ジョナサンさんは、自分で書いたり、口頭で意思疎通をしたりできない。
9歳になるまでは、完全な意思疎通はまったくできなかったが、この素晴らしい12歳の少年は、目で話すことを学び、言葉に対する愛を探求できるようになった。
ジョナサンさんは、脳性麻痺をもって生まれ、人生の若年期の殆どを入退院を繰り返しながら過ごしていた。今では、『目で書ける(原題:Eye Can Write)』の著者である。同著は、〝ひとりの子どもの沈黙していた魂が現れ出てくる〟心温まる自伝である。
この本の中では、自身を取り巻く世界に気づくところから、意識の中に閉じ込められて、参加できないというジョナサンさんの心の旅が描かれている。補助代替コミュニケーション(AAC)を使うことを覚えて以来、すべては変わった。AACでは、「E-トラン・フレーム」と呼ばれるアルファベットの文字が書かれたボードを使用する。
ジョナサンさんの本は、〝希望のメッセージ〟と呼ばれていて、彼のヒーローである『戦火の馬(原題:War Horse)』の作家マイケル・モーパーゴさんが力強いまえがきを書いている。この本は、身体障害者についての誤解に挑むことを目的としている。
母親のチャンタルさんは、息子は常に内に物語を秘めていた、とBuzzFeed Newsに話す。
「書くのがとても好きで、言葉が好きで、類語辞典を引いたり、新しい言葉をひねり出したりするのが好きです。すべてを一遍に、話すのと書くのを同時に学んだので、異例でした。殆どの人は、(母国語を)話すのと書くのを同時には学びません」
ジョナサンさんの成功は、本人の柔軟な天性、そして、彼の才能が育まれるように支援したネットワークの重要性、このふたつの証である。
「たくさんの方が支援してくださいました。素晴らしいことです。実際に、ジョナサンが成し得たことの殆どのことは、今受けている支援なしでは成し遂げられませんでした。舞台裏のような支援や、ジョナサンの文字盤を支えることだったり、実にありとあらゆるものなしでは叶いませんでした。なので、支援いただいたことに、本当に感謝しています」と母親は話す。
「毎晩、息子の面倒をみてくれる方々がいます。息子はひと晩中、酸素吸入器をつけているので、夜通し起きていてくださる方がいるのです。私にはできませんでした。支援なしでは私自身の役割を果たすことができません。最初は、ひとりでやっていたので、大変でした」
「ジョナサンが成し得たことの殆どのことは、今受けている支援なしでは成し遂げられませんでした」
ジョナサンさんのエネルギーは限られているが、その情熱をどこに向けるかを、本人は決めており、このことは、話せない他の子どもたちに変化をもたらせている。
成功を収めている執筆の仕事の他に、ジョナサンさんは、若い身体障害者が十分な教育を受けられるようにするキャンペーンの最前線にいる。「本の収益は、ジョナサンの慈善活動Teach Us Too(私たちにも教えて)に入ります。Teach Us Tooは、すべての子どもが、自身に貼られたレッテルにかかわらずに、読み書きを教えてもらえる世界を思い描いたキャンペーンです」とチャンタルさんは続ける。
また、ジョナサンさんは、前向きなメッセージを広めようと、英・国際開発省とも協力している。7月24日、同省は、顧みられない分野に注意を向けようと、初となるグローバル障害サミット(Global Disability Summit)を開催した。
「特別支援学校に入学したジョナサンに与えられたレッテルは、〝重度・重複障害(PMLD)〟でした。つまり、これは、学校では読み書きを実際には教わらないことを意味しました。その代わりに、知覚を使うカリキュラムを与えられました」
「そこで、私たちは慈善事業を立ち上げて、本の収益はすべて、この慈善事業に入るようにしました。息子にとって、この本は、まだ声を手に入れていない人たちのための声となることだと、私は考えています。『声なき者の声になる』と息子は言っています。なぜなら、他にも身体の中に閉じ込められている子どもがいる、と強く感じているからです」
慈善団体Pace Centreによると、イギリスで脳性麻痺を患っている子どもは、3万人いると推定されている。脳性麻痺は、運動と筋肉運動の協調に影響を及ぼす一生涯にわたる病気だ。
特別支援学校で学べることには限りがあると感じた、と母親は話す。このことは、1日に1時間、息子を連れ出して、読み書きと基本的な計算を習わせるように、母親を駆り立てた。
これは、『Eye Can Write』と同じように、エッセイや詩も書けるようになる基盤となる。
「ジョナサンは、やってみよう、変化をもたらせよう、とこの本を書きました。やってみて、実際に外側に見えていることは、必ずしも内側で起きていることではないことを、人びとに気づいてもらおう、と書いたのです」とチャンタルさんは話す。「これは、普遍的なメッセージだと、私は考えます」