在日コリアンの人たちを標的にした「ヘイトデモ」が予定されていた川崎市で、市当局がデモの集合場所とゴールになっている公園の使用許可を出さない方針を、5月30日夜に主催者の男性に通達した。BuzzFeed Newsの取材に川崎市が明らかにした。
行政がヘイトスピーチを理由に管理する施設の使用を許可しないのは、5月24日に「ヘイトスピーチ対策法」が成立して以降、初めて。
対策法は地方自治体に対しても「地域の実情に応じた施策を実施する」よう求めており、川崎市にも対応を求める声が集まっていた。
これまで計12回開催
焦点となったデモは、6月5日に予定されていた「川崎発!日本浄化デモ第三弾!」。集合場所とゴールとして、市が管理する公園の使用申請が出ていた。
主催する男性は2013年5月から計12回、同様の申請を川崎市にしたうえで、在日コリアンの人たちが多く住む地域を中心に、ヘイトスピーチを交えたデモを続けていた。
表現の自由との兼ね合いは
BuzzFeed Newsの取材に対し、差別などの問題に対処する川崎市の市民文化局人権・男女共同参画室の担当者は「対策法に基づいて直接デモを中止にすることはできません。そのため、公園の使用について決めた条例が適用できるのか、市役所内部で検討を重ねてきました」と話す。
行政がデモに「不許可」の判断を下すことは珍しい。憲法では、「表現の自由」が認められているからだ。
成立した対策法も、ヘイトスピーチのない社会を実現するように求めていく、いわば「理念法」。ヘイトを直接規制したり、罰する規定はなく、ましてや憲法には歯が立たない。だからこそ、その効果を疑問視する専門家もいた。
現行条例を適用
それでは、市の判断の根拠は何なのか。
川崎市は「都市公園条例」で「公園の管理に支障がある行為」などを禁止行為に指定している。市には人口の約2.3%、3万人の外国人が暮らしており、公園を使用していることから、デモによって彼女ら彼らに「不安感を与えること」も、その規定に触れると判断したという。
もちろん、担当者も「憲法で規定された『表現の自由』との兼ね合い、調整をどうつけるかが大きな課題だった」と吐露する。「今回、対策法が制定されたことによって、ヘイトスピーチに該当する言論については、公の場で認められる言論ではないことが明確となったと理解しています」
今後の対応は
全国各地では今後もデモが予定されている。愛知県の大村秀章知事も5月30日の記者会見で、県施設の利用を不許可にする方針を示しているが、川崎市の対応は、一つのモデルケースになるのか。注目される。
川崎市長「市民の安全と尊厳を守る
福田紀彦市長は5月31日午前、下記の通りコメントを発表した。
昨日、富士見公園ふれあい広場及び稲毛公園に対する6月5日の公園内行為許可申請について『不許可処分』とし、申請者に通知を発しました。
本市は、違いと豊かさを認め合いながら発展してきた多文化共生のまちであり、これまで市内でヘイトスピーチデモが行われてきたことは誠に遺憾であり、大変残念なことでありました。
今般、『本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律』の成立により、国の意思が明確に示されたことを受け、本市としても、地域の実情に応じた施策を講じるべく様々な御意見を伺いながら、慎重に検討を重ねた結果、当該申請者が、過去において、成立した法で定める言動等を行ってきた事実に鑑み、今回も同様の言動等が行われる蓋然性が極めて高いものと判断し、不当な差別的言動から市民の安全と尊厳を守るという観点から、このような判断に至りました。
Update
川崎市長のコメントを追加しました。