政府は12月21日午後、「高速増殖炉もんじゅ」の廃炉を正式に決定した。
1. これまでに投じた予算:約1兆2千億円
建設費は約5900億円。もんじゅの出力は28万キロワットだが、一般的な原子力発電所(出力100万キロワット)の建設費の約2倍だ。
日本原子力研究開発機構はこの理由について、もんじゅが「研究開発の中間段階の原子炉」であり、「経済性の見通しを得ることではなく、高速増殖炉で安定した発電ができることを実際に確認することに主眼があった」ため、としている。
2. これまでの稼働日数:22年間で250日
1985年に建設工事が始まり、1994年4月に初めて臨界に達したもんじゅ。
巨額の建設費がかかったのに、この22年間で稼働したのはわずか250日だ。
1994年の臨界後は205日間運転をし、送電も開始した。しかし翌年12月、冷却材のナトリウムが漏れ出す事故が発生し、運転は中断した。
改造工事などを経た2010年5月には試運転を再開し、臨界を達成。今度は45日間運転したが、8月に炉内中継装置の落下トラブルが起き、再び中断を余儀なくされた。
その後、2013年には原子力規制委から事実上の運転禁止命令も受けた。
3. 1日の維持費:5千万円
4. 再稼働費用:5400億円
もんじゅを再稼働するためには、耐震化などの対策が必要だった。
文部科学省の試算では、福島第一原発事故後に強化された原子力規制委の新規制基準が適用された場合の経費は1千億円以上。
燃料をつくる茨城県東海村の工場の対策も欠かせず、準備期間は最低8年を要する。維持費やその後の運転費も含むと、5400億円かかる見通しだ。そのために廃炉が選択された。
5. 廃炉費用:3750億円
6. 日本のプルトニウム保有量:約47.9トン
日本国内には10.8トンの、国外(イギリス、フランス)には37.1トンのプルトニウムが保管されている。
核兵器を持っていない国のなかでは、最大だ。プルトニウムは数キロあれば核兵器をつくることができるため、あまり持ちすぎてしまえば、国際社会から懸念されてしまう。
7. 放射性廃棄物を地中に埋める期間:10万年
もんじゅが廃炉になると、「核燃料サイクル」が破綻する。
プルトニウム消費先の一つである「もんじゅ」が廃炉になると、一体、どうなるのか。プルトニウムは普通の原発の「プルサーマル発電」で使うこともできるが、それだけでは47.9トンの消費は追いつかない。
そのため、政府は「もんじゅ」に代わる高速炉開発を今後も進める方針だ。2018年をめどに、開発の工程表をまとめる。
松野博一文部科学相は会見で、「もんじゅ」について「私自身は一定の成果だったと判断している」と述べ、「結果責任へのけじめ」をとると表明した。
約5カ月分の大臣給与と、賞与を自主返納するという。