福岡県警がヘイトスピーチを止めた? ネットに広がった噂の真相は

    目撃情報に対し、県警は否定

    対策法の効果があったのか?福岡県警が在日コリアンの人たちに対するヘイトスピーチの街宣活動を中止させたと話題になっている。

    5月24日に成立した「ヘイトスピーチ対策法」は「差別的な言動の解消に向けた取り組みの推進」を目的として成立したが、具体的な禁止規定や罰則はない理念的な法律だ。県警はどのようにヘイトスピーチを止めたのか。BuzzFeed Newsは関係者に取材した。

    開始30分で終了

    問題のデモは、5月29日午後、福岡市繁華街の天神で開かれていた街宣活動。「朝鮮学校への補助金を廃止せよ!」(早乙女会主催)と題されており、撮影された動画からは、数人が参加している様子がうかがえる。


    「日本人に嫌がらせしてんのは朝鮮人だからな!」
    「韓国人、朝鮮人は出て行ってください!」

    主催者はそんな言葉をマイクを通じて語り続ける。カウンターデモの人たちから「ヘイトスピーチ辞めろ」の怒号も飛ぶ。福岡県警の担当者が街宣にかぶせるように、「市民の皆さんは十分注意して通行してください」と呼びかけている。

    街宣は予定した1時間よりも早く、30分間で終わった。

    警察が十分に通行を注意してくださいと周知してくれています #0529福岡ヘイト街宣を許すな

    県警がデモを止めた?

    この中断に対し、「街宣、14:30にて終了。福岡県警が中止させたとのこと。皆さん、お疲れ様でした」とするツイートが出現。すぐに拡散され、「福岡県警すごいな。驚いた」「まずは全面支持で」などと福岡県警を賞賛する声が相次いだ。

    しかし、具体的な経緯は不明なままだ。街宣を見ていたある目撃者は、BuzzFeed Newsの取材に対し、「『今日は早く切り上げる』と言葉が弁士からありました。なんで街宣が今終わったの?って感じでした」と語る。

    「早乙女会側に県警がどんな言葉をかけたのかはわからないですね。書くにははばかられるような朝鮮の方へのヘイトを早乙女会側が言ったところで中止になったようです」

    別の目撃者も言う。

    「すこし離れたところから見ていたのですが、何度かあからさまなヘイトスピーチがあり、カウンターが抗議の声をあげていました。3度目かくらいに突然街宣が中止に。そのときは雨で天候が悪かったからかと思ったのですが、あとでカウンターの方に警察の判断だったと聞きました」

    福岡県警は否定

    BuzzFeed Newsは福岡県警に目撃情報が事実かを確認した。文書による返答は以下の通りだった。

    ーーデモを中断させたのは事実でしょうか
    警察が中断等を呼びかけた事実はありません。主催者が自主的に中断したものだと承知しております。

    ーー6月19日に同じ場所で開かれる同様の街宣活動や、今後の申請への対応は
    法令に従って適切に対応いたします。

    割れる対応、そして川崎市は「不許可」に

    5月29日には、大阪や名古屋でも同様の街宣活動やデモが開かれていたが、「中断」があったのは福岡だけだった模様だ。この情報はインターネット上に広がり、「福岡県警がいったん始まったヘイトデモを停止させる大英断!!」とするまとめも作られた。

    一方、6月にヘイトデモが予定されていた川崎市は5月31日、デモの集合場所とゴールになっている公園の使用を不許可にしたことをBuzzFeed Newsの取材に明らかにした。愛知県も今後、同様の対応を取る方針だ。

    福岡のケースの真偽は定かではないが、対策法の効果は少しずつ波及している。