80年代風のビジュアルで国内外で活動する歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」。主宰・ボーカルの草野絵美さん(@emikusano)が6月25日、Twitter上で1枚のイラストを発信した。
里親制度について多くの人に知ってほしい、という思いから、草野さんはこのイラストをiPadで描き、Twitterに投稿した。
草野さんは、児童虐待をなくすために活動しているタレントチーム「#こどものいのちはこどものもの」を立ち上げたイラストエッセイストの犬山紙子さんらと交流があり、チームに新たに参加。
草野さんと犬山さんは、チームがクラウドファンディングサービス「Readyfor」と実施しているクラウドファンディング「こどもギフト」の第2弾のプログラムの一環で、支援先のひとつであるNPO法人「SOS子どもの村JAPAN」にインタビューをした。
「養子縁組したい人はたくさんいるのに」
「まず、里親と養子縁組の違いから勉強しました。子どもに恵まれなくて養子縁組を考えているという人は何人か知っていたのですが、里親についてはあまり知られていないのでは、と感じました」
里親を引き受けるのは、経済的に裕福で子どもがすでに巣立った余裕のある家庭だというのが、草野さんに限らず、よくあるイメージなのかもしれない。
実際には、厚生労働省から子ども1人あたり月8万6000円の「里親手当」が支給され、さまざまな年齢、職業、家族形態の人が研修を受けて里親になっている。
「インタビューを通して、里親は誰のためにあるの制度なのかを考えたときに、子どものための制度だということを初めて実感しました」
養子縁組をしなくても里親になれる、ということがあまり知られていないと感じた草野さんは、イラストならわかりやすく伝えられるのでは、と考えたという。
その背景には、里親のことに限らず、社会全体で子育てをするということを考えていきたい、という草野さんの願いもある。
「児童虐待の悲しいニュースが続き、思い出すだけで涙が出そうになりますが、悪い親だと片付けてしまうのはちょっと違うよな、と思うんです」
小学1年生の長男を育てている草野さんは、自身の子育て経験から、児童虐待はひとごとではないと感じたという。
「息子が乳児期やイヤイヤ期のころは、寝不足が続いたり手を焼いたりして、子育てのストレスを実感しました。余裕がなくなると、人間は優しくなれなくなるんですね」
「パートナーがいて保育園に預けることができ、両親や友達、近所の人に頼ることができた私でさえ、孤独やプレッシャーを感じたので、ひとりで子育てしている人はどんなに追い詰められるだろうかと思いました」
声をかけられて救われた経験
草野さんは昨年、アメリカに2カ月ほど滞在した時期があった。不慣れな環境で、時差による寝不足もあり、仕事と育児の両立がうまくいかず、子どもの手を引いて歩きながら、ボロボロと涙がこぼれたことがあった。
「そのとき、路上を歩いていた女性が私を見て駆け寄ってきて、声をかけてくれたんです。『自分は消防士をしていたんだけど、子育てで何か困ったことがあったらなんでも言ってくださいね』と」
「電車の中で子どもが泣いてしまったときも、ひとこと声をかけてくれるだけで救われることもありました。だから私も、赤ちゃんが泣きやまなくて困っている人がいたら、微笑みかけようと思っています」
「えこひいき」の大切さ
里親についてインタビューをして知ったのは、虐待など不適切な養育環境で育った子どもは、その後に関わる大人が自分のことを本当に愛してくれているのかを確認するために「試し行動」をするということ。
暴言を吐いたり、暴力をふるったりしても、無条件で自分のことを受け入れてくれるか、大人を試す子どもたち。そんな子に1対1で向き合って「えこひいき」をしてあげられたら、と草野さんは感じたという。
「私自身は、親に褒められて育ったんです。『あなたはやればできる子だから』『こういうことが得意だよね』『特別な存在なんだよ』と言われ続けたことが、いまの自尊心につながっているんじゃないか、というのが実感としてあります」
「えこひいきや、特別な対応をしてあげる時期がその子にとってどれだけ大切か、親だけでなくていろいろな立場の人と一緒に、考えていけたらと思っています」
こどもたちに届け
6月30日(日)午後1時から、草野さんら「こどものいのちはこどものもの」のメンバーが参加するイベント「いまできる「こども支援」を考える。 ーこどもたちに届く寄付のありかた」が開催される。
タレントの福田萌さんは、BuzzFeed Newsにこう話す。
「世田谷区長の保坂展人さんにインタビューさせていただいたときに、私も里親制度があるということを知りました。日本では里親というと犬や猫のことが一般的に知られていて、子どものことはまだまだ認知が足りていないようです。私たちも里親制度をよく理解し、活動の中で広めていきたいなと考えています」
参加費3000円はすべて「こどもギフト」への寄付金にあてられるという。詳細・参加申し込みはこちらから。