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安倍首相の「冒頭解散」 なぜ問題視されているのか?

戦後初の「沈黙の解散」へ

安倍晋三首相が、9月28日に開会する臨時国会冒頭にも衆議院を解散し、10月に総選挙をする方針を検討している。

しかし、野党のみならず自民党内からも、こうした手法に批判が集まっている。何が問題視されているのか。

今回の「解散風」が吹き始めたのは9月中ごろ。各種報道が「臨時国会の冒頭解散」を報じたことで明らかになった。その風は一気に強まり、各党が準備に奔走している。

そもそも、臨時国会は野党が森友学園問題や加計学園問題など、山積する「疑惑」や問題に対し、憲法に基づいて開会を求めていたものだ。

しかし、3ヶ月が経ってようやく開会が決まった直後に、今度は「冒頭解散」の方針が報じられた。

その背景には、7月の内閣支持率急落に繋がった各種疑惑の追及を避けるため、との見方もある。それゆえ、野党からは「大義なき解散」「疑惑隠しの解散」との批判があがっている。

新内閣への質疑がないのは戦後初

衆院事務局によると、過去に国会召集日に解散した例は3回しかない。


  • 1966年12月:通常国会、佐藤栄作内閣による「黒い霧解散」
  • 1986年6月:臨時国会、第二次中曽根康弘内閣による「死んだふり解散」
  • 1996年9月:臨時国会、橋本龍太郎内閣による「小選挙区解散」

しかし、報道によれば「首相の所信表明演説と質疑がないままの冒頭解散」という可能性も浮上しているという。

つまり、このままでは8月にできたばかりの「仕事人内閣」(安倍首相)が何も語らないままに衆議院が解散、選挙後には内閣が総辞職することになる。

衆院事務局によると、過去3回の冒頭解散はいずれも新内閣発足直後ではない。それ以前の国会で首相や担当大臣による演説、質疑が行われている。

つまり今回のように、改造も含む新内閣が国会で口を開かずに解散した例は、新憲法下では一度もないことだといえる。

これでは、戦後初の「沈黙の解散」毎日新聞)ではないかーー。そんな声も飛び出している。

身内から批判、疑問の声

こうした動きには身内である自民党内などからの批判も相次いでいる。たとえば、山本一太・元沖縄北方担当相は自身のブログでこう疑問を投げかけている。

ちゃんとした説明がないまま選挙をやったら、それこそ「国民をバカにしている!」と思われてしまうだろう。この事態だけは、絶対に避けねばならない。

国民の目には「安倍総理が国会での疑惑追及を逃れるために解散する」みたいに映る。「選挙に勝つためには何でもやるのか」という批判も起こるだろう。

また、石破茂・元幹事長が「本当に国民に信を問う時に解散すべきだ」と述べているほか、元衆議院議長の河野洋平氏はこう語っている

安倍さんは問題について丁寧に説明すると言ってきたのに、一度も丁寧な説明をしないで冒頭で解散する。これは私には理解できませんね

野党は「国民をバカにしている」

野党の場合はどうか。民進党の枝野幸男代表代行はTwitterで「少なくとも予算委員会質疑が不可欠」と批判した。

所信表明演説だけ行って、本会議質疑すらやらずに解散するとの報道が出ています。自分の言いたいことだけ言って、他人の言うことの聞く耳は持たないという安倍総理の本質が表れています。国民にそれぞれの主張を伝えた上で信を問うという基本からは、少なくとも予算委員会質疑が不可欠です。

一方、自由党の小沢一郎党首は、安倍首相が6月の会見で「国民に丁寧に説明したい」と話したことを引き合いに出し、「国民に説明する気なんか更々ない。明らかに国民をバカにしている」と投稿した。

「国民に丁寧に説明したい」。総理は確かにそう言った。そして冒頭解散へ。これが答え。質問すらさせない。国民に説明する気なんか更々ない。明らかに国民をバカにしている。「質疑なんていらない!」「答弁は御免だ!」という最悪の総理を生み出しのも選挙なら速やかに退場していただくのもまた選挙。

こうした批判に対し、菅義偉官房長官は「解散は総理の専権事項」と述べるのみ。

自民党の二階俊博幹事長は野党からの「森友、加計学園隠し」との批判に対し、このような発言をした。

「野党がおっしゃるのは自由だ。われわれはそんな小さなというか、そういう問題を隠したりすることは考えていない」

安倍首相の考えは…

当の安倍首相は解散について、明確にコメントをしていない。

9月18日に国連総会に向かう際、羽田空港で報道陣に対し、「いちいち答えることは控えたい。帰国後(22日以降)に判断したい」と述べるに止めているのみだ。

ただ、9月12日の日経新聞の単独インタビューには、解散について「まったく考えていない」と答えている。数日で、どのようにしてその判断が変わったのだろうか。

各紙は、安倍首相が選挙の争点に「消費税10%増税の使途変更」を置こうとしていると報じている。

2019年10月に引き上げられる消費税の増収財源の使い道を、借金返済から幼児教育の無償化など教育、子育て支援に充てたいとの考えだ。また、憲法改正や北朝鮮対応の重要性なども合わせて訴えていく方針だ。

ただ、「増税の使途変更」については、かねてから同様の意見を述べてきた民進党の前原誠司代表から「野党の考え方とかぶせてきて、争点隠しをしている」との声も出ている

25日に会見へ

安倍首相は今回の解散を、自身が目玉に置こうとしている「人づくり革命」になぞらえて「人づくり解散」と位置付けるとの報道(日本テレビ)もある。

朝日新聞によると、衆院選一度にかかるお金はおよそ600億円にのぼる。果たして、「人づくり解散」ないしは「沈黙の解散」に、どこまでの必要性があるのだろうか。

9月25日にも会見を開くという、安倍首相の説明が待たれる。


BuzzFeed Newsでは【安倍首相、突然の「解散総選挙」 新聞各紙の報じ方を比べてみると…】との記事も掲載しています。