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「LGBTへの差別なくして」新しい法律を求める当事者たち 切実な叫び

議員会館の大会議室は熱気に包まれていた。

好きになる人の性別や、自分自身の性別についての認識にもとづく差別をなくしてほしいと訴える院内集会が3月9日、衆議院第一議員会館で開かれた。平日昼だが、会場には300人の参加者が集まった。

与野党の国会議員でつくるLGBT議連のメンバーら12人が会場を訪れ、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの当事者や、研究者らの話を聞いた。

「レインボー国会」と名付けられたこのイベントを主催するのは、当事者や研究者、法律家らでつくる実行委員会。

トランスジェンダーの歌手・麻倉ケイトさん。

「幼いころに、大きくなったらお母さんのようになれると思っていました。でも、小学校に入ってから男女に分けられ、違和感に直面しました。男性の身体に閉じ込められて、ガーンとショックを受けました。『なんで私はスカートを履いたらあかんの』と言うと、周りに怒られたり、からかわれたりして、自分の心を隠すようになりました。トイレ問題もありました。先生に心ないことを言われて、すごく落ち込んで、学校を休むような子どもでした。大人になってからもカミングアウトできなくて悩んでいて、自傷行為を繰り返したこともあります。いまはいい理解者に出会って、やっとカミングアウトできました。いまは前向きに生きています。コンサートで訪れた時に、ラオスの教育者が『才能には性別は関係ない』と言っていました。日本もそういう風になってほしいと思います」

「教科書にLGBTをネットワーク」共同代表の室井舞花さん。

「今年度、学生指導要領が改定されます。多様な性を生きる子どもたちに配慮した内容をいれてほしいと活動しています。13歳の時に初めて、女の子に恋をしました。その時、教科書に『誰もが異性に興味を持つ、関心を持つ』と書いてあるのを見て、自分は間違っているんだと印象づけられ、ショックを受けました。それから10数年経っていますが、教科書にはまだ同じ内容が書かれています。そして、自尊心を傷つけられ、自分が間違っていると思う子どもたちがいまも教室の中にいます。それに耐えられないと思って、キャンペーンを立ち上げています。すべての多様な性を生きる子どもたちだけではなくて、さまざまな立場の子どもたちが、自分は自分のままでいいと、安心して育っていくことができる環境を求めて活動していきたいと思っています」

トランスジェンダーの高校教師・土肥いつきさん

「京都で10年間、トランスジェンダーの子どもたちとの交流会をやっていました。おそらく日本で一番、トランスジェンダーの子どもたちと接している当事者です。トランスボーイ、トランスガールが何十人も集まっています。今日は、性同一性障害特例法の変えてほしいと思って来ました。子どもたちに、将来、性別変更をしたかったら、君は実子をつくれない。仮に実子がいたら、子どもが20歳になるまで性別変更ができないんだよ、とは言えないです。将来の夢は何?という質問に、手術という答えは聞きたくないです。あまりにも現在の特例法だと、子どもたちの人生の選択肢があまりにも狭すぎる。そのことを理解していただいて、ぜひ子どもたちのために特例法の『子なし要件』と『手術要件』を緩和してください」

トランスジェンダーの畑野とまとさん

「いまの性同一性障害特例法には、子なし要件、手術要件、離婚要件という重大な人権違反になり得る項目が入っています。性別変更ができる法律のある国で、子なし要件があるのは日本だけです。手術要件を撤廃した国は、ヨーロッパでは18カ国、南米では3カ国、アメリカでは3分の1の州、カナダのほとんどの州、アフリカで2カ国、アジア・オセアニアで7カ国に及んでいます。日本はものすごく遅れた状況です。離婚要件についても、欧米ではほとんど撤廃されています。日本がもし世界に誇れる素晴らしい国だというなら、立ち遅れている人権課題についてご一考いただきたい」

ドイツ証券・共同株式営業部長の柳沢正和さん。

「企業の管理職、そしてゲイ当事者としてお話しさせてください。企業現場で、子どもをもっているレズビアンカップル、違う性のトイレを使いたいと思っているトランスジェンダーたちが、どんどん顕在化する中で、法整備がどうしても遅れてしまっているのが現状ではないでしょうか。LGBTに対する国レベルの考え方が出てこない中で、私たち企業の現場は混乱しています。日本社会が少しでも働きやすい社会になることを願っています」

LGBTなど性的マイノリティは、さまざまな困難に直面している。

ところで、「SOGIハラ」ってなに?

レインボー国会では「SOGIハラ(ソジハラ)」という、新しい言葉が提唱された。

好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)と、性自認(Gender Identity)の英語の頭文字をまとめてSOGIといい、性の多様性を示す言葉として使われている。

「SOGIハラ」は、このSOGIに関連する差別やいじめ、嫌がらせを受けること。また、望まない性別での生活を強いられたり、学校や職場などで社会的な不利益を被ったりすること全般を示す言葉だという。

東京・渋谷区をはじめとする地方自治体で同性パートナーシップの証明制度ができたり、「LGBT」という言葉が広く使われるようになるなど、性の多様性についての議論は国内でもこのところ加速している。

国会内でも、昨年には自民党が、党としての「考え方」を発表。民進党がLGBT差別解消法を提出するなど活発な動きがあったが、その後は停滞している。

参加した議員たちは、それぞれが前向きな言葉を口にしていた。だが、この場に来た議員は、国会議員全体からすれば、まだまだ一部にすぎない。「レインボー国会」は、今後も続けて開催される予定だという。当事者たちの訴えはどこまで届くのか——。