「自分のルーツを教えてほしかった」養子縁組で白人家族に育てられた黒人たちの声

    養子縁組が進むアメリカで、白人家族に育てられた非白人の子どもたちに話を聞きました。マイクロアグレッションや自身のアイデンティティ…そこには、彼らのリアルな葛藤がありました。

    養子縁組で多様化する家族。アメリカのBuzzFeed読者で、白人家族に育てられた非白人の人たちに、自身の経験や思いを語ってもらいました🎤

    1. 白人には理解できない「黒人の恐怖」

    黒人が感じる社会への恐怖を、肌の色によって起こるかもしれない悲劇を、白人は理解できないと思います。

    最悪、殺されてしまうかもしれないという不安を持つ私を、家族はナンセンスだと言います。社会の中にある差別を目の当たりにしても、私の不安は不条理だと。

    成長するにつれて、自分のアイデンティティで悩むことが増えてきました。音楽の好みや文化に関して、どうしても白人の家族と同じではないことがあるからです。

    でも、黒人コミュニティに入ると、自分が黒人になりきれていない気がして馴染めません。自分は、黒人にも白人にもなりきれない存在なのかもと悩んでいます。

    —匿名希望

    2. 日常にある小さな差別

    幸せとは言えない状況だったと思います。家族から常にマイクロアグレッション(小さな嫌がらせ)を受けており、時に直接的な人種差別を感じることも。

    体や髪の毛についてネガティブな発言をされ続けることで、身体醜形障害に陥り、自己肯定感の低さは簡単には払拭できませんでした。「怒りっぽい黒人の女の子」という役を勝手に与えられてしまった感じ。

    似合うと思った服や、かわいいと自分で選んだアクセサリはすべて「ラッパーみたいな格好をするな」と怒られ、禁止されました。

    普通以上に明るく、ニコニコしていないと、すぐに「怒っている黒人の女の子」になってしまうので、気がつけば周りの顔色ばかり伺うようになり、不安障害になっていました。食べたいと思う食べ物を馬鹿にされたことで、摂食障害もありました。

    白人家族が黒人の子どもを養子にとる前に、何か別のシステムはなかったのかと考えていた子ども時代。長年虐待を受けて、周りに助けを求めるのも怖くてできませんでした。周りにいたのは、私を虐待した人と同じ見た目の人(白人)だけだったので、助けてと言うのが怖かったのかもしれません。

    —匿名希望

    3. 髪の毛について。

    髪の毛のタイプが違うことを理解してほしいですね。私を育ててくれたママは、私の髪をどうケアしていいかわからなかったようで、常に短くカットされていました。

    —kroxdz

    4. 隠された真実

    私はミックスルーツですが、肌の色が比較的明るいので、両親は白人として育てることにしたようです。私が自分のことを知ったのは20代中頃。そこから産みの親含め自分のルーツについて調べました。

    最初は、私の両親は私を非白人と知らずに養子にとったのだと思っていたのですが、ある日、両親から本当のルーツのことを人に話さない方がいいと言われて驚きました。

    本当のことを言わなかったのは、私を守るため、不必要な恥をかかせないためだと言われたのです。両親が私のルーツ、人種のことをどう思っているのか、その一言でわかりました。私を守るためなんて言い訳です。

    養子をとろうと思う人は、決してその子に嘘をつくべきではないと思います。嘘がバレたら、子どもが親を信じることは2度とありません。根本で嘘をついておいて、愛していると言えますか?

    —匿名希望

    5. 親は親

    私を養子にとってくれた人が私の両親です。育ての親なんて言い方は嫌い。産みの親のことを「本当の親」と呼ぶ人も嫌いです。

    自分とは違う髪質を笑いもせず、ブラックヘア専門の美容院を探してくれた親が私の親なんです。

    ——匿名希望

    6. TRA(transracial adoption)

    TRA、トランスレース・アダプション(異人種間養子)と言いいます。白人の家族に養子にいった非白人の子どもの多くは、自身の生物的、人種的ルーツを学ぶ機会がないまま、白人として育てられる子が多いです。

    一方で、周りの人々、時に家族からも偏見やマイクロアグレッションを受けることも多々あり、差別を感じてもそれを黙認している子がほとんどです。

    差別に対して声をあげることができないのは、どう反応すればいいのかわからないから、差別されていること自体がわからないから。

    または、知らないうちに自分で自分を差別して不当な扱いも当然だと思い込んでいるからです。現状に満足すべきだというプレッシャーがあるんです。これを家族が理解しない限り、家の中にサポートはないと言っていいでしょう。

    自分の家族が白人であり、自分を差別する人も家族と同じ白人というのは、助けを求めにくい状況です。

    —katek4161e6ae2

    7. ブラックカルチャーがわからない

    今22歳ですが、他の黒人の人にどう接していいかわかりません。AAVE(アフリカンアメリカンイングリッシュ)も知らないし、今さらあえて勉強するのも違うし。自分のルーツの文化圏からはみ出してしまった気がしています。

    見ているテレビ番組も聞いている音楽も違う、もっと言うと、黒人の人々が日々体験していることを私は体験せずにきました。

    もちろん、人種=文化というわけではないと思いますが、自分には黒人が黒人たる鍵となる何かが欠けているような気がしてなりません。人種系アイデンティティは一筋縄ではいかないのかなと。

    ちなみに、TRAに関するパネルディスカッションに参加したこともありますし、養子縁組について語り合うのも好きです。養子の子たちはそういうことを話せる場、機会が絶対必要だと思います。

    —ORyngo

    8. 大きな孤独感

    とても孤独です、心が疲れます。私と2人の兄はみんな養子ですが、黒人なのは家族で私だけ。私を養子にとった両親は、黒人差別に心を痛める白人メサイアコンプレックスでした。

    さらに、3人の養子の中で、大きくなったら産みの親に会いたいと私だけが希望していたことも何か影響していたのかもしれません。実際、3人の中で産みの親と会ったのは私だけです。

    大きくなって、と言っても15歳の時ですが、いよいよ産みの親に会うとなった時は緊張しました。育ての親と産みの親、みんなが幸せでいて欲しい気持ちと、みんながどう思うかという不安でとても怖かったです。

    結果、産みの父親は私の存在を受け入れることができず、産みの家族とは音信不通となりました。

    現在33歳、今も自分は養子だというトラウマに苦しんでいます。何かを失ったようで、孤独で、ふいに涙がでることもあります。

    —匿名希望

    9. 世間の思い込み

    うちはシンパパで、パパが55歳の時に私たちアフリカンアメリカンの子ども3人を養子にとりました。私たちは当時10歳。兄2人も私も、パパと出かけるときはなんとなく気まずさを感じました。

    家族旅行で、黒人の子ども3人(兄2人と私)が白人男性(パパ)を襲おうとしているとして、警察に止められたことがあり、この出来事は今も決して忘れることができません。

    —匿名希望

    10. 親の仕事

    私の白人の両親は、親としての仕事を果たさなかったと思います。私と妹が生まれた時に養子にとったので、時間は十分にあったはずなのにしなかった。

    父親の都合で、11歳の時に田舎に引っ越しました。全校生徒750人という小さな小学校で、非白人なのは私たち姉妹も含めてたったの7人。日常的に小さな嫌がらせや差別をうけ、それが差別であるとわかるまでに長い時間がかかりました。

    なぜなら、親から人種や差別について家庭で学ぶことがなかったからです。学校生活で差別を学び、それを両親に話しても理解してくれませんでした。肌の色の違いなんてない、関係ないと言うばかり。学校でいじめられるのは、肌の色ではなく転校生だからだよと言うだけでした。

    アメリカで黒人女性として生きていくには、私はあまりにも準備不足だったのです。もし、うちの両親が親として教えることをきちんと教えてくれていたら、状況は違ったのかもしれません。

    —匿名希望

    11. 現実を知ること、教えること

    子どもそれぞれにあった現実を教えるのは大変だけど、大切だと思います。

    現在のアメリカ社会において、黒人には白人と同等の権利と自由はないと思います。白人の親は、黒人の子どもたちの現実を知る必要があるし、彼らが社会で安全に過ごすためにどうふるまうべきなのかを、教える必要があります。

    黒人コミュニティで心安らげる場所を探してあげる必要もあるかもしれません。それが白人の親にとって安らぐ場所ではないかもしれないとしても…。

    失礼な態度をとった、NOと言った、質問した、警察官に口答えしたという理由で、残念ながら命を落としてしまった黒人の若者がいるのが現実です。だからこそ、黒人の子どもには黒人の子どもなりの処世術があるんです。彼らが目指すゴールに辿り着くためにも、その処世術がいるんです。

    —匿名希望

    12. 白人社会で生きるストレス

    白人社会で生きるストレスを、親に知って欲しいです。家、親戚の集まり、近所の人々、学校、宗教、政治や文化まで、私をとりまく大きな白人社会の中で疲弊していることをわかってほしいです。

    マイクロアグレッション、隠れ差別、あからさまな差別、無視されてしまう感情…。感情を出すことすら諦めてしまうこともあります。

    ストレスがあるからこそ、安らげる場所が必要になります。黒人のみのコミュニティだったり、TRAサポートグループだったり、理解され、声を聞いてもらえ、正当性を認めてもらえ、肯定してもらえる場所。

    本物の自分、黒人らしさを感じられる場所は必要だと思います。

    —匿名希望

    13. 歴史的背景

    マイクロアグレッションは間違いなく存在します。私がいる場で、家族が過去の奴隷制度について語り、先祖の過ちは償われるべきだという話をするのは辛いです。

    —匿名希望

    14. 両親の人種は関係ない

    両親が白人だからという理由で、自分のアイデンティティが揺らぐことはないと思います。白人の両親だから黒人としての誇りが減るとも思いません。

    私は自分のアイデンティティにプライドをしっかり持っています。

    —匿名希望

    15. 本当の社会を教えて

    3歳の時に白人の家族に養子にはいりました。素晴らしい子ども時代を過ごしたし、家族には感謝しかありません。ただ、社会についてもう少し、私に知る機会を与えてくれていたらと、最近はちょっと考えています。

    私の育った環境がいかに幸せか、昔と比べて人種差別はなくなったという人がいるからです。私にわざわざそう話すこと自体が、若干差別的意味を含んでいるんでしょうけれど。

    子どもの頃、家族のお出かけに友達を誘うと、いつも「いいお友達がいて幸せね」と知らない人に言われることがよくありました。私の家族なのに、社会からは、友達の家族で私がお友達の子、つまり家族に属していないように見えてしまうのです。周りの人の勝手な思い込みに、子どもながらに常に傷ついていました。

    —astrommen31

    16. 居場所がない

    白人の両親に育てられた黒人の子どもとして言わせてもらうと、どこにも居場所がないように感じることがあります。出かけるとジロジロ見られることが多く、幼いながらになぜ見られるのかという理由もわかっていました。

    黒人、白人関係なく、仲のいい友達もできず、誰も理解してくれなかったように思います。自分は変な子なんだと子どもの頃に思ったまま、今もどこかでそう思っています。

    —匿名希望

    17. 私は白人じゃないのに

    家族が白人なら自分も白人になるというわけではありません。

    BIPOC(Black, Indigenous, and People of Color)コミュニティから「白人寄りのやつ」と言われ、グループに入れなかったことがあります。黒人女性として生きてきた自分をすべて否定された気がして、とても傷つきました。

    —匿名希望

    18. 自然に学ぶルーツ

    私の両親はとても素晴らしい親です。ただ、白人家族の中で育った黒人の私に、黒人の文化については教えてくれませんでした。

    自分で調べるのではなく、家での躾、教育の一部として学べていたらなと思うことはよくあります。

    —adriennes4e67d24f7

    19. どちらにも属せない

    赤ちゃんの頃に白人家族に引き取られました。いいこと、悪いこといろいろありました。

    いいことは、田舎の小さな町で80年代の養子縁組だったので大きく注目され、地元で有名人になれたこと。

    悪いことは、どこにも居場所がなかったこと。どちらの人種にも100%受け入れられてはいない、ずっとそんな気分でした。

    ブラックコミュニティでは、僕の話し方や振る舞いは白人すぎて、白人コミュニティでは僕の肌は暗すぎました。結果、両者の間で常に傷ついていたように思います。

    —thatjarhead222

    20. 白人に生まれたかった

    いいことばかりではありません。私の産みの母は、何キロも歩いてある病院に私を預けました。病院なら誰か私を助けてくれる人がいると思ったのでしょう。私の育ての母はその病院で働いており、私を養子に迎えることになりました。

    両親は、本当に私のためを思っていろいろしてくれたのですが、私には鬱やPTSDがあり、14歳の頃からずっとカウンセリングを受けています。たぶん、養子じゃなかったらPTSDにはならなかったのかも。

    自分のすべてが嫌いで、白人に生まれたかったといつも思っていました。見た目が異なるという理由で、どこにも馴染めず、周りにいる多くの人に蔑まれて生きるのは辛くてしょうがなかったです。家の中ですら居場所がないように感じました。

    学校で唯一の黒人の子で、黒人のくせに白人の家族と住んでるといじめられ、自分のルーツとなる文化も知らない。自分の出生が恥ずかしくて嘘をつくこともありました。

    時が立ち、今は(育ての)両親ともっと一緒に過ごすようにしています。私の鬱で大変な思いをさせてしまったし、あの頃、親子として一緒にできなかったことを取り返そうとしています。私が黒人であるという事実を受け入れるのはまだ辛いです、でもそれだけはどうしたって変えられません。

    —匿名希望

    21. 養子を取る人に知ってほしいこと

    誰かが養子として引き取ってくれたからといって、助かった、これからは素晴らしい生活が待っているというわけじゃないことを、まず知ってほしいですね。

    養子という事実は、子どもにとってトラウマになります。母親から引き離されるのは、小さな子どもにとって大きな心の傷になります。育ての親の多くは、そのトラウマを理解していないのでは?

     私も私の兄(血縁関係なし)も白人家族にひきとられた黒人です。両親は私たちのルーツを学ばせようと努力はしてくれましたが、偏見や誤情報もありました。さらに、育ての母からは、物理的にも精神的にも虐待を受けていました。

    私が住んでいた地域は圧倒的に白人が多く、白人文化と歴史に洗脳されてしまいました。結果、自分は否定された気がして、居場所がなくなりました。白人社会の中で生きるには自分はブラックすぎると思ったのです。

    養子縁組をする人に知ってほしいのは、子どもを引き取るとき、その子のルーツを調べ、尊重し、教える機会をもつことがいかに大切かということ。

    他文化に対して少しでも偏見を持っていないか自分を見つめ、偏見があればそれを認め、考え直す必要があるということです。

    じゃないと、未来で誰かを傷つけてしまうから。

    —匿名希望

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:soko / 編集:BuzzFeed Japan