ではないことを説明。調査やハッシュタグ #ブラック校則 によって理不尽な校則を可視化し、世論を盛り上げ、メディアや政治家を通してムーブメントを起こす役割を担っている、と説明した。

プロジェクトの実態調査では、10代の6人に1人が中学時代に下着の色を決められていたなど、細かい校則の事例が明らかになった。国会でも話題になり、理不尽な校則や行き過ぎた指導を見直す動きが全国的に広まった。

メンバーの須永祐慈さん(NPO法人ストップいじめ!ナビ副代表)は「校則だけが問題なのではありません。暗黙のうちに決められた細かいルールを少しでも破ったら先生にめちゃくちゃ怒られる。指導の仕方に問題があると思います」と話した。

また、渡辺由美子さん(NPO法人キッズドア理事長)は、「下着の色を先生がチェックするなど人権侵害になるようなルールはもってのほか」と強調したうえで、こう話した。

「今までの教育では、決められたルールを守れる人材が必要とされてきましたが、これからの時代は新しい価値を発見できる人材が求められる。望ましいルールを作れる人を育てることが大事です」

「校則一揆」を起こそう

メンバーで評論家の荻上チキさんは、「校則一揆」を起こすことを勧める。学校内で団結してルールの改善を求めていこうということだ。

とはいえ、プロジェクトの投稿フォームに集まった声には、以下のように校則の変更提案を止められたケースもあり、異議を唱えるのは簡単ではない。

中学生にふさわしい服装が何かディスカッションをしてはどうかと提案したが、「中学生は子どもなので話し合いにはならない」との回答(福岡県・公立中学校・保護者)


寒い時期の登下校でパーカー着用禁止、暑いときにブレザーを脱ぐのは禁止。自分で生徒会長になって校則を変えようとしたが、立候補を受け入れてくれなかった(北海道・公立高校・当事者)

そこで荻上さんは、二つの方法が有効だとする。「データ」と「民意」だ。

「なぜおかしいと感じるのか、どれくらいの人が不満を持っているのか、どのように変えたいのか。これらのデータを示し、合理的な理由を文書で回答するように求めるのです。行き過ぎた指導をする教師の言動については、複数の証言を取ります。証拠をきっちり押さえていくことが重要です」

「もう一つの方法は、生徒会選挙など民意を正当に反映できる場を利用することです。例えば、候補者全員が『校則改正派』として出馬する。すると校則を変えることは前提となり、どう変えるのかの競争になります」

保護者や先生も巻き込む

さらに、味方はできるだけ増やしたほうがいい、とも。

高額な学校指定品や手作り指定品、黒染めの美容院代など、校則は保護者にも経済的負担や時間的負担、手間をかけている。また、厳しく取り締まるために教師のマンパワーも割かれている。校則に疑問を感じているのは、生徒だけではないかもしれない。保護者や先生も巻き込めるかもしれないのだ。

「学校の中で変わらなければ、外に訴える。市議会や区議会などもいいです。いろいろな大人に声をかけ、誰がどのように反応したかも記録する。一連の行動そのものが社会科見学になりますよ」

「仕組みは従うものではなくて、変えられるものです。単に適応することは成長とは言いません。今あるシステムの問題点を改善するために自ら考えて行動し、前よりもよくなれば、それを成長と言うのです」

新刊『ブラック校則』(東洋館出版社)で荻上さんと共同編著者である名古屋大学大学院准教授の内田良さんも、こう話す。

「生徒会は最も真っ当なルートです。自分たちでルールを作ることができれば、生徒だって守りますよね。教師が作ったルールを守るだけだと、主体性も思考力も育ちません。どんなルールだったら合理的で自分たちの人権が尊重できるかを生徒自身が考える。教育のプロセスとしても大事なことだと思います」

「嫌なら学校やめれば」にはこう返す

最後に、理不尽なルールを押し付けられたときはこんなふうに言い返してみては、という想定問答のアイデアを、『ブラック校則』の内容と取材からまとめた。

Q: 校則が嫌なら学校をやめればいい。
A: 事前に十分な説明を受けていません。

2006年の国立教育政策研究所の調査によると、生徒指導の基準を生徒や保護者に「特に周知していない」という高校が63%。2009年の文部科学省の調査でも、懲戒の基準を周知していない高校が35%ありました。事前に十分な説明がないにもかかわらず、理不尽な校則を強要することは不適切です。

Q: 社会に出たら理不尽なことがあるのだから、学生のうちに慣れるべき。
A: それは理不尽さに過剰適応したあなたの考え方です。

「みんな苦しかったんだから」という呪いの押し売りは無意味などころか、理不尽さを維持し続けるという点で、社会にとってマイナスです。

Q: 自然な黒髪のほうが勉強に集中できて賢くなれる。
A: それは間違っています。だって、あなたの髪は真っ黒なのに、こんなに愚かな指導をするのですから。

プロジェクトの調査結果では、「日本人なら黒髪ストレート」というのは偏見で、そうではない人が約4割いることがわかっています。生まれながらの髪の色を否定してまで全体主義を押し通そうとするのは、生徒をブランド維持の道具としか見ない発想です。


夏休みが終わり、学校が始まる頃に、子どもの自殺が増えるというデータがあります。背景には友人関係や勉強の悩みがありますが、不登校の要因として「学校の決まり」と答えた子どもも一定数います。

集団生活のルールは必要ですが、中には、子どもの人権や健康を脅かすルールや指導も一部存在しています。

BuzzFeed Japanでは、子どもが安心できる居場所について考える記事をこのページから配信しています。8月31日午後9時からはYahoo! JAPAN(https://cast.yahoo.co.jp/buzzfeedjapan/)でウェブ番組を生配信します。

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