ナチス思想を唱導する人間なら殴ってもいいのか——。そんな問いを突きつける動画が1月21日にアップされ、物議を醸している。
映像が撮影されたのは、1月20日(現地時間)のワシントンDC。トランプ大統領が就任した日だ。
街頭でインタビューに答える男性。そこへ黒っぽい服を着た男が殴りかかった。男性はよろめき、男はそのまま逃げ去った。
極右の指導者を殴打
殴られた男性はリチャード・スペンサー氏。極右運動「オルト・ライト」を率いる中心人物で、白人は「太陽の子」で有色人種より優れ、アメリカは白人のものだと主張する。「平和な民族浄化」を訴える。
スペンサー氏は昨年11月、ナチス式敬礼を模してトランプ大統領を礼賛した。「ハイル・トランプ!」と叫ぶ様子が報道されて、注目を浴びた。
「オルト」は「オルタナティブ(Alternative)」の略。「オルト・ライト」は「代替する、別の」「右翼、右派」といった意味になる。もともと「新保守主義に反対する右翼」を指したことに由来する。スペンサー氏が造語した。(詳しい記事はこちら)
渦巻く賛否
ナチス思想を唱導する人間なら殴ってもいいのか。だめなのか。賛否を巡って、Twitter上で様々な意見が交わされている。
「『殴れ』というのは、反ナチスの基本。問題なし」
「ナチスを殴るのが悪いと言うのは誰だ? ナチスを殴るのは最もアメリ〜カ的なこと。キャプテン・アメリカもやっている!」
「これがナチのすることだ。殴打で十分かが問われるべきだ」
「言論に対する暴力を是認するのは、恐ろしいまでに非アメリカ的だ」
撮影の背景
論争の元となるビデオは、オーストラリアの公共放送ABCが撮影した。トランプ大統領に対する抗議デモを取材中だった。
BuzzFeed Newsは、取材したゾエ・ダニエル記者に話を聞いた。
同記者によると、撮影前、スペンサー氏は同じ男にすでに殴られていた。それを見たダニエル記者がスペンサー氏に話かけ、現場に来た理由などをインタビューしていたという。
その最中に再び殴られたのが冒頭の映像だった。ダニエル記者はスペンサー氏が大丈夫か確認し、二人は話を再開した。だが、身の危険があってはいけないと取材を切り上げたという。
インタビューした理由をこう話している。
「情報を伝達する人間としての私たちの仕事は、人々と話し、その見方を理解しようとすることです。だからこそ、ありとあらゆる違った視座を持つ人たちと会話をするのです」
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