平成生まれが作る「憧れの80年代」 無名のユニットがアメリカの音楽フェスに呼ばれるまで

80年代風ビジュアルの歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」。ネットを中心に活動する無名の彼らが、米国の大型フェスに呼ばれるまでのストーリー。

「はい、アメリカ、行ってきます。いやー、始めた頃はこんなことになるなんて全然思ってませんでした!」

そう話すのは、3人組歌謡エレクトロユニット「Satellite Young‏」のボーカル、草野絵美さん。3月9〜19日にテキサス州オースティンで開催する音楽フェス「SXSW」(サウス・バイ・サウスウェスト)に出演することになった。

今年、日本からは「東京スカパラダイスオーケストラ」「雅-MIYAVI -」などが出演。過去には「Perfume」「水曜日のカンパネラ」なども登場している。世界でも注目度の高い音楽フェスのひとつだ。

まだ無名の彼らが、一体なぜこの大舞台に?

知らないのになつかしい、憧れの「80年代」

「Satellite Young‏」は、ビジュアル、楽曲ともに80年代を意識しつつ、最新のサウンドやテクノロジーとの融合を目指したユニット。

「歌謡エレクトロ」と名乗る通り、往年のアイドルソングのような、異国の音楽のような、不思議な味わいの曲を発表している。

発表したばかりの「Dividual Heart」のMVはディープラーニングの技術で加工。当時のグラフィックやネオンサインを学習し「コンピュータが考える80年代風」の色使いになっている。

インディーズで活動する彼らはCDすら発売しておらず、活動はネット上での楽曲発表とライブのみ。国内以上に海外でじわじわと人気を伸ばしている。

プロを目指して活動していたわけではなく、全員がそれぞれ別の本業を持つ、兼業アーティストだ。

平成生まれの絵美さんは、80年代にフォーカスする理由をこう話す。

「小さい時から、その頃のアイドル歌謡やアニメが好きで。松田聖子さん、中森明菜さん、山口百恵さん、ピンク・レディー、クリィミーマミ……自分が生まれる前の時代にずっと憧れがあったんです」

「リアルに生きていないのに、妙になつかしく思えるのっておもしろいですよね。海外の人が日本に対して持ってる独特の『フェイク・ジャパン』のイメージも好きで、そこはかなり近い感覚な気がしています」

趣味の音楽活動から米国のフェス出場へ。夢が実現するまでに一体何が?

その1:米国のネットレーベルに加入

YouTubeでこの動画を見る

w.soundcloud.com

ユニットを結成したのは2013年。知人の紹介で絵美さんが、電子音楽に詳しいベルメゾン関根さんと出会ったのがきっかけだった。

曲作りのスタートは、絵美さんの鼻歌から。「楽譜もほとんど読めず、楽器も弾けないので」。iPhoneで思い浮かんだメロディーをボイスメモで吹き込み、関根さんに送る。関根さんはそれを元に音を作る。意見交換しながら、数カ月に1曲のゆるいペースで作りためていった。

せっかく完成したので、オンラインで公開しよう。メジャー、インディーズ問わず多くのアーティストやDJが自作の曲を発表する「SoundCloud」で発表したことで事態は動いていった。

英語で発信していたこともありシンセ・ウェーヴ系の音楽が好きなファンに“見つかった”。「こういう音楽に、日本語の歌詞がのっているのが新鮮だったみたいです」。

口コミで広がり、米国のネットレーベル「Future City Records」に加入。海外では、似た嗜好や傾向を持つアーティストを束ね、キュレーション的に紹介するネットレーベルがかなり盛んだ。レーベル単位で新作・新人をウォッチしているファンも多い。

その2:海外アーティストとコラボ

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

転機になったひとつは、スウェーデンの同人サークルmakebabi.esが制作するWebアニメ「せんぱいクラブ」とのコラボだった。

「せんぱいクラブ」は日本のアニメの“お約束”を入れ込んだ学園ものだ。実際見るとわかるが、内容はかなりシュール。少しイントネーションがおかしい日本語のせりふの怪しさもいい。人気の動画は100万再生を超えている。

「自分より若い、しかも遠い異国の人がこんなアニメを!」と興味を持った絵美さんは自分からTwitterでコラボを打診。ED曲「卒業しないで、先輩」を提供した。

のちに、同曲のフルバージョンのMVでもコラボすることになる。こちらも80年代風のテイストに仕上がっている。

楽曲から入った音楽ファン、「せんぱいクラブ」から入った日本のアニメやカルチャーのファン。どちらにしても、予想外の角度から「Satellite Young」のファンは増えていった。

「活動が広がったこと、リスナーが増えたことはどちらもSNSありきですね。海外の人はフットワークが軽いのか、『コラボしようよ!』と声をかけるとそこから実現していくことが結構あります」

昨年、アーティストではなく一般参加者としてSXSWに訪れていた絵美さん。

Facebookページに「来年はSatellite Youngとして出たい!」と写真をあげると、ファンの一人が「ぜひ呼んでほしい、お願いします!」と、日本の担当者に直接通知を飛ばす形でコメントをつけた。

これを見た絵美さんは、「これを機に名前だけでも知ってもらいたい」と便乗する形で直接アピールメッセージを送信。当時は返信はなかったが、約1年経って出演の打診があったという。

「なので、SXSWのステージに立てるのも、ファンの方のおかげですね。世界中から来るお客さんの前でパフォーマンスできるのも楽しみです」

「数年間、ネットを中心にいろいろやってきてあらためて思うのは、やりたいこと、実現したいことはなるべく口に出したり、行動したりしたらいいってことですね、図々しいと思わずに!」

Haruna Yamazakiに連絡する メールアドレス:haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here.