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安倍首相と会食のランサーズ HPに「25日時点で内閣府の文字があった」は誤り

HP上で主要取引先として記した「内閣府」の文字が2月25日の時点にはあったが、翌朝に削除を確認したとするTwitterの投稿が拡散している。しかし、「25日時点で内閣府の文字があった」とするのは誤りだ。

インターネット上で、仕事を依頼したい企業と、受注したい個人を繋ぐクラウドソーシング事業を展開する「ランサーズ」が、HP上で主要取引先として記した「内閣府」の文字が2月25日の時点にはあったが、翌朝に削除を確認したとするTwitterの投稿が拡散している。

このツイートをもとに、ランサーズを「証拠隠滅だ」などと非難する声がでているが、「25日時点で内閣府の文字があった」とするのは誤りだ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。


中でも広く拡散しているのは、精神科医の香山リカさんによるツイートだ。2月26日朝に投稿し、約8000リツイート(28日現在)されている。内容は次の通りだ。

昨日 ネットで政権擁護・野党disの書き込みの仕事募集してたランサーズの社長と総理が会食。ネットで話題に。

今朝
取引先から昨日まであった「内閣府」の三文字が消える。

仕事早っ!

物議醸した安倍首相との会食と過去


ランサーズを巡っては2月25日、秋好陽介社長が、他のIT系企業経営者らとともに安倍晋三首相と会食した、と報道各社が「首相動静」で伝えた

これがTwitter上などで、「世論誘導を行うネット工作記事の求人広告を掲載していた企業の社長と会食」などといった臆測を呼ぶようになった。

香山さんが指摘する「ネットで政権擁護・野党disの書き込みの仕事募集してた」というのは、過去にランサーズのサイト上で、政治関係の仕事の受け手を募集した複数の事案があったことを指していると見られる。

2017年には「当方の運営している政治系ニュースサイトのコメント欄への書き込みをお願いしたい」とする募集があった。「特に保守系の思想を持っている方を募集」とし、該当する例として「安倍政治を応援している方」「テレビや新聞の左翼的な偏向報道が許せない方」などと記され、話題となった。

最近では“【7500円(250円×30記事)】政治がテーマのブログ記事(800字文字以上)の仕事“と題した仕事依頼も掲載された。

内容の例として「タイトル:安倍総理のいいところがわかるエピソード」と書かれ、1記事あたり800文字以上・250円で、毎月30記事を依頼するものだった。

現在は、ランサーズ側が「利用規約・仕事依頼ガイドライン細則違反のため削除しました」として閲覧制限をかけ、当該依頼を削除している。

「内閣府」の文字はいつ削除?

ランサーズは、クラウドソーシングのプラットフォーム側であり、こうした一連の案件をランサーズ側から依頼したわけではない。しかし、過去にHP上で「会社概要」の主要取引先の中に「内閣府」と記していたことや、2月25日に秋好社長が安倍首相と会食したことが重なり、事実関係を確認しないままの臆測が、再び飛び交うようになったようだ。

そして、2月25日、秋好社長が安倍首相と会食したことで、再び騒ぎとなった。

HPを確認すると、たしかに「内閣府」の文字は消えているが、先述の通り、「25日時点で内閣府の文字があった」とするのは「誤り」だ。

「内閣府」の記載を削除したのは、2019年8月末だった。

今回の騒動を受け、ランサーズは、事実と異なる部分が多く含まれているとして、HPに掲載した『一部ソーシャルメディアでの発信について』とのお知らせでも、「誤解を招く恐れがあったために、2019年8月末に当社のコーポレートサイト記載の取引先から削除」したと伝え、同社はBuzzFeed Newsの取材にも同じ回答をした。

ランサーズは、主要取引先としていた「内閣府」との間で直接取引があったのは、2015年にあった「ロゴコンペのみ」だと説明した。

内閣府による「女性が輝く先進企業表彰」のロゴデザインを募集する案件だったという。

ランサーズは今回の件に対し、「SNSなどで、政治系記事案件の仕事を当社が受けているような指摘が一部ありましたが、そのような事実はございません」とBuzzFeed Newsに述べた。

そして、2017年にHP上で反論したのと同様に、HPに記載の取引先においても、「政治系記事案件の仕事を暗に依頼している」事実はないと回答した。

ランサーズに掲載される仕事依頼の案件の監視を強化し、現在、AIを利用した違反チェックなども行い、原則として全件をチェックしているという。

「特定政党や候補者に関する仕事依頼、差別助長につながる仕事依頼や不適切と判断した案件については、掲載を即時中断などの対策を通して、サービスの健全化と安心してお取引いただける環境整備に努めています」との見解を示した。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。