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居酒屋禁煙「吸う自由、吸わない自由」 JTは改正案に危惧も

違反すれば過料30万円以下の過料に処する。

厚生労働省が進めている飲食店など屋内での喫煙を原則禁止にする健康増進法の改正案。

議論は賛否両論になっているが、たばこを販売する側の見解はどうなのか?

そもそも、なぜ禁煙にするのか?

非喫煙者が他人のたばこの煙を吸う受動喫煙。

世界保健機構(WHO)によると2014年時点、オーストラリアやイギリスなど世界49カ国で、医療機関や学校、飲食店など「屋内の全面禁煙」を法制化している。

日本でも健康増進法(受動喫煙防止法)が2003年5月から施行されている。しかし、屋内禁煙については“努力義務”程度になっているのが実態だ。

罰則規定もなく、国際的に日本の受動喫煙対策は「世界最低レベル」と指摘されている。

そんな中、政府が受動喫煙対策を進める背景には、2019年のラグビーワールドカップと2020年の東京五輪・パラリンピックがある。

国際オリンピック委員会と世界保健機関は、「たばこのない五輪」の開催を推進している。最近の開催国は罰則を伴う法規制によって受動喫煙対策を強化してきたのだ。

飲食店内は原則禁煙。違反すれば過料30万円以下

厚生労働省は3月1日、今国会提出の健康増進法改正案の原案を公表した。

原案では、未成年や患者が利用する小中学校や医療機関は敷地内全面禁煙にするとした。大学や運動施設、官公庁なども禁煙で、喫煙室の設置も認めないとしている。

普及している電熱式「IQOS(アイコス)」など電気加熱式たばこも健康影響を判断し、影響があれば規制対象とする方針だ。

レストランやラーメン店などの飲食店では、喫煙室の設置を認めた上で、建物内は禁煙。

しかし、床面積30平方メートル以下のバーやスナックなど小規模な酒類提供の店は、妊婦や未成年者の「利用が想定しにくい」として規制の対象外とした。

違反した場合は、喫煙の中止や退出を指導。また、悪質で命令に違反した場合には、30万円以下の過料に処するとしている。

喫煙禁止区分を守らない飲食店などの施設管理者は50万円以下の過料としている。

厚労省は今国会に健康増進法改正案を提出し、2019年のラグビー・ワールドカップ前の施行を目指す構えだ。

業界からは反発も

本法案に対し、飲食店業界から反発の声があがっている。

全国生活衛生同業組合中央会や日本フードサービス協会などの5つの団体は1月12日、「受動喫煙防止強化に対する緊急集会」を開いた。

日本フードサービス協会の菊池唯夫会長は「この強化案の方向性に異論を唱えているわけではない。多様性が魅力の産業内で同質の規則を設けるのは乱暴ではないか?」と疑問を投げかけた。

2月28日には、民進党の分煙を推進する議員連盟が集会を開き、政府の禁煙強化に反発。集会には、飲食店の経営者なども出席した。

浅草おかみさん会の富永照子会長は「ビルの上にあるバーもたばこを吸っちゃいけないからといってエレベーターで下に降りてきて吸うんですか。お客帰っちゃいますよ」と反対した。

また、自民党の一部などからも反発の声があがっている。

JTの見解は?

今回の改正案についてたばこの製造、販売を担う最大手「日本たばこ産業(JT)」はどのような見解なのか?

BuzzFeed Newsの取材に答えた。

「当社は意図せぬ受動喫煙の防止に向けた対策には賛成しており、これまでも分煙推進を始めとして、さまざまな受動喫煙防止の取り組みを実施してきました」

「しかるに昨今の報道によると、今般の法案は、さまざまな業種業態の施設管理者や事業者の実情が必ずしも十分に考慮されない厳格な規制をかける内容であり、合理的かつバランスの取れたものになっていないことを危惧しております」

こうも述べる。

「当社としては、受動喫煙防止対策の推進にあたっては、たばこを吸われる方、吸われない方および各事業者の多様性・自主性が尊重され、それぞれが『自由に選択できる』仕組みとなることを強く要望しております」

もし、法案が通った場合のたばこの売り上げへの影響は想定しているのか?

「政府や与党での法案審議がまだ不透明な状況であり、現時点で事業影響を申し上げるのは時期尚早と認識しております」とし、今期見込みにも織り込んでないと話す。