トランプ政権誕生→さっそくの嘘→あの名作が全米ベストセラー1位に

    「嘘は歴史へと移行し、真実になってしまう」

    ジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」が米アマゾンでベストセラー本1位になっている。トランプ大統領の報道官がついた嘘について、大統領顧問が「オルタナ・ファクトだ」と解説した後に急上昇した。

    ことの始まりは1月21日夜(現地時間)。ショーン・スパイサー大統領報道官が初の記者会見で、大統領就任式に集まった人数が「過去最多だ」と述べたことだった。

    テレビ番組の司会者から、なぜ嘘をつくのかと問われたケリーアン・コンウェイ大統領顧問は「オルタナ・ファクト(Alternative Facts)を示したんですよ」と切り返した。

    Alternativeは「代替する、他に取りうる」という意味。オルタナ・ファクトで、「代わりの事実」「別の事実」といった訳語になる。

    この後、#AlternativeFactsはTwitterトレンド入りし、小説「一九八四年」が引き合いに出された。(詳しい記事はこちら

    嘘が真実になる

    「一九八四年」は全体主義国家が支配するディストピア小説。「ビッグ・ブラザー」率いる党が人々の思考を監視する。過去は都合のいいように書き換えられ、書き換えられたことも否定される。

    「誰もが党の押し付ける嘘を受け入れることになれば——すべての記録が同じ作り話を記すことになれば——その嘘は歴史へと移行し、真実になってしまう」(「一九八四年」早川書房

    国民は「知っていて、かつ知らないでいる」という矛盾した「二重思考(doublethink)」を求められる。

    監視社会を告発する代表作品で、東西冷戦時代には全体主義を批判するバイブルとして広まった。巨大な監視システムというモチーフは、その後の様々な小説や映画に影響を与えた。村上春樹の小説「1Q84」にも痕跡が見られる。

    人気コメントは

    米アマゾンでは「第45代米国大統領にぴったりの入門書」というカスタマーレビューがトップになっている。1月23日に書かれ、298人が「役に立った」と反応した。

    「今日、ケリーアン・コンウェイが、わたしたちはオルタナ・ファクトを提供されていると発表した。過去を塗り替え、現在をコントロールしようとしているようだ」

    【関連記事】