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離党ドミノでガタガタの民進党 都連会長が小池知事への期待を語る理由

離党者が相次ぐなか、都民ファーストに対する候補者の「最大の供給源」になっているとの自虐も飛び出した。

東京都議選が近づくにつれ、徐々に存在感が出ている「都民ファースト」。自民党は「烏合の衆」などと牽制するが、小池百合子知事が代表に就任後、勢いを増している。

そんな中、国政における「野党第1党」の民進党は世論調査でも一桁台を推移。離党者も相次ぎ、首都決戦を前にすでにガタガタだ。

そんな民進党の松原仁・都連会長が6月19日、日本外国特派員協会で会見を開き、直面する厳しい現状に言及、謝罪の言葉も飛び出した。

相次ぐ離党者は、都民ファーストへ

「多くの離党者がでたことは大変申し訳なく思っており、極めて無念であります」

特派員らが集まった会見で、厳しい表情でそう語った松原会長。都民ファーストの勢いに巻かれ、離党者が相次いでいることに言及した。

民進党の都議会議員候補予定者は24人。「本来であれば十数名の上乗せが予定されていた」といい、実際に16人が離党しているのが現状だ。

いずれも、都民ファーストから公認か推薦を受ける。選挙の前から民進はガタガタになっているとも言える。

6月6日には、民進党役員室長の柿沢未途衆院議員の妻・柿沢幸絵都議も民進を離れて都民ファーストに支援を求めているほどだ。柿沢氏ら2人は除名処分となった。

松原会長によると、約160人ほどいる市区町議のうち数分の1の議員が都民ファーストに鞍替えした公認・推薦候補を応援しているという。

また、民進党の最大支持母体である連合東京は、都民ファーストとも政策協定を結んでいる。

厳しい世論調査結果

松原会長は、街頭演説時にチラシを受け取る人が以前より増えたことから、「民進党に対する雰囲気は変わってきている」「期待している人が声を上げ始めた」ともいうが、状況はそんなに楽観できるものではない。

たとえば、朝日新聞が6月3〜4日に実施した世論調査では、「今、都議選の投票をするとしたら」との設問で自民党と都民ファーストが27%と並んだのに対し、民進党は3番目の8%だった。

時事通信が6月16日に掲載した調査ではより厳しい数字だ。自民党が20%、都民ファーストが19%。民進党は3%で、公明党(6%)、共産党(5%)に次ぐ5番目に落ち込んだ。

支持率が下がり、離党者が増え、さらにそれが支持率の減少につながる。そんな点にも、松原会長は言及した。

「こういった離党ドミノがおこった理由には、民進党の支持率の低さがあるのは間違いない。そうした厳しい状況にある中、多くの候補者が離党するということは、国民による党への安心感を喪失させたことになる」

アピールする「都民ファーストとの違い」

では、そんな状況で迎える選挙をどう戦うのか。

松原会長は今回の選挙が「都民が都政の中身を問う選挙」と指摘。都民ファーストとの違いとして、議会の「チェック機能を保つことができる野党」であることをアピールした。

「トップである知事に対しチェック機能を持つのが議会の要素です。しかし、都民ファーストは小池百合子さんに反対をしない人たちが集うもの」

「言葉が行き過ぎかもしれませんが、知事と一体化している。一方で我々は時として反対する。批判的な立場で議論することができる。都政の大掃除をする政党、は民進党が目指す」

また、国政において野党第1党であることにも言及。「国政と都政を一体化して議論できる」と述べた。

「自民党と戦いうる唯一の国民政党として認識されていると思っています」

6月18〜19日に公表された各社の世論調査では、安倍政権の内閣支持率が大きく下落している。読売新聞で49%と前回調査12ポイント下落。毎日新聞では36%と、前回比10ポイント下落だった。

しかし、いずれも民進党の政党支持率には大きな変化がない。

「民進党が下がったポイントを吸収できていないのは反省点。都議会においては、都政のチェックをしっかりし、安倍政権に関する都民の怒りを共有するということを徹底的にやる」

「昔から『太陽は東から昇る、りんごは木から落ちる、権力は腐敗する』と言われております。国会が閉会してしまったが、今の政権が腐敗しているということを国民に知らしめるため、努力していかないといけない」

都民ファーストは「継続」しない

会見では都民ファースト批判も飛び出した。

「多くの地域の有権者に話を聞くと、都民ファーストが果たして10年持つかという議論が聴こえてくる。いまは破竹の進撃をしているが、小池さんひとりに頼っていたら、継続的な政党にはならないと思います」

自民党からも11人が鞍替えし、「烏合の衆」(下村博文都連会長)などとの指摘がでている都民ファースト。松村会長は「多くの候補者を擁立しているが、3つのカテゴリーから集まっている」と指摘した。

「最大の供給源は民進党の東京都議候補予定者だと思っている。2つ目は自民党の市区町村議員。3番目は政治におけるアマチュアです」

「この3つが入った組織体が永続するには、極めて高度なマネジメント能力が必要になる。政党が永続化するには、たとえば国政に進出することを明確にし、既存の国会議員を入れるような大胆な方法をとらない限り困難だと思う」

批判の一方で、エールも

批判もあった一方で、小池知事が進めてきた「東京都の情報公開」と「予算のコストカット」の姿勢を評価するといい、エールも送った。

「しばしば昔から東京は13兆円の予算を持つ伏魔殿と言われてきた。その大掃除をしようという知事の方向性に関しては強く支持する」

「2020年の東京オリンピックに向けてどのようにこの東京という街を売り出していくか、というキャンペーン戦略が今後は大切になる。東アジアにおける東京の立場をつくるために、小池さんには大いに頑張ってもらいたい」

また、小池知事が今週中にも表明すると報じられている築地市場の豊洲移転についても、評価する姿勢をみせた。民進党は「環境基準を満たす」という条件付きで移転賛成の立場にいる。

「小池都知事の最終判断を明確には聞いていないが、(汚染物質を)環境基準以下に満たす形で豊洲移転をし、築地を伝統として残す。つまりは両方を生かしていくならば、我が党が都議会で主張していたことが実現することになる」

なぜ、都連会長は小池知事を批判しないのか

支持率で都民ファーストや自民党から大きく離された民進党。自民のように小池知事との対決姿勢を深めるわけでもなく、むしろ、期待の姿勢を示すのはなぜか。

それは、都民ファーストとの連携も視野に入っているからだ。

自民と小池知事が激しく対立する都政。国政で自民と争う民進にとってより近い存在は知事率いる都民ファーストだ。

松原会長は会見で、都民ファーストが連合東京と政策協定を結んだことに触れ、「連合を通して同じ方向性を向いていると言うことができる」とも述べた。

「先のことはわかりませんが、方向性は同じであるし、都民ファーストと一定の連帯関係に入る可能性はある」

しかし、自らが「供給」してしまった離党議員がいる政党と協力関係を結ぶことができるのか。松原会長は、こうも述べた。

「離党していった候補予定者は誰一人として民進党が嫌いになったから離党したわけではなく、危機感からそういう行動をとった。そこにはさまざまな未来への可能性がある」

逆に言えば、都民ファースト、自民から大きく離されている民進にとって、そこにしか未来がなかったとも言える。


BuzzFeed Newsでは6月23日告示の東京都議選に向け、【そもそも「都民ファースト」とは何なのか。党幹部が語るその意味】との記事を配信しています。