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小池百合子知事は「女を諦めていないファッション」 着こなし術を分析する

あのスカーフの意味は?

「小池百合子さんのファッションはひとことで言えば『戦略的』。“硬さ”と“しなやかさ”をうまく使い分けています」

そう分析するのは、ファッション・クリエイティブ・ディレクターで「小池百合子式 着こなしの黄金ルール」の監修も務めた軍地彩弓さん。

BuzzFeed Newsは、東京都の小池百合子知事の「ファッション戦略」を軍地さんに解説してもらった。

男に媚びないファッション。

小池氏の着こなし術を、軍地さんはこう解説する。

「しっかりとパブリックのルールに乗っ取っていますよね。硬い会見ではテーラードジャケットやタイトスカート、ワイドパンツ。華やかな場ではスカーフを取り入れたりなど、随所でコーディネートを間違わないなと思います」

軍地さんいわく、女性政治家のファッションは、男勝りにいく方法と、男性に媚びる選択肢しかなかったという。

「媚びる方はド派手なカラースーツなどでホステス的なスタイルになりがち。かといって、男勝りになりすぎると高圧的な印象を与えてしまう。そんな中、小池さんはジャケットメインですが、色や柄、素材などでしなやかさも兼ね備えています。男性にも女性にも寄らないコーディネートです」

6月20日の豊洲市場に関する記者会見を例に挙げてみよう。小池氏は深緑の比較的に地味めなスーツで登場した。

重要な会見の場だ。ジャケットスタイルは当たり前。しかし、胸元には“小池ファッション”の象徴ともいえるスカーフ、ネックレスを取り入れている。そうすることで、硬くなりすぎず、柔軟なイメージを与える。場面場面での立ち位置を計算し尽くしたコーディネートだ。

小池氏は「女を諦めていないファッション」

また、軍地さんは「小池さんは女を諦めていないファッション」とも分析する。

「小池さん世代の女性政治家だと、海外ではメルケル首相や朴槿恵前大統領、ヒラリー氏などがいますね。彼女たちのコーディネートを見ると、どなたもウエストをマークしていません。これはお腹のお肉を隠すためですが、くびれは女性性の象徴でもあります。それを隠すことは、ある意味“女を諦めたファッション”と言えます」

対して小池氏はジャケットやタイトスカートでXラインを強調し、ウエストを隠さない。さらにインナーに鮮やかな色を持ってくることで強調される。

決してそれが「セクシー、女の性を売りにしている」というわけではない。

「女性性の使い道といいますか、女性は言葉で解決する力があると思うんです。それがイコール小池さんとは限りませんが、ある程度、いきり立ったりせず、話し合って解決するのではないかと」

“デコルテ見せ”の意図は?

小池氏のコーディネートで特徴的なのは、デコルテ見せ(首筋から胸元にかけての部位)、スカーフ使いもある。

これにも戦略的意図があると軍地さんはいう。

「50、60代になると隠すところが増えて見せるところが減っていくんです。しかし、デコルテは比較的ずっときれい」

「デコルテを見せることで懐を開いている印象を与えます。小池さんの場合、豊洲問題で築地市場の方たちと直接話す場が多いですよね。懐が詰まっている人と、開いている人ではまったく印象は違います。そこにシフォン系のスカーフを加えることで、より柔らかく胸襟を開いている印象を与えます。『懐柔』といいますか」

総じて、このようなパブリックイメージの作り方は、キャスター出身の強みではないかと軍地さんは考察する。

蓮舫氏、稲田氏…。コーディネートの“痛い”例

小池氏だけでなく、民進党の蓮舫代表、稲田朋美防衛相のコーディネートも考察してもらった。

同書では蓮舫氏は“女っぽさ低ゾーン”に属しており、稲田氏は“女っぽすぎゾーン”になっている。

「蓮舫さんは、グラビアアイドルをやっていただけにきれいですよね。しかし、首筋を出しすぎて、引きつっている印象を与えてしまいます。あと最近ではみられませんが、襟を立てるファッションもありましたが、襟を立てる行為自体は威嚇なので、相手に好印象は与えません」

また昨年9月28日にあった初の代表質問時のコーディネートにも言及。

この日、蓮舫氏は首元と袖口に装飾が施されたノーカラージャケットを纏っていた。しかし、これはパーティー用でパブリックな場にはふさわしくないという。

パブリックルールで、ここまで華やかなものは、基本は夕方5時以降に着用するものとのこと。

過去に網タイツやミニスカート姿が言及されていた稲田氏はどうか。

「地元福井県の鯖江のメガネや、SOMARTA(ソマルタ)※の網タイツなどメイドインジャパンを着ようとする努力はわかります。しかし、それがパブリックな場でふさわしいかといえば、ふさわしくはないです」

※日本のファッションブランド。網タイツの素材に福井産を使用している。

「いっときはどうかと思うファッションが多かったですが、最近は落ち着いた印象です」と軍地さん。

ファッションに表れる「時勢」への感度。

東京都議選は7月2日の投開票に向け、各選挙区で候補者による選挙活動がされている。有権者が見るべきファッションのポイントなどはあるのか。

「日本では、政治家がファッションにお金をかけることは叩かれる風潮にあります。しかし、ファッションによってその人のキャラクターだったり思想だったりが表れるので、言葉だけでは伝わらない内面を想像することができます。また、候補者はそれだけファッションが大事ということも意識しないといけません」

そのなかで重要なのが現代性だ。ファッションは時代性とイコールの関係である。いまの人たちと合っているか、どのようなコミュニティに属しているか、いまの時勢を見ているかが顕著に表れるのがファッションやメイクだ。

「流行っているものを着ないといけない訳ではないです。いま、どういう人たちがどういう服を着ていて、その候補者がどのような人たちにリーチしたいか、どういう役割を求められているかを判断できているかがわかります」

わかりやすく例えるならば、「若者の声を聞きたい!届けたい!」と高らかに言っている候補者が80年代の格好をしていたら、疑問に思わないだろうか。スマホは使えるのだろうかと若い人たちは思わないだろうか。

「あとは客観視できているかどうかも大切です。人の上に立つ人は客観視する力がないといけません。華美な自己顕示欲が出ていないかというのも、選挙ポスターや演説からにじみ出てきます」

ファッションはファクターである。周りをみる力、トレンド(時勢)を読む力がファッションに表れる。それは政治の力にも通じるだろう。

たかがファッション、されどファッション。侮ることなかれ。