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「今こそ『嫌韓』あおり報道と決別しよう」 韓国をめぐる報道で新聞労連が声明

9月6日、韓国に関する一連の報道をめぐる問題を受け、日本新聞労働組合連合は声明を発表した。

韓国に関するテレビ番組や週刊誌による一連の報道を受けて、全国の新聞社の労組が加盟する日本新聞労働組合連合(新聞労連)が9月6日、「『嫌韓』あおり報道はやめよう」と報道機関へ呼びかける声明を発表した

8月27日放送のTBS・CBC系の情報番組『ゴゴスマ~GoGo Smile』では、中部大学の武田邦彦教授が「韓国女性が入ってきたら暴行しにゃいかない」と発言。後日、番組内でアナウンサーが謝罪を述べた。


さらに、9月3日発売の『週刊ポスト』の特集「韓国なんて要らない」にも抗議の声があがり、編集部が謝罪している。

今回の声明はこうした事態を受けてのものだ。

新聞労連の南彰・中央執行委員長はTwitterで、「報道機関の中に、対立を煽ろうという時流に争い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいます。新聞労連はそうした仲間を全力で応援します」とつづっている。

新聞労連は6日、韓国をめぐる一連の問題報道を受け、「『嫌韓』あおり報道はやめよう」と題した声明を出しました。報道機関の中に、対立を煽ろうという時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいます。新聞労連はそうした仲間を全力で応援します。 https://t.co/sJmlQ3eDXo

声明の全文は以下の通り。


嫌韓」あおり報道はやめよう

他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。

国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。

先月末、テレビの情報番組で、コメンテーターの大学教授が「路上で日本人の女性観光客を襲うなんていうのは、世界で韓国しかありませんよ」と発言した。

他の出演者が注意したにもかかわらず、韓国に「反日」のレッテルを貼りながら、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」などと訴える姿が放映され続けた。憎悪や犯罪を助長した番組の映像はいまもなお、ネット上で拡散されている。

今月に入っても、大手週刊誌が「怒りを抑えられない韓国人という病理」という特集を組んだ。批判を浴び、編集部が「お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」と弁明したが、正面から非を認めることを避けている。

新聞も他人事ではない。日韓対立の時流に乗ろうと、「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という扇情的な見出しがつけられたこの週刊誌の広告が掲載されるなど、記事や広告、読者投稿のあり方が問われている。

日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある。それにもかかわらず、政府は、自らの正当性を主張するための情報発信に躍起だ。政府の主張の問題点や弱点に触れようとすると、「国益を害するのか」「反日か」と牽制する政治家や役人もいる。

でも、押し込まれないようにしよう。

「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない。

私たちの社会はいま、観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れたり、移り住んだりする状況が加速している。

また、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、日本社会の成熟度や価値観に国際社会の注目が集まる。排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私たちの社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止めることが報道機関の責任だ。

今こそ、「嫌韓」あおり報道と決別しよう。

報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいる。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。