「好きに使ってください。自分に連絡はいらないんで」コロナで混乱の教育現場、人気YouTuberがとっさに取った行動とは

    11月にはテレビ番組「情熱大陸」に出演。「とある男が授業をしてみた」の葉一さんにインタビューした。

    新型コロナウイルスの影響で、全国の学校が長期休校を余儀なくされた。対面授業が当たり前だった教育現場は一変し、オンライン環境の整備が迫られた。

    そんな最中、2012年からYouTube上で授業をする葉一(はいち)さんのもとには、子どもたちや家庭、先生からのSOSが殺到するようになったという。

    チャンネル登録者数120万人を超える人気YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の葉一さんに、当時の状況を聞いた。

    動けない子どもたち

    動画「【10:45まで】今日も休校中の課題でもやりましょう」より / Via youtube.com

    ーー2020年3月に全国の学校が一斉に休校になりました。その時期、葉一さんにどんな問い合わせがきましたか。

    子どもたちと親御さんから、「どうしたらいいですか」「何をしたらいいですか」という問い合わせが集中しました。

    当時の多くの子どもたちは、学校から課題は出ていたんです。めちゃめちゃ分厚い束になったプリント問題を渡されたりとか。

    ただ、あまりに生活が一変したので、戸惑いから動けなくなってしまっている子が多かったんですよね。

    ーー大人でさえ、どうしたらいいか分からなかったくらいですもんね……。

    やらなきゃいけないのことはわかってるけど、なんかやる気が出ないみたいな。だから、自分はすぐに(YouTubeで)生放送をするようにしました。「午前中に1時間、俺と一緒に勉強しようぜ」って。

    子どもたちの生活リズムがなるべく狂わないようにしたくて。ただでさえストレスがかかっている状況で、生活リズムまで狂ってしまうと、気を病んでしまうかもしれない。

    だから、ちゃんと勉強する時間を入れられるように意識しました。

    好きに使ってください

    ▲動画「【教育委員会】学校の先生からの悩みに答えます。」より / Via youtube.com

    ーー2月末には、学校や塾に向けてご自身の授業動画や問題のプリントアウトサービスを事前確認なしで無料で使えるようにされました。(※営利目的での利用は不可)

    先生からの問い合わせが本当に増えたんです。「授業動画ってどうやって撮ればいいですか」「どんな機材を買えばいいですか」「授業動画を使っていいですか」と。

    最初はできる限り個別で返していたんですけど、あまりに増えすぎたので撮り方とかの技術的な相談は、動画でまとめてお答えするようにしました。

    それで、授業動画の利用については、「好きに使ってください。自分に連絡はいらないんで」ってフリーで使ってもらえるようにしたんです。

    突然休校になっていろんなことをやらなきゃいけない状況で、わざわざ自分に確認のメールを送る。それから返事がくるのを待つというワンクッションが、先生にお手間をかけてしまうんじゃないかと。

    些細なことではあるんですが、お役に立てればという思いでした。

    学校の先生に嫌われていた

    ▲ビデオ会議による取材の様子

    ーーご自身の動画や問題をフリーで公開するのは、クリエイターとして勇気のいる行動じゃないですか。

    よく言われるんですけど、実は自分的にはチャンスだと思っていて。今まで学校の先生って、本当に俺のこと嫌いな人いっぱいいたんですよ(笑)。

    ーーYouTubeに授業や教育を持ち込むことに否定的な声がたくさんあったと聞きました。

    そうなんです(笑)。3年くらい前に、講演に呼ばれて学校に行ったんですよ。中学校だったかな。

    呼んでくれた主任の先生は俺のこと大好きだったみたいで、めちゃめちゃ好意的なんです。けど、待合室で待っていたら副校長先生がめちゃめちゃ斜に構えてるんですよ。明らかに俺のこと嫌いだな、みたいな(笑)。

    ーー呼ばれたのに……。

    講演している時も、他の先生方が後ろで腕を組みながらアラを探してやろうみたいな目で見ていて……こういうことが普通にあったんですね。

    でも今、その先生方が自分を頼ってくださってるんですよね。

    ーー8年目でやっと認められた。

    問い合わせをくださるメールの文面から、自分と同じ目線で物事を見てくれていることがすごく伝わってくるんです。

    以前までは「YouTubeの教育」に意見を言いたい、文句を言いたい、とにかく上から物を言ってくるイメージでした。

    けれど今は、「どうしたらいいですか?」と自分と同じ目線で議論していただけるようになった。これはすごい変化だし、めちゃくちゃうれしかったんですよね。

    先生をYouTubeに

    動画「【史上初】校長先生は教育YouTuberをどう見ているのか」より / 神奈川県立川崎北高校の校長先生を務める柴田功さんと対談している / Via youtube.com

    ーー新型コロナウイルスをきっかけに、オンラインに適応した変化が進んでいます。教育の今後について、葉一さんが考えていることはありますか。

    YouTubeで無料で学べるということを、もっともっとメジャーにしていく。これが自分の目標です。

    ちょっと話が変わっちゃうんですが、今、自分の中で学校の先生の社会的地位を向上させたいというテーマがすごくあります。

    ーー学校の先生の社会的地位とは。

    学校の先生が(ニュースなどで)取り上げられる時って不祥事だったりするんですよね。どんどんイメージが悪くなってきてるように感じていて。

    学校の先生ってすごいんです。確かに変な人もいるけど、わかりやすい授業をしてくれる先生もいっぱいいるわけです。でも、それはなかなか取り上げられない。

    だから、第三者の自分が子供たちの目の前にいる先生がすごい人だってことをアピールする。先生がもっと生き生きと授業できるようになったら、授業を受けている子供たちも幸せだと思うんです。

    その好循環を生み出す手助けができたらとは、今すごく思っていますね。

    ーー海外では、学校の先生が葉一さんのようにYouTubeで授業をして、人気になっている方もいると聞きます。

    もちろん、動画の撮り方を教えることもできます。ただ、先生にうちのチャンネルに出演してもらって、教育論を語ってもらうぐらいからでもいいと思っています。

    学校の先生って情報発信の場が全然なくて。子供たちには伝わっていないけど、実は子供たちのことがめちゃめちゃ好き。

    そんな学校の先生の思いを、自分のチャンネルを通してうまく伝えられたらいいな、と思います。

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    葉一(はいち)〉1985年3月11日、福岡県生まれ。高校生の時に出会った恩師をきっかけに教員を目指す。東京学芸大学で小中高の教員免許を取得後、一般企業に就職。営業を経験した後、個別指導塾で塾講師として働く。

    2012年にYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。小学3年生から高校生を対象とした授業動画を投稿し、チャンネル登録者数は121万人を超える。教科は算数、数学、国語、英語、理科、社会(学年により対象教科は異なる)。

    公式Webサイト「19ch」では授業動画をはじめ、テキストの問題集などをPDFで無料配布している。