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ネットカフェで暮らす4000人、居場所はどこに?新型コロナ、東京都の住宅支援は500戸のみ

ネットカフェに休業要請が出た場合、そこで生活する4000人が行き場を失うおそれがある。東京都は12億円を計上し、住居を失った方への一時住宅等の提供を行うと発表。だが、この予算で確保できるのは500戸だけだ。

政府の緊急事態宣言に基づき行われる東京都の緊急事態措置。ネットカフェに休業要請が出た場合、そこで生活する4000人が行き場を失うおそれがある。

東京都は4月6日、補正予算12億円を計上し、住居を失った方への一時住宅等の提供を行うと発表。だが、この予算で確保できる一時住宅は500戸だけだ。

今後さらに、職と住まいを失った人が増加することが見込まれる中、路上生活者や生活困窮者支援を行う現場では、500戸では「全然足りない」と懸念する声が上がっている。

ネットカフェで暮らす人も対象と都知事は言及

小池百合子東京都知事が4月6日、223億円の補正予算で取り組むことを発表した6つの支援策。そのうちの1つが、新型コロナウイルスの影響による失業等に伴い住居を失った方への一時住宅等の提供だ。

小池知事は会見で「今回ウイルスの影響で失業される方が多数出ておられる。住む場所も失ってしまう。そういった方々に一時住宅等を提供する」と説明した。

ネットカフェが休業した場合に行き場を失う4000人も今回の事業の対象となるのかという質問には、「まさしくご質問にありましたようなところで、実は寝泊まりもされておられるという方々がいる。こういった方々が仮の住まい、滞在できる場所を確保することを念頭に置いたものでございます」と回答している。

今回の一時住宅提供の対象には、現在生活保護を受けている人など、新型コロナウイルスの影響を受ける以前から失業していた人は含まれるのか?

BuzzFeed Newsの質問に対して、東京都福祉健康局の内藤淳局長は「今回のことはあくまで、コロナウイルスの関係でお住まいを失った方への措置です。そこに何らか区別をつけることはできないのかなと思っております」と答えた。

12億円、確保できるのはプラス400戸

12億円という限られた予算で都はどこまで対応することを想定しているのだろうか。

都の福祉健康局の担当者は、すでに確保している100戸にプラスして400戸確保し、合計で500戸の一時住宅を用意すると語る。

都はこうした一時住宅の確保を急ぎ対応しており、これまでの取り組みの中で連携してきた先や都営住宅の空室などを活用する方向で進めているという。だが、「まだ契約には至っていない」と担当者は取材に明かした。

東京都では「合計500室確保できるまでは、一旦ビジネスホテルを借り上げる形で対応を予定」しており、「現在、新宿区のビジネスホテル借り上げのめどが立っている」という。

路上生活者の支援団体は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、仕事と住まいを失う人が今後増えると警鐘を鳴らす。そんな中、確保を予定している500戸だけでは、行き場を失うことが予想される4000人に対しても支援の受け皿が足りない状況だ。

都の担当者も「昨日の会見で発表された補正予算でできる対応では足りない。足りない部分は増やさざるを得ない」と認めている。

支援受けるため、収入減少の証明も?

担当者によると今回対象となるのは、「都内に直近6ヶ月以上滞在している方たち」。「すでに路上生活を送っている方は別のホームレス対策の支援で、生活保護を受けて生活している方もそちらの仕組みで対応する」という。

一方で、「ネットカフェで新型コロナウイルスが感染拡大する以前から収入不安定だった人はどうするのか。その点については線引きが難しいところ」と認識を示した。

「収入減少の証明については、ある程度聞き取りで確認する形になると思われます。ただし給与が手渡しだと確認できないためケースバイケースになると思われます」

「別々の枠組みで支援するのは非合理的」

一般社団法人つくろい東京ファンドの代表で、路上生活者の支援を続ける稲葉剛さんが指摘するのは、「東京都の住居喪失者への聞き取り調査でも、ネットカフェ以外に寝泊まりをしている場所として『路上』をあげている人は4割以上いる」という実態だ。

そのため、「両者を別々の枠組みで支援するのは非合理的」だと語る。

「支援策が従来の住居喪失者対策(東京チャレンジネット事業)の枠組みを踏襲しているため、都内に6ヶ月居住などの要件を満たすことができず、実質的に利用できない人が続出してしまう危険性があります」

「従来の枠組みに固執するのではなく、住まいに困っている人全般が活用できる対策にしてほしいと思います」

ネットカフェが休業した際、行き場を失う人を減らすために一般社団法人つくろい東京ファンドが他の支援団体とともに作る東京アンブレラ基金では、緊急宿泊支援費用を従来の「一泊3000円」から、ビジネスホテル利用を前提とした「一泊6000円」まで引き上げることを決めた

公的支援が追いつかない中で、路上生活者支援の現場では、新たな取り組みが始まっている。

4000戸確保しても「全然足りない」

認定NPO法人もやいの代表理事で生活困窮者の支援を行う大西連さんも、支援策が「足りないのは間違いない」と話し、支援の受け皿は最低でも4000人分は確保する必要があると強調する。

「これから経済状況が悪くなると、新たに住まいを失う人も一定数出てくることが予想されます。その点を踏まえると、4000戸でも全然足りません」

こうした取り組みは本来、緊急事態宣言が発令される4月8日までに準備をしておく必要があった。

「準備をしていないことで生じるタイムラグ」で、不利益を被るのは、「より困難な状況で暮らす人々」だ。大西さんは「そうした人々への想像力が欠けている」と言う。 

大西さんはより一層の支援策が必要だと訴えている。

「いま支援にアクセスし始めているのは、日雇い労働や非正規雇用の方々。正規雇用で働いていた人の中から生活が困窮する人が出てくるのはこれからです。ゴールデンウィーク明け頃に実際に困り始める人が現れることが見込まれます」

「この先、困窮する人が出るのは間違いない。それを見越して、今からでも遅くないので行政は宿泊場所をちゃんと確保する必要があるのではないでしょうか」


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